自然はそんなにヤワじゃない

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表題は、最近読んだ本のタイトルです。正式には「自然はそんなにヤワじゃない--誤解だらけの生態系」(花里孝幸著・新潮選書)であります。今回はこの本の感想を書きまっさ。本のレビューコーナーに書かずにぼやコラに書くのは、この本が文庫・新書じゃない単行本だから。「文庫本読書倶楽部」に載っけるワケにはいかんのです。まあそんなことはどーでもいいか。

ええと、この「自然はそんなにヤワじゃない--」は生き物の「生物多様性」について書かれた本なんですが、やわらかくて分かりやすくてなかなか面白い内容でした。かつて、岩波現代文庫の「生命の多様性(上・下)」(エドワード・O・ウィルソン著)を読んだことがありまして、あれはあれで面白かったんですけど、頭の弱いあたしにはいささかムツカシュウゴザイマシタ。

最近かまびすしく叫ばれている、自然保護や生物多様性の保護、また絶滅危惧種の保護などの報道を見てますと、何となくはそうなのだろうけど、果たしてそれで正しいのだろーか? という疑問がつねにつきまといまして、いささかお尻がこそばい感じにとらわれていたのです。そのあたりに「あ」付きのなるほど、つまり「あ、なるほど」と指針を示してくれたのが、この本、「自然はそんなにヤワじゃない--誤解だらけの生態系」です。

著者の花里センセは湖沼のプランクトンの研究をされている「ミジンコ先生」で、ヒトが環境に及ぼす影響が、湖の生態系をどう変化させているのかを主要なサンプルにして、生物多様性について分かりやすくしかもシニカルに解説してくれているんです。ご存知でしょうけどシニカルなのが好きなんですよ、あたしは(笑)。

かいつまんでいうとですね。自然保護と言ってるけど、それは人間の勝手なエゴ、ご都合主義なんであります。絶滅危惧種はしかるべくして数を減らしているわけで、それをしゃにむに人間が保護すると、それによって数を減らす他の生物が出てくるという訳なんですね。また、環境が汚れれば、地球が温暖化すれば、クジラが絶滅すれば、逆に増えてくるイキモノもゴマンといると言うわけです。

ヒトが保護したいと思う生き物は、クジラなんかに代表されるように、可愛いとか賢いとかいう尺度で見られてきた大型の生物や、幼い頃に親しんで来たカエルや川魚などの身近な生き物なんですけど、いなくなったらなったで、ほかの生き物が数を増やして生物多様性は維持され、かえって豊かになったりもするんだそうです。

人間は自分が環境を変えて来たせいで、身近な生物が少なくなって来ていると思ってますが、そこは表題の「自然はそんなにヤワじゃない--」なんでありまして、ヒトの身近でない生物はかえって増えている場合も多いわけなんです。要するに生物多様性というのは、人間の感情や感傷に左右されるような小さなスケールでは動いていないということなんですな。

トキやコウノトリの放鳥にしても、あんなデカイのが今までいなかったところに飛んでくるわけですから、地元のカエルや魚や昆虫は災難でしょ。かくしてカエルは数を減らし、エサのなくなったトキもまた他所に行ったり、餓死したりするわけですわ。これがホンマに自然保護なのか? あたしがいつも引っかかっておった部分なんであります。ま、そんなことが面白く理解できた本でゴザイマシタ。

文庫レビュー:文庫本読書倶楽部
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