cave's books
文庫本読書倶楽部
24
洞窟の骨

洞窟の骨 24 洞窟の骨

アーロン・エルキンズ 著
早川文庫
海外ミステリ

投稿人:コダーマン ― 01.02.11
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 これは「スケルトン探偵シリーズ」と呼ばれているシリーズの新作。
 人類学の大学教授が、地中から出てきた骨を調査して、それが古代人ではなく現代人であり、しかも殺された形跡があるということを突き止めて、殺人事件を解決したことから、スケルトン探偵と呼ばれるようになった。
 今回は、タイトルのある通り、洞窟から出てきた骨が事件の発端になっている。去年、日本の考古学で大きな愚かしい事件が起きたが、それと同じようなことが外国にもあって、この小説の中でもそんな事件が利用されている。
 非常に巧妙に細工された土器が、クロマニヨン人の骨と一緒に出土して、それを発見したその道の権威が、彼らは道具を使っていたということを明らかにした。ところが、その土器は考古学博物館から盗まれたものであることが明らかにされて、それを「発見した」博士が大失態をしてしまったと避難されて、別の人間が学界の然るべきポジションに就くことになった。
 その事件を心に残したまま、その事件が起きた街で小さな学会が開かれる。で、それはどこで見つかったんでしたっけ、というようなことを言い出して、スケルトン探偵が洞窟を訪ねることになる。クロマニヨンの骨がまだ残っているんですか、というようなことをいいながら調べてみると確かに骨が出てくるのだが、これがごく新しい骨であることがわかる。またしても殺人事件に関わることになってしまう大学教授。
 そんなミステリである。この話の中に、クロマニヨン人が人類の祖先であると考える派と、ネアンデルタールと時代をともにしたことは認めるがクロマニヨン人は人類ではなく最後の類人猿であると考える派の、熾烈な学問的争いが持ち込まれている。これは本当にある論争なので、読んでいて、小説的にわかりやすくしているところがうれしくて納得しながら読んでしまった。このシリーズの中の傑作と呼んでいいと思う。
 ユーモアがあって知的、好奇心がおおせいで事件に巻き込まれるが、腕力的には弱い。好きなタイプの探偵。シリーズなので、できれば順番に読んで欲しいが、今度の一冊は独立して読んで面白いと思う。主人公夫婦の仲のいいところが、こうしたミステリ小説ではほっとするタイプ。


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