生き物をめぐる4つの「なぜ」 |
|
|
|
|
|
89 生き物をめぐる4つの「なぜ」
長谷川眞理子 著
集英社新書
動物行動学の基本理解
投稿人:コダーマン ☆☆☆ 03.01.07
コメント:動物行動学はどういう科学かをつかむのにわかりやすい。 |
|
|
|
|
表題の4つの「なぜ」というのを初めに書いておく。動物の行動を理解するために…
1. その行動が引き起こされている直接の要因は何だろうか?「至近要因」
2. その行動は、どんな機能があるから進化したのだろうか?「究極要因」
3. その行動は、動物の個体の一生の間に、どのような発達をたどって完成されるのだろうか?「発達要因」
4. その行動は、その動物の進化の過程で、その祖先型からどのような道筋をたどって出現してきたのだろうか?「系統進化要因」
という疑問への答えを見つけなければいけないのだという。
という風に基本を語ってから、例えば鳥の渡りについて、蛍の光について、鳥類が孵ったヒナを世話することについて、人間の道徳性についてなどなどをその4つの疑問に沿って解説していくのである。これが実に面白い。
と、これではどう面白いのかまるでわからない。
この本で言及しているホタルを例にすると、「至近要因」は、どういう風にして光っているんだろうか? ということになる。それはある種のタンパク質に酵素が働いて光るのだとわかっている。次は「究極要因」で、なんのために光るのか? これはもう私でも知っている、求愛信号として光っているのだ。その光の「発達要因」、これに関してはホタルの場合、卵の段階から光っているのであって、一般的に目につかないだけで弱い光を放つ卵が、だんだん成長するに従って強い光を出すようになっていくのだそうだ。この発光物質そのものは動物でいえば肝臓に当たる部分で作られるという。最後は「系統進化要因」ということになって、昆虫は生物界では最大のグループではあるけれど、光るものはかなり数が限られごく少数。だからホタルは注目されるわけだが、ホタルの中にも光らない組、微かに光る組、点滅する組がいて、この点滅するのがもっとも進化した組と言えるらしい。その辺の話は本書に詳しく書いてある。
こういう視点で生物を見ていくと実に興味深いことがわかっていく。著者自身は動物行動学・行動生態学の専門家で、この本では専門分野外にも話は及び、少し「科学的想像」ということも含めての遊びと友人の学者の説を引きながら新書らしく「素人に楽しい動物学」の本に仕上げている。生き物に関心がある人には、必読の書です。
|
|
|
|
文庫本読書倶楽部 (c)Copyright "cave" All right reserved.(著作の権利は各投稿者に帰属します) |
|