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05 西丸式山遊記
西丸震哉 著
中公文庫
随筆・アウトドア
投稿人:cave ― 00.07.05
コメント:話題になった「41歳寿命説」のヒント。 |
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西丸震哉氏、ひさびさの中公文庫新刊だ。とはいってもモトの連載は1983年、単行本が1986年だから、もっと早く文庫化されるべき本ではある。しかし、この人の著作に限っては新旧はほとんどどうでもよい。本書は山に関するエッセイだが、彼の「山情報」はいまどきの山好きが使いこなせる様なやわなものではないからだ。主張も昔から一貫してまったく変わらない。関東大震災と同時に東京で生まれたらしいから、もはや80歳近いお歳であるが、カラダもさぞかしピンピンなさっておられることであろう。本書にも(2000年4月追記)の文が多数ある。
私は大正世代の骨太の男が好きである。著者は食生態学者だが、登山家、探検家、画家、作曲家、作家の才のほかに「オカルト」の才も入ってくるところが凄い。また軍隊では高射砲をB29に当てた、というのだから、敗戦以降の昭和生まれ世代のたわごとなんかちゃんちゃらおかしいのは当然だろう。本サイトのテーマのひとつに「ボヤキ」があるのだが、この人の作中、全編「ボヤキ」というより「憤り」に充ち満ちているのが常だ。「警告」、「恫喝」、あげくのはてに「わからんやつは死ね!」である。われわれのようないい加減な世代の「ボヤキ」のなんと影の薄いことか。その「憤り」も西丸流ユーモアにくるまれているので、笑ってしまったりするのだが、何のことはない怒られているのは、「私」自身なのだ。これは素直に反省せねば。
15年くらい前、「現代人寿命40代説」みたいなものを提唱されて話題になった。食生活や日常の運動不足などが根拠になっていたと思うが、それはバブルが産んだグルメブームに対する警鐘だった。浮かれていた日本人やマスコミは氏の説をとりあげ、売れる「見出し」にはしたが、そのまま静かになってしまったところをみると、だれも本気に災難が「自分のところに来る」ものとは捉えなかったのだろう。著者自身もブームだからといって声高に訴えることもなく、ずっと言い続けていることをいつも通り言っているだけで、あとは「わからんやつは勝手に滅べ…」のスタンスだ。この姿勢が小気味よい。
「人間の正しい生存路線」だけでなく、政治や自然破壊、エゴ、その他もろもろごとに関しても必ず重要な「警告」がある。本人は相変わらず「別に聞かなくてもいいよ、オレは勝手にやるから」と鼻歌まじり風に書き流してある。「最近の若者と来たら…」という言い回しにならないところが西丸流だ。
著者は、私の理想とする「ちゅうねんの少年」の語感を、はるかな高みで実現している「偉人」たちのひとりであることは間違いない。
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