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文庫本読書倶楽部
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クロスロード・ブルース

クロスロード・ブルース 23 クロスロード・ブルース

エース・アトキンス 著
角川文庫
海外ミステリ

投稿人:コダーマン ― 01.02.11
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 ちょっといい味わいのミステリ。
 ブルースの世界に「伝説のブルース奏者」がいて、その人はもう亡くなっているはずだが、見かけたという人もいるし、生きていて欲しいと思う人が多くいる。それほど、真にブルースを愛する人たちの間に「今も生きている」男が、死ぬ前に幻のレコードを残しているという話が残っている。
 そのレコードを探しに出かけた男が消息を絶ってしまう。そこで、その男の同僚の大学教授、つまり主人公が探しに出かけるという話である。同僚探しと、レコード探しの二つが交叉してなかなかいい気分の小説になっている。舞台がニューオリンズで、ジャズとブルースがずっと流れ続けるような物語。その、音楽が聞こえてくる小説という意味ですごく心地よい。
 もう一つ私にとって楽しかったのは、主人公の大学教授が、元プロフットボールの選手で、試合中に馬鹿なコーチにゲータレードを浴びせ、それがテレビで中継され、彼自身はそのままロッカールームに行って着替えて辞めてしまったという経歴であることだ。それから大学に戻って勉強し、音楽史を教えているということになっている。で、著者紹介を見たら、大学時代有名な選手だったとある。十分ドラフトにかかるレベルの選手だったようだが、フットボールはもういいと思ったようで記者から作家になったという人物。
 ニューオーリンズには、もう本物のブルースを聴かせてくれる店はない。と、嘆く本物派と、観光客にこれがブルースだ、ジャズだと思っているようなものを提供して彼らを満足させればいいんだという興行師的な人間が出てきて、この対立が下敷きになっている。その一派も、幻のレコードを手に入れて、大儲けしようと思っているので、研究のためにのんびり探せばいいというわけではないことになっている。街を牛耳っている大ボスと、正義の人たちの対決、というごくアメリカ的な構図はあるにせよ、ニューヨークでもなし、ロサンゼルスでもない南部の雰囲気がなんとも言えなく漂っていてとてもいい小説だった。着ているものはジーンズとブーツ、ブルースを聴きながらビールを飲む、そういう店が何軒も出てくる。もちろん、朝からやることもなく飲んだくれている老人もちゃんといるのがいい。


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