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↑磯採集翌日の海水水槽。どこに何がいるかお解りかな?
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7月(04年)の三連休の中日18日にヤド研関西支部・南紀白浜磯採集ツアーに参加した。当日のことは「ぼやコラ」7月23日の項に書いたので、そちらを参照していただきたい………というような訳で、ガキども不参加にもかかわらず、小さな海水デスクボーイ水槽は、新顔で賑やかになってしまった。いや面目ない。今回の磯採集直前の海水水槽の住人は、03年夏に明石の海水浴場で採集してきたユビナガホンヤドカリが主役だったが、一年のセコ水槽生活に疲れ果てたのか、夏の水温上昇などが追い討ちをかけたのか、相次ぎ弱ってしまい残り数匹になってしまっていた。そのうえライブロックから湧いて出てきたカニの忠治と仁吉の兄弟分が、弱ったユビナガを捕食するに及んで残りはわずか二匹。02年南紀白浜採集のゴカイはサンゴ砂中でどんどん増殖し、ちゃんと調べてはいないが少なくとも5匹以上はいるようである。イシダタミガイは健在だが、これではもはやヤドカリタンクとは呼べないではないか。と、採りすぎの弁解を交えながら、今回は南紀白浜からやってきたニューフェイスたちを紹介しようと思う。
無責任男といえば、往年の植木等だが、水槽にいるのは無脊椎な生き物たちばかりである。各個体をじっくり観察していると、どれにも個性があって非常に面白いのであるが、各個体の詳細について取り上げてゆくには一回ではとても無理なので、おのおのの面白い行動や性質などについては回をあらためて載せたいと思う。現在、採集後二週間ほど経っているが、白浜の生き物たちはいまだ全数健在である。しかし飼育数過多の状態になってしまっているので、更新までに淘汰されていなくなってしまう可能性も高い。雑食性でもヤドカリたちは比較的大人しいが、カニや肉食性の巻貝には気性の荒いものもいて、弱りつつも残っていた先住ユビナガ二匹のうち一匹は、イボニシ(巻貝)に貝殻の入り口から口を突っ込まれ雪隠詰めにされて食べられてしまい、もう一匹は脚を3本失った(たぶんカニの仕業だと思うが)あげく死んで、全滅してしまった。また、おのおのの食性も現状すべて把握できてはおらず、エサが合わない生物もいるかもしれない。そんな具合なので、その個体について書こうとする頃まで全種健在でいてくれるかどうかわからない。なわけで今回は、元気なうちに水槽の生き物全体の現況をさらりと写真で紹介しておくことにする。
さて前回の当欄にも書いたが、わたしは海の生き物には詳しくない。したがって種名などの特定はかなり怪しいものがあり、いちおう手元の簡単なガイドブックなどで確認しようと試みているものの、正しいのかどうかはマユツバである。今回はとりあえず「それらしい」ものとしておくが、後日、正しい種名などがはっきりすれば、そのつど加筆訂正してゆくつもり。
※写真・種名などを参考にされる方は、当欄の記述を鵜呑みにすることなく、必ず、図鑑・専門サイトなどで確認されますように(なにせテキトーですから)。また、明らかな間違いなどがありましたら、アクアリウム専用ゲストブックにてご指摘いただければ助かります。(cave)
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ヤドカリのなかま |
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←【ヤマトホンヤドカリ】
大小4個体採集。干潮時の広大な磯には無数の潮溜りができるのだが、そのうちのひとつに集まっていた。結構入念に調べて見ても他の潮溜りでは発見できず。本種は低潮線下に棲んでいるはずなのだが、なぜその潮溜りにだけ集まっていたのか不思議だ。
水槽内では、隅っこの岩陰にどっかと腰を据えてあまり動かないが、ひとたび動くとなると、なかなか素早い。右側のハサミはオカヤドカリのように立派で大きく、挟まれるとかなり痛そう。危険を感じると、ちゃんとこのハサミで貝殻に蓋をする。が、左巻きの貝に右手で蓋をするわけだから、手首を返したかたちを取らなければならない。いわゆるG・馬場の「ア、ポー」のポーズである。合理性に反することをやっているワケで、この点はややオマヌケだ。貝殻を摘みあげると、猛スピードで体を出し入れするので、不意にやられると振動でとり落としそうになる。
大型で堂々としていて、もはや水槽のヌシの風情を醸し出している。赤と白の縞にグレイの体毛のカラーバランスが美しいし、体のバランスも均整がとれている。他の生物が近づいても動じず、この大きなハサミでひょいと弾き飛ばしてしまう。何となく軍艦旗…旧帝国海軍の趣が。ヤマトホンヤドカリ。う〜ん、かっこいい。 |
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←【イソヨコバサミ】
大小7個体採集。白浜の磯には本種とホンヤドカリがうじゃうじゃいる。岩の隙間などに、ホンヤドカリとともに数百匹単位の混成集団をいくつも作っていた。ウチの水槽では初顔だが、現場(磯)であれだけの数を見てしまうと、ちょっとげっそりする。
成体は脚先の黄色い部分に黒の帯が一本入っているので、見分けがつきやすい。三本だったらアディダスだったのに惜しい。ヨコバサミ、という和名だけあって、普通はレンチ状のハサミの形状が、まんま「チョキ」である。針箱の抽斗に入っていた裁縫用の和鋏が懐かしい。左右の大きさはほぼ同じ。撮影していると時にバカガキがピースしているようにも見える。ハデな地下足袋を履いているようにも。
触角は、ネオンのようなブルーで艶めかしく美しいが、この眼柄と目の単純さはなんだ。まんまの円筒に極小の鬼太郎親父が乗っているだけだ。まったくもって簡単な設計施工である。国産自動車黎明期のプロダクトデザインを思いだす。オート三輪など当時のクルマの顔はおおむねこのイソヨコバサミ・テイストだったと思うがどうか。夏休みの工作にするにはこいつが簡単である。 |
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←【ホンヤドカリ】
大小5個体採集。昨年夏に「白浜の黒松」が頓死してからおよそ一年ぶりで、同郷の後輩がやってきた。本種も磯には足の踏み場もないほど蠢いていたが、本コーナーのタイトルにもしてしまっているので不在なのはやはり拙いかと。
海のヤドカリの「標準形」というか、代表種という思い入れがある。イヌで言えばポチ、ネコでいえばミケ、クルマで言えばカローラ、単車で言えばカブである。珍しくはないけれど、いないとまた寂しいのが、ホンヤドカリでもある。
目玉は二重の黒い輪っかで、これがどうも「宇宙人」的違和感を醸し出すようだ。しかしモスグリーン一色の体に脚先のクリームのワンポイントは、なかなか纏まりのあるデザインで、よろしい。上にヤマトホンヤドカリを海軍ぽいと書いたが、こちらは全く陸軍色である。潮の引いた岩場で鉄兜の歩兵大隊数個師団がカサコソ行軍している。 |
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←【ユビナガホンヤドカリ】
昨夏明石の海水浴場で採集した生き残り。脚先が長く、砂浜で行動するのに適した体になっている。白浜の磯ではみかけなかった。かなりグロッギーながらも頑張っていたが、獲れ獲れピチピチの白浜軍団の来襲で、その精気に呑み込まれてしまい、あいつぎ没。白浜ヤドカリに貝をコンコン叩かれて追いだされたりを繰り返すうち、ますます弱ったところをイボニシやカニに食べられてしまい、ついに全滅。
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カニ・エビのなかま
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←【ケブカガニ】
1個体採集。潮溜りの縁で泥に隠れるようにしてモソモソ動いていた。このカニは白浜の磯では多数見かけられた。水からあげるとモップのような毛が体にペタリとくっついてしまい、情けない。水槽ではサンゴ岩にできている穴に器用にカラダを滑り込ませて隠れている。褐藻類や生ワカメも食べているが、煮干しなどの餌が入ると、注意深くのそりと出てきて、ハサミで掴み穴の中に持ち帰ってしまう。ヤマトホンヤドカリとタイマンを張る図太い奴。甲幅15mmくらいである。
「スター・ウォーズ」ハンソロの子分のチューバッカ中尉のようなので、「中尉」とでも呼ぶか。しかし夏見るとなんとも暑苦しいカニである。 |
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←【イソクズガニ】
1個体採集。クモガニの仲間。甲長25mmくらい。この種も磯で多数見つけることができた。潮の引いた磯に溜まっている褐藻類を食べているようだが、ほぼ一日中全部が食事の時間である。鼻先と背中に長い角があり、体の表面には無数のトゲのようなものがある。そこに藻類を食べながら切れ端をくっつけて身を隠しているようだ。ま、体がマジックテープでできていると思うのがてっとり早いか。
正直なところ、この個体の種名には自信がない。似た仲間がたくさんいるようなのだが図鑑や専門サイトの写真を見ると、どれも体中にクズを背負いまくっているので、カニ自体の特徴がはっきりと見えず同定できないのであった。
動きはのんびりしているが、藻類を食べる量は相当なもので、成体と一緒に持ち帰った現地の褐藻類はほぼ二日できれいサッパリ消滅した。煮干しやヤドカリペレットなどの「肉っ気」は好まないようなので、生ワカメを入れているが、どうやらそれでも大丈夫なようである。
褐藻類が豊富なときは、それを身に付けているので保護色同化して、どこにいるのか、ちょっと見ただけでは解らない。しかしその装着センスにはなかなかのものがあり、いっぱしのパンクスに見える(写真上)。
褐藻類を食べ尽くし、餌が生ワカメに切り替わったあとの様子。こちらだとかえって目立ってしまい具合が悪そうである。サンゴ岩とライブロックを股にかけてスローなパフォーマンスをする道化者だ(写真中)。
折角丹念に付けたカモフラージュも餌が少なくなってくると、付けた尻から自分で食べてしまったりして、なにをしていることか解らないのである。他のヤドカリやカニたちも背中のご馳走を間引こうと狙っていて、ゆっくり動いてくるところを、ちょいといただき、となる。飲茶の点心ワゴンが回ってくるようなものか。ハサミの遣いぶりは植木職人か床屋のように繊細で器用(写真下)。 |
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←【ゼブラガニ】
1個体採集。甲幅10mm。当初、手元の図鑑を調べて見ても載っていないので、「けったいな意匠のカニ」と呼んでいたのだが、カニ系サイトを回っていて、ゼブラガニというのに当たった。白浜では潮の引いた磯の岩の小さな窪みにピッタリ嵌まるように隠れていたのを、ほじくり出したのだが、解説によると、このカニ、ウニと共生しているらしい。
動きがまるで超スローモーシヨンなので、他の生物に襲われないかと、いつもハラハラ見ているのだが、説明を読んで納得がいった。このゼブラガニは、イイジマフクロウニやラッパウニなど、猛毒の棘を持つウニにくっついて暮らしているそうで、そういうことなら素早く逃げる必要なんてないわけだ。
採集場所周囲にはムラサキウニ系が、文字通り「足の踏み場もない」ほどわんさとツッパっていたが、危険なウニはガンガゼを一個体見つけただけで、該当する強面のウニたちはサッパリ見当たらなかった。パートナーとはぐれてしまい、仕方なく岩の窪みで不貞腐れていたのなら、当方の無知ゆえとは言え採集して申し訳ないことをした。
猛毒の生物に護られているオゴリが、この大胆な意匠を生んだのであろう。額はリーゼントでトガらせているし、縞模様もハデではあるが、兄貴がいなけりゃただの情けないサンシタである。うちのガキどもは、このカニを見るなり「ガンダムガニ」と呼んでいたが、なるほど、正面の形態などは「SDガンダム」っぽいつくりだ(写真中)。わたしはこの顔を覗き込んで、とっさに「吉本新喜劇・池乃めだか」と「野球解説者・福本豊」を連想して笑ってしまったのだが。ご両人の顔は「スーパーデフォルメ」系であったのか。
宿主不在にもかかわらず、水槽に来てからの二週間をなんとか生き続けてはいるが、一体何を餌にしているのだろう。採集当初より右のハサミが欠落していたが、狭い水槽内で腹を空かせたイボニシにくっつかれたり、イソヨコバサミにちょっかいを出されたりしているので、自切したのか、もはや右側の脚は二本しか残っていない(写真下)。なにしろ逃げ足は超の付くほど遅いので、今後のラッキーを祈るしかない。ゼブラガニののんびり逃避生活は今も続いている。
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←【イソスジエビ(幼体)】
1個体採集。というか、勝手に入ってきていたのである。採集時は全長10mm程度であった(写真上)。水槽内をひょいひょいと泳ぎまわっている。こりゃ近いうちに捕食されてしまうと思っていたが、なんとか無事でみるみる大きくなってきている(写真下)。
カニやヤドカリは、あわよくば捕まえてやろうと狙っているが、フットワークも軽く、ハサミを余裕ですり抜けている。ウチのデスクボーイ水槽、夏場は水中モーターの熱により水温の上昇が激しいので、蓋のガラスを少し上げて風を通すようにしてある。元気が良いのは結構だが、調子に乗っていると隙間から外に跳びだしてしまい、干し海老になってしまう可能性が強い。心してもらいたいものだ。 |
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←【イソガニ(幼体)】
こちらは前回紹介した、ライブロック出身、先住の「二代目忠治」(甲幅12mm)である。弟分の「仁吉」(甲幅8mm)も健在。サンゴ岩の無数の穴をケブカガニの「中尉」と棲み分けている。幼体のうえ、臆病ですばやく身を隠してしまうので、種名はまだはっきりしない。ヒライソガニの先代「忠治」より毛深いし、甲のかたちや色柄も違うのであるが、弱ったユビナガホンヤドカリを襲って食べたりしたので、気性は荒い輩と見た。 |
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その他・巻貝など |
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←【イボニシ】
【クボガイ・アマオブネガイ・イシダタミガイ・スガイ】など
先住の明石産イシダタミガイが一匹残っていたので、ガラス掃除には事欠かなかったのだけれど、宿替え用の貝殻がかなりくたびれて来ていたので、磯で拾ってこようと思い、探した。ところがまあ全部が全部ヤドの「入居済」なのであった。
仕方なく、現役の巻貝を2個体ずつくらい採集してきた。没後、住宅にすれば良いとの算段だったが、トータルの数がやや多すぎたか。味噌汁の実にするには少なすぎるし、中途半端であったなあ。失敗。
ヤドカリ住宅としては人気の高いイボニシ(写真上・左)も、2個体採集してきたが、こいつはヤスリ状の歯舌と酸を使って他の貝に穴をあけ、食べてしまうというタチの悪い巻貝である。他の巻貝は大人しくせっせとガラス掃除にいそしんでいるが、イボニシだけは、なにか食い物が動いていないかと狙っているのである。被害者一号は、衰弱したユビナガホンヤドカリで、その後もゼブラガニや他の巻貝が襲われている。煮干しなどを入れてやるのだが、イボニシが餌に辿り着くまでに、他の生物が平らげてしまうのでなかなか当たらない。つねに飢えてイライラしているように見えてしまう。
スガイ(写真下)も3個体採集。賑やかになった水槽内に、先住のゴカイも張りきっているようだ。 |
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↓ハリセンボン「オイラは脊椎があるから、現地で解放してもらったわい。やれやれ」
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2004/08/03 (Tue)
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