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18 江戸川柳で読む平家物語
阿部達二 著
文春新書
古典文学
投稿人:コダーマン ― 00.09.05
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これはいろんな意味で、とても面白い本。
「遠くからつっついてみる衣川」、これは弁慶の立ち往生。立ったまま動かなくなったものの、恐ろしいのでそういう風にして死んでいることを確かめたに違いない、と川柳では理解する。
川柳には、歴史に題材を求めたジャンルがあって、題名の通り、平家物語、源平の戦いをネタにした川柳を楽しませてくれる本だった。
江戸時代の人たちがいかに平家物語に通じていた、ということがよくわかる。しかし、歴史的知識が深かったとか、平家物語をきちんと読んでいというのではなく、講釈場、あるいは芝居、または浄瑠璃といった娯楽の中で扱われる平家物語を基本にして「滅ぶ平家と、台頭してくる源氏」を知っていたということである。それでも、今時の人にくらべれば古典に通じているということではなかなか大したものである。それしか読むものがなかったとも言えるだろうけれど、ついこの前まで日本人は自分の国の古典に通じていたことは思い返す必要がある。
この本のいいところは、平家物語を順になぞりつつ、面白くてしばしば取り上げられる場面、つまり、多く川柳に取り上げられる場面を、読み解き、それを茶化している川柳を並べるという方式。このやり方がいい。久しぶりに平家物語をざっとおさらいする気分になれる。穿ちを得意にする川柳が、一応真面目に書かれた平家物語どう笑いにしているかなどじっくり楽しめる。
義経を戦いに行かせて自分は鎌倉を動かなかった頼朝は、江戸っ子には人気がなかったようで、頼朝を話題にした川柳は極端に少ないことを教えられた。
清盛が猛烈な熱を出して病の床に伏せって、最期の時を迎えるのはよく知られたところで、それは川柳で
「清盛の医者は裸で脉をとり」ということになる。
「清盛の病気見舞に竜吐水」でもある。
平家の隆盛を自らの力で勝ち取った入道も川柳ではこんなもの。義経達の母親である常盤御前は子供達の命を助けるために、清盛の愛妾になる。それしか方法がなかったのか、当時はそういうことがわりあい普通だったのかわからないが、そうなってしまった。で、清盛と常盤の閨のことを想像して、川柳は「牛若の目がさめますと常盤いい」となってしまう。これは、バレ句に入れられているけれど、こういう風に古典を解釈するとクスクス笑いをしながら覚えられると思うけれど、歴史の授業で川柳を口にできるほど洒落た先生はいないだろう。
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