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42 ドイツの傑作兵器駄作兵器
究極の武器徹底研究
広田厚司 著
光人社NF文庫
戦争ノンフィクション
※2006年2月に新装版
投稿人:cave ― 01.05.14
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本書の表題には「傑作兵器 駄作兵器」とあるのだが、私は傑作、駄作ということにはあまり興味を感じない。
旧日本海軍の弩級戦艦大和や武蔵にしても、技術力や工業力の面で語れば傑作となり、運用法や戦略面で評価すると駄作となる。当時の常識から考えれば、これらの戦艦も奇想天外な代物と言えようが、巨大なことは巨大だが、船であり、その形状も特に驚くようなモノではない。潜水空母伊イ-400にしてもそうである。潜水艦を大型化して、組み立て式攻撃機晴嵐を三機搭載できたとはいうものの、その発想自体はさほど奇抜とは思えない。まあ、実際に造ってしまった、のは奇抜と言えるのかもしれないが。
しかし、ドイツは違うぞ。
ヒトラーのナチス・ドイツは、スケールが違う。奇抜、というよりは「仰天」と言ったほうがしっくりくるほど、「異様」な兵器を大まじめで開発し続けた。もちろん有名なV1、V2のロケットから、ジェットエンジン、Uボート、化学兵器と、現代兵器の原形になったものも目白押しだ。本書には、そのような独陸海空軍の「異様兵器」の開発の顛末から実験の経過、実戦での戦果までが写真入りで詳しく紹介されている。もちろん実際には量産されなかった兵器や、終戦までに間に合わなかったり、計画中止になったものも多い。
どれもこれも面白いものばかりなのだが、ここでは、私が特に「仰天」「異様」と感じた、砲二つを抜粋して取りあげておこうと思う。あとは実際に本書を手に取って驚いていただきたい。
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80センチ超重列車砲グスタフとドーラ
当時黒海沿岸にあり世界最強と謳われたセバストポーリ要塞を攻撃するために投入された秘密兵器である。写真を見ていただければその異様さは一目瞭然だろう。列車砲は普通、平貨車上に砲塔を据え付けて装甲列車を編成、鉄道上を移動できる砲だが、このグスタフはそのような生易しいものではない。据え付けたい場所に、わざわざ8本のレールをもつダブルトラック線路を曲線状に敷設するのだ。この砲身は仰角はとれるが、左右に振ることができないので、砲自体を線路のカーブを進ませることによって射撃角度を得る。重量4.8トンの砲弾を発射して最大射程47キロ!一時間に4発発射できた。砲自体の重さはなんと駆逐艦一隻分に相当したという。著者は量産と新型砲弾が完成していても、連合軍の制空権から隠し通して攻撃に使用することは不可能だっただろうと閉めているが、この巨大列車砲が数百台並んだところに遭遇したとしたら、その威圧感に連合軍は戦意を喪失したかもしれない。
15センチ長距離高圧ポンプ砲
この砲は長さ150メートルの傾斜した縦坑を発射台とし、口径は15センチ。むかでの足のように後退角のついた薬室が多数設けられ、有翼高性能ロケット弾が発射されると、砲身内部の砲弾を追うように薬室内の炸薬が電気点火により次々と爆発し、高圧ガスを発生、砲弾を加速させる。砲口を出るときの初速が毎秒1463メートルに達せば、北フランスからロンドンまでの152キロの射程を得られるというものだ。しかし発射の際にかかる高圧により、しばしば爆発、自壊するというオマヌケな砲であったようだ。この砲も150メートルという全長を隠蔽するのは不可能に近く、トンネルを掘ってカモフラージュしたものもあったようだが、のちの連合軍の調査では、設置された砲の照準が目標であったロンドン、ウェストミンスター橋から2度もずれていたという。う〜んドイツらしくないエピソードである。
ほかにも「爆撃機を二機繋ぐ(ハインケルHe3Z1)」「潜水戦車(タオホパンツァー)」「曲射銃身(クルムラウフ)」など興味深い兵器の記載もある。また、当時のドイツは「迎撃兵器」と「誘導弾」のシステムにかなり執着している印象をうけた。いわゆるリモコンのたぐいである。終戦までに完成には至らなかったが、アメリカが再配備の方針を打ちだした戦略防衛システム(パトリオット等)も、その確実性が疑問視されている。ユニークな発想と技術の先達として、ドイツの姿が垣間見えて面白い。
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