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36 体にいい寄生虫 ダイエットから花粉症まで
藤田紘一郎 著
講談社文庫
生物学・医学
投稿人:cave ― 01.03.26
コメント:虫、メタボにも効くのかな? |
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周りを見回してみると、今年の花粉禍は、一層酷くなっているように見受けられる。幸い、この厄介な症状はまだわたしの身には振りかかってはこないようだ。しかし昨年まで大丈夫だったという友人も、今年になってエライ目に遭っていると聞く。明日は我が身だ。覚悟が必要である。
昨年暮れに読んだのだが、気の毒な皆さん方が、あまりにハクション、ズルズルとやっていらっしゃるので思いだしたように書くこととあいなった次第。
さて本書は、孤高の虫フェチ、マッド(?)サイエンティスト、藤田紘一郎先生の講談社文庫エッセイ集三作目である。
一作目『笑うカイチュウ』次作『空飛ぶ寄生虫』に続く本書では、その冒頭から、先生、飛ばしまくっておられるようだ。まさにマッド・サイエンティストの面目躍如である。前の二作に較べて、サービス精神と悪のり精神に充ち満ちた筆致だ。「みごもる」という表現で自らの体内に入ったかもしれぬ色々な種類の寄生虫に愛情を注ぎまくる。サナダ虫に「ヒロミちゃん・サトミちゃん」と名前を付けて、いたわる。残念にも、虫が肛門から出てしまったことを「流産する」と表現する。スゲエ!
タイトルの「体にいい」は、寄生虫が「ダイエット」や「アトピー・花粉症」に効くのではないか?という説の検証を中心に執筆されているところからきている。ただし、先生は寄生虫には「老舗の寄生虫」と「成り上がりの寄生虫」がいて、危険な虫もいることも指摘し解説している。
「体にやさしい」方の代表的なものが、いわゆる「サナダ虫」や「カイチュウ」などである。これらは太古からヒトと付き合いを続けている虫達で、宿主であるヒトを殺してしまったのでは自分も死んでしまうことになるから、悪さはしない、というわけだ。
サナダ虫に余分な栄養を吸収してもらい、ダイエットに役立てようという考えだが、どうやらこれには効き目に個人差があって、はっきりと、万人に効果があるとは云いきれていない段階のようだ。
一方、花粉症の方は、その効果のメカニズムがほぼ解明されているようである。
回虫が人体内で排泄する糞尿のなかにある糖タンパクが『lgE抗体』というものを産出し、アレルギー反応の原因となる肥満細胞の表面をすっかり覆ってしまい、スギ花粉がくっつく場所を無くしてしまうらしい。
そういうわけで、先生は「花粉症に苦しむアナタも、一匹どうですか?」と啓蒙するわけだが、わたしとしては、ついに花粉症体質に至り、その苦しさをこの身で知ってから判断したいと思う。「体にやさしい」回虫も稀に、虫垂や胆管に入って問題を起こしたり、頭部に侵入することも無いとは云えないらしいからだ。それに時々パンツの中に顔を出したりすることは、小学生時代に友人のそれを何度か目撃したことがあり、まあ気持ちの良いものではない。
花粉症に苦しむ皆さん、いかがでしょう!その苦しみは、これらのリスクを負って余りある苦しさなのでしょうか?こればかりは未経験のわたしには何とも判断がつきません。
もし、そうであるなら、カイチュウの卵は、仁丹ようのパッケージに梱包され、キオスクやコンビニで気軽に手に入れることができるようになり、藤田先生はひと財産築かれることになるのでしょうか?
「にょろにょろ回虫太郎」なんてアニメが放映され、子供たちの人気キャラクターとなり、『お茶づけ海苔』や『ふりかけ』、『レトルトカレー』なんかのパッケージを賑わすのでしょうか?
ときどき肛門から出して、マジックで目玉を描いたり、模様をつけたりして戯れても、誰も後ろ指を指さなくなるのでしょうか?
容れ物も、餌も、糞掃除も、散歩も要らないペット。おまけに花粉症から身を護ってくれます。春先のペットの定番として認知されれば、さぞかし愉快でしょうね!
院内感染やヒ素ミルク混入などに較べるに、この寄生虫体内飼育、いかにもほほ笑ましく思えてしまうわたしは、やはり変わり者なのかねえ。
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