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文庫本読書倶楽部
83
知識人99人の死に方

知識人99人の死に方 83 知識人99人の死に方

荒俣 宏 監修
角川ソフィア文庫
死生観

投稿人:cave ☆ 02.08.04
コメント:纏まった読書時間がとれないときに○


 通勤時間がなくなってしまったので、長編の本を読むと、少し進んでは大きく時間が空いてしまい、物覚えがいけなくなってきたことも相まって、具合が悪い。かといって常に活字に触れていないと、これも気分がすぐれないので困る。とくにトイレなどで、どうにも間が持たない。気のせいかもしれないが、最近の新聞用紙は紙を反対に折り返そうとすると、以前のようにすんなりと折れてくれない。狭いトイレでの扱いが厄介になったような気がするのだが、どうか。先日、東京で朝日新聞を手にとったとき、大阪で読んでいるものより紙質が良いように感じたのだけれど、これも気のせいか。

 そこで今回の「知識人99人の死に方」を手にした次第である。本には失礼ではあるが、短い時間に数人分の記述が読め、時間が空いてしまっても影響が少ない読み物なので、トイレなどには好都合なのだ。

 さて、この本は、戦後に亡くなった「知識人」99人の死の周辺のレポートである。
 手塚治虫を始めとする12人には特別に頁がさかれ、クローズアップされた形で取りあげられているが、他の人々は、おおむね文庫の一頁内に収まる枚数で記述されている。アタマから順番に読み進むも良し、自分の興味のある人物のみ拾い読んでゆくのも良し、である。わたし的に面白く読めた人物は、「石川淳」「深沢七郎」「森茉莉」。短いものでは「川口松太郎」「川上宗薫」「吉田茂」「五味康祐」「丸山千里」などであった。
 しかし、文庫版あとがきで、監修者も述べている通り、「知識人」の人選が、文壇の人間に偏ってしまっているのは惜しい。知識人とせず、著名人としたほうが、広がりが出たのではないか。また、死の周辺というより、生前の業績や生き様の部分の記述が多くなってしまい。「死に方」に関しての情報がかなり希薄になってしまっているのは残念だ。

 本文以上に面白かったのは、巻末に追加されているデータファイル部分である。こちらは「知識人」でなく「著名人」が対象。
 「戦後著名人 怪死・変死一覧」ではインデックスが、たとえば自殺の項だと、投身、飛び込み、焼身、服毒…と言う具合にたてられていて、おのおのに、それが死因となった著名人が羅列されている。そのほか「死因別INDEX」「'95-'99年の増補版データ」が載っているが、こちらの方が有用(トイレなどでは)と言えるかもしれない。
 あの人は、「何年に何歳で死に、死因は何だったのか」…この簡単なデータの羅列だけで、その著名人の「死」を考察するのに必要かつ十分な感じがした。

 増補版・最新情報の'99年部分から抜粋―

 市川右太衛門/俳優/九月一六日/享年九二歳/老衰 江藤淳/文芸評論家/七月二一日/享年六五歳/自殺 沖田浩之/俳優/三月二七日/享年三六歳/自殺 谷岡ヤスジ/漫画家/六月一四日/享年五六歳/咽頭ガン ジャイアント馬場/プロレスラー/一月三一日/享年六一歳/肝不全 由利徹/俳優/五月二十日/享年七八歳/肝臓ガン…


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