ヤドカリと磯の生き物の飼育

11話
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ところがどっこい、生きている


 10月に、果たしてこの冬を無事に越せるのか、と書いてからはや三月以上が経過した。更新は停滞してしまっていたが、たった一匹になってしまったホンヤドカリの「チビ」は、どっこい健在なのである。

 しかし、話題がない。

 海水替えは2〜3週に一回のペース。なにせチビ一匹なので与える餌は微量。水質もそう悪化しない。照明を水槽のガラス蓋にピッタリと着けていると、茶ゴケの発生が著しいので、二階にあたるオカヤドカリ舎の照明の残光で明かりを賄うようにした。これで茶ゴケの発生は押さえられた。
 ホンヤドカリご本人は、ときどき貝殻を住み替えたりはしているのだが、悠々自適の生活。サンゴ岩についた緑色のコケなどを摘んでは、のんびりしている。
 サンゴ岩を水面ちかくまで登ってくるときが、どうやら水質悪化のしるしのようだ。水替え直後は、底砂のあたりをうろうろしていて、あまり高みに登ってこない。ただ、空腹のときに浮上性の餌を投入すると、あわてて登ってくることはある。水面を水流に乗った餌がクルクル回りながら流れてくるのを、ちいさな二つのはさみを振り回しながら捕まえようとするしぐさが、なんとも幼気なのである。
 脱皮も一度済ませて、夏にやってきたころより、体はふた回りは大きくなっている。前回の写真より、ひとまわり大きい貝殻で住み替えるようになった。
 水温は22℃〜23℃で一定である。今もサンゴ岩の中腹あたりにしがみつき、さかんに身繕いをしたり、触角を動かせたりしている。が、それだけ。いつもどおりである。弱ってきた感じもない。
 この「チビ」たちが昨年夏、大挙明石の海水浴場からやってきたとき、一昨年からいた日本海産のヤドカリが全滅してしまった。その後明石産のヤドカリたちも相次いで死んでゆき、このチビ一匹が生き残った。
 そのときは、急に飼育数が増えたことによる水質の悪化や、水温に対する適性の違いが原因だろうと思ったが、最近、先住の日本海産のヤドカリたちは、明石の海から持ち込まれたバクテリアが原因で全滅したのではないかと考えるようになった。
 目には見えないけれど、そういう細菌や微生物が、彼等が暮らせる環境を大きく変えてしまうのではないのか。その点に思い至らなかったのは、わたしのミスであった。
 日本海と瀬戸内海。同じ海には違いないが、彼等小さな生き物たちの暮らしにとっては、地球と火星ほどの、大きな差異があるのかもしれない。


←最近の「チビ」。前回のコラムから3ヶ月余。少しは大きくなったでしょ。

↓生意気にも、ちゃんと脱皮も行っております。やはり脱ぎ捨て。おかんに怒られるぞ。
2002/02/03 (Sun)

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