アウトドア焚火酒野宿
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vol.2 寝床をつくる

▲湖畔の焚火基地。(京都市内某所)
 焚火場所に到着し荷を降ろす。とりあえず、ビール! といきたいところなのだけれど、その前に済ませておかないとどうも落ち着かないことがある。ひとつはもちろん薪の調達なのだが、テントを持参しないわたしにとっては、寝床を確保しておく必要があるのだ。陽のあるうちに、ふかふかのベッドが完成していてこそ、ゆったりした気持ちで長い夜と付き合え、存分に焚火と料理と酒を愉しむことができる。

 テントを使わないようになった理由のひとつは、荷のダウンサイジングである。バックパックを担いで野営地まで登っていたころは、さすがに運べる量が限られていた。焚火酒を愉しみに行くのであるから、酒、食材のウエイトを大きくしたいではないか。なにも野外に遊びに行くのに「家」を担いでゆく必要はないのである。そのぶん酒を多めに担ごう、という趣旨からであった。まあ、現在はクルマを使用するようになったから、この問題は解決されているわけではあるが。
 わたしは何も高山に登ろうとしているのではない。快適なロケーションの雑木林や河原や海辺で、焚火をして酒を喰らい寝てしまおうと言うのだから、テントが無ければ遭難するというような環境ではないのである。それに、テントに入ってしまって愉しいことなど何もないと思う。まず、星が見えない。暖かい時候だとムシ暑いし山の涼風を顔に感じることもできない。不審な人や野生動物、天候の急変、水量の増減など、外の異変を察知するのが遅れる。それに、ゴツゴツした地面の感触。またツルツル滑るエンソライト(アースマット)のやな風合い。などなど。なにより折角フィールドに出てきているのに、狭苦しいではないか。

 とはいえ、山の天気は変わりやすいし、陽が落ちると夏でもかなり冷える。テント無しでもそれ以上に快適に眠るための工夫は必要だ。就寝時の冷えは、地面が寝袋越しに体温を奪って行くことが最も大きな要因なので、これを解消してやればよい。寝床に適当な平地に目星をつけたら、背中に当たりそうな小石などを取り除き、自分が横になれるだけの平らなスペースをつくる。そしてその場所に、どんどん草や小枝を積み重ねて行き、ふかふかのベッドを作るのである。雑木林なら下生えを、河原ならススキやカワラヨモギなどが具合が良い。この刈取り作業は結構骨が折れるけれど、ちいさな鎌を用意すると俄然能率が良くなりラクである。わたしは園芸用の小鎌を使っている。一時、折畳めるものを使ってみたことがあるが、どうも使い手が悪かったので、いまは普通の片手鎌に戻した。

 クッションの量は、その場所の状況や気候に応じてお好みで。寝る前の草の厚みが20cmもあれば、そりゃもう快適である。刈取った草や小枝の根っこ部分がベッドの両端に揃うように並べて積んでゆく。そうすると葉先や穂の柔らかい部分がベッド中央に大きな厚みを作ってくれる。そろそろ良いかな、という量が集まったら、積み上げた草ベッドの上に、後ろ向きに倒れ込んで見るとよい。重なった枝葉の作るクッションの効きは最高。暖かみもホッカホカ。特にヨモギなどの場合は薬効もあるのかもしれない。そして何より、眼前に拡がるのは樹冠と青空である。いちど寝ッ転がって具合を確かめたら、その上に寝袋を拡げて置いておく。エンソライトのギンギラアースマットなどとは比較にならない快適さ。これでいくら酔っ払っても、ここに倒れ込みさえすれば快適安眠が約束された。一発伸びをかましてから、焚火の準備に取り掛かるという按配である。

▲タープ下のススキベッド・昼寝用。(露出オーバーでよくわからん/大津市内某所)
 さて、でもこれは好天時のことで、雨の日もあれば、星空でも夜露はかなり降りる。そんなときはどうするのか? と言えば、基本的には同じなのである。ただ、テント無し野宿を快適に過ごすためには、ゴアテックスなどの耐水・通気性素材を使用したシュラフカバーが必需品なのだ。これは好天の時にも必ず持ってゆく。夜露を凌げるし、急に寒くなった時なども重宝する。少々値が張るが、軽くて嵩張らないのでたいした荷物にはならない。こいつの中に寝袋を入れ、二重にして眠るのである。草ベッドの厚みで地表面から持ち上げられてさえいれば、少々の雨でも大丈夫なのだ。顔の部分には帽子でもひっかけて眠る。

 すでに雨が降っているときは、どうするのか? わたしは大人二人が横になれるくらいの面積を持つ小さな五角形タープと、細引き(ロープ)を数本、常に持参している。工事用やレジャー用のビニールシートでも良い。雨中野宿地に到着したら、まず寝場所の当りを付けて、その上にさっさとタープを張ってしまうのだ。雨水が溜まらない形になるように気をつけながら立ち木の枝ぶりを利用して、細引きを張り屋根をつくる。そして晴天時と同様、濡れた下草や立ち木を鎌で集めてベッドを作る。荷物や薪などもタープの下へ集めて置く。激しい雨のときは、タープの周囲に溝を掘り、雨水を流してやるようにする。濡れてはいても草ベッドが高床を作ってくれるので、少々の水は寝床と地面の間を流れて行ってくれる。直接地表の水分に触れず、強い雨に打たれなければ、ゴアテックスのシュラフカバーで濡れずに眠ることができるのである。雨中のテントの風情は貧相なものだが、この雨のタープ下の「基地」は遠めに見てもなかなかカッコ良い。自然の変化に合わせて、その場で知恵を巡らして対処法を考えるのも愉しみのひとつなのだ。

 濡れてしまった靴下を、次の日に履く羽目になるのはイヤなものだが、寝袋に潜り込むときに足元あたりに放り込んで置くと良い。朝、起きるころにはヒトの体温によって、パリパリに乾燥してくれる。お試しあれ。逆に好天時に、枯れススキなどの良く乾燥した草でベッドを作ると、焚火の火の粉が一片飛んだだけで、爆発的に燃え出すことがある。これには十分な注意が必要だ。

※愛用の道具〈安物ばかり)などの詳細は、いつかまとめて紹介するつもりです。(cave)

03.09.01

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