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76 青春
伊藤 整 著
角川文庫
青春小説
※古書(新潮文庫・角川文庫ほか)
投稿人:こで さん ― 02.06.12
コメント:ウブで真剣な若さは時代を超えて。 |
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23歳の美耶子は、20歳の信彦に恋を鮮烈に意識させる初めての女であった。信彦はためらい、もどかしがり、顔を赤らめ、不可解を感じ、また、熱し、激し、衝動に突き動かされる。初恋である。同時に平行して、友があり、師があり、他の男もあり、他の女もある。刻一刻、どこをとっても、濃い。信彦の情感はぼくの記憶に直結した。記憶だけでなく、いま、このぼくの心を熱くするものであった。ぼくにとって「青春」は、遠い日の記憶ではないはずだから。ただ、青春の中でも“初恋”には、それ以後にはないような感情の起伏があるものだと思う。ぼくはあった。信彦が「抑制も転換も考えられない」衝動のままに駆け出す場面がある。今の今まで一緒にいた美耶子に、もう一度会うためだ。それとそっくりな衝動に身を任せたぼく自身の記憶がよみがえり、心地良いようなこそばゆいような感じがした。
恋に限らず。考えを巡らせるだけでなく、からだごとぶつけずにはいられないような、そんな熱情をぼくはいま持てているかと思い改めつつ、信彦の青春の1ページを面白く読んだ。
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