ヤドカリと磯の生き物の飼育

17話
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海ヤド大量来宅

↑チビホンヤドが一気に40匹に増えた、デスクボーイ海水水槽。
岩についていたコケは全部食べられてしまって、
現在はツルツルである。〈8.11撮)


 金魚の病死で更新が前後してしまったけれど、海水水槽(デスクボーイ)も、大変なことになっているのであった。話はずいぶん遡ってしまうのだけれど、8月の4日、友人と、おのおのの子どもたちを率い、オヤジ2人にガキ4人の面子でわが家の定番、明石の林崎松江海岸に海水浴に行った。海水水槽はカニの忠治とホンヤド黒松が身罷った後、シロチビも死んでしまい、残った生き物は白浜の「ゴカイ」と明石のユビナガ、「クロチビ」だけになってしまっていた。なのでいつも通り、デカ目のヤドなら数匹の持ち帰りを認める、と触れておいたのであった。

 幸い(笑)、当日は潮が悪く、海水位もほとんど変わらず、わたしが(眼鏡を外した状態だが)見回してみても、ヤドカリの影は見当たらない。防波堤の石組みにもフナムシが走っているだけだ。うつむいて水際をウロウロしていると、薄くなった頭頂部にキビシイ陽射しが照りつけて眩暈を起こしそうなので、目の届くところで子どもたちを遊ばせておいて、こちらはパラソルの日陰でビールを飲んでいた。昨年もそうだったのだが、あのガキ共の目は、一体どういう目をしているのだ。日没まで遊んだのだが、バケツを覗いてみると2〜3mmのチビヤドが、100匹以上蠢いているではないか。「小さいのは全て海に返すように!」と強くいいつけたあと、持ち帰り分のペットボトル〈透明)をチェックすると、そこそこ大きいのが5匹ほど入っている。これならよし。ついでに餌用に海藻も持って帰ろうということで、もうひとつのビールのボトルカンにそれを詰めるように言ったのだが、これが失敗。そちらにまんまとチビヤドを詰め込みやがった。


←8月4日の明石・林崎松江海水浴場。しかし、子どもたちの「目」は、かなり性能が良いと見える。わたしが目を凝らしても、なにも見つけることはできないのだけれど…
←ええっ!そんなにいたの、ヤドカリ。一体どこに? バケツの中のチビ海ヤドは100匹をカル〜く超えている。わかってるだろナ、小さいのは全部、海へ返せよ。
←現場でわたしの近眼+老眼+酔眼に見つけられる生物は、せいぜいフナムシくらいのものであったのだが…しかし速いぞこいつら。

 例年通り、明石の居酒屋でゆっくり一杯やって〈子どもたちはメシ)通勤ラッシュを外し、帰宅して、ペットボトルの中身をバケツに開けてみると、なんと、大きめのヤドカリと思っていたものは全て「イシダタミガイ」ではないか。中身入りの!で、海藻用ボトルカンを開けてみると、でるわでるわ、チビヤドばかり。また騙された。苦言を呈した後、数を数えさせたところ、なんと全39匹である。しかも居酒屋で、のんびり過ごして帰ったにかかわらず、一匹の欠損も無し。全部元気である。う〜、持ち帰ってしまったものは仕方がない。海水水槽に移し、仕舞ってあった宿替え用チビ貝殻を引っ張りだしてきて、パラパラ放り込んだ。まだ盆休みもあるし、もう一度海に行く機会を作って返せばいいか、と思っていたら、イキナリ台風と雨・冷夏が続いた。なもんでいまのところ、その機会を逸してしまっているのである。

 一匹だけになり、ショボクレていた「クロチビ」だが、イッキにヤド40匹の大所帯になったと思いきや、イキナリ元気を取り戻し、親分風を吹かしだした。なにせ、クロチビが水槽内最大のホンヤドなのである。最も豪華な白い貝殻に入っていた新入りから、そそくさと貝殻を奪い取り、他のチビ共を岩から蹴落としたりして、楽しそうな日々を過ごしている。その後、金魚の大量死を呼んだ、お盆期間中の水温低下にもメゲず、ほぼひと月過ぎたが、いまだに全数が元気で歩き回っているのである。サンゴ岩は、まるでガキ共で混んだ公園のジャングルジムのようである。ニボシなどを入れると、まさに騎馬戦が開始される。まあ、どれがどれだか解らないし、頻繁に貝殻も変わるので、いちいち名付けるわけにもいかず、今はぼんやり愉しく見ているのだけれど、そのうち弱ったものが出てきたり、このままどんどん成長したりすることを思うと、いくぶん憂鬱になってしまう。貝殻、そんなに数ないし。

 海水水槽では、沈下型の「テトラミニグラニュール」を主に与えているのだが、ヤドの数が数なので、今後餌をどうしようかと考えていたのだが、3個ほど入れてある岩やサンゴにびっしりとコケが付いていて、ヤド共はそれを摘んで食べているようなので、あえて餌の量を増やすこともせずに置いた。ところが、2週間ほど経過したら、岩はすべてツルツルのピカピカ。ほぼ食べ尽くされてしまった。4匹いる「イシダタミガイ」も貢献しているのだが、水槽ガラスも内部フィルターもエアーのチューブもみんなピカピカになってしまった。これはなんとか対策を考えねばならない。「テトラミニグラニュール」は、結構高価なのである。そこで冷蔵庫を漁ってみると、味噌汁用の「三陸・陸前高田、湯通し塩蔵広田生ワカメ」のパックを見つけた。こりゃいけるかもと、早速水草のオモリで纏めて砂に埋め込んで見たところ、喰っとる、喰っとる。あっという間にハゲハゲになり、跡形もなくなるくらい良く喰う。それにしても早く消えすぎる、と思ってじっと見ていたら、なんとゴカイが銜えて砂の中に引っ張り込んでしまうのであった。また、これも味噌汁用に買ってあった砂出し中の生アサリを3個ほど失敬して、水槽に放り込んでみた。ヤド共はなんとかアサリを喰おうと、貝殻に脚を挟まれつつ奮闘していたが、そのうち諦めてしまったようだ。そんなわけでアサリたちは、いまや堂々と砂地から入出水管を付きだして生息しているのである。餌にするつもりが、かえって住人が増えてしまったのであった。

 あ、そうそう、オカヤドカリの「ヤド六」も、5年目を迎えて、あいかわらず元気であります。


←冷蔵庫から調達した、生ワカメに群がる海ヤドども。分厚かったワカメもハサミで剥ぎ取られてすぐにスカスカに。左から二匹目は先住の「クロチビ」である。
←「持って帰って良い大きさのヤドカリ」と見えたのは実は「イシダタミガイ」〈左上)であった。写真の貝は殻の直径が2cmほどもある。全部で4匹。お陰で水槽ガラスはピッカピカに。まあ、お亡くなりになられたらヤドの家として利用できるけれど…。

←全部で40匹。右上の新参ヤドは先住の「クロチビ」と、同じくらいの大きさである。この美しい白い貝殻を、子どもたちは「高級マンション」などと名付けてはしゃいでいたのだが、すぐクロチビに強奪されてしまった。したがって現在「高級マンション」にはクロチビが入っている。が、似合わない。
←もはやこうなると、どのヤドがどれだったか、なんて皆目わからない。それにわたしは海ヤドの「種」に就いても詳しくないので、ナニヤドカリなのかもわからない。現在果たして40匹生きているのかどうかも、数えられずに不明なのだが、いまのところ死体を見かけたことはない。しかし今後の更新が死亡報告ばかりになることは十分予想される。憂鬱だな。
←生アサリ〈味噌汁用)、と格闘するチビ海ヤドたち。最初のうちは群がって食べようとしていたが、アサリもなかなか強い。ヤドは脚やハサミを貝柱パワーで挟まれそうになり、徐々に諦めモードに。
←サバイバルに勝利した生アサリ〈味噌汁用)は、飼育アサリとして、水槽の住人となってしまった。砂から半分顔を出して堂々と暮らしている。もはやチビヤドが近づいても引っ込みもしない。
←「高級マンション」を奪い取ってご満悦の「クロチビ」。一年先輩の貫録といってもまだまだ小さい。そのクロチビの後ろにいるのが、現在水槽で最も小さなヤドカリ。貝殻の左右長さはせいぜい5mmくらいしかない。
←「高級マンション」争奪戦はこれからも続くのか…

↓アサリ御飯をあきらめて、味噌汁の実になる予定だったワカメに群がるヤド共に
「アッカンベー」をする、味噌汁の実になる予定だったアサリ。〈右)
2003/08/26 (Tue)

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