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64 ナイン・ストーリーズ
J.D.サリンジャー 著
新潮文庫
海外短編小説集
投稿人:こで さん ― 01.11.28
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題の通り、作者自選の九つの物語である。全編ともそれぞれが日常を舞台にしながら、どこかしら非日常的な、形而上の、謎めいた、なさそうでありそうな印象を受けた。近代でなく現代の、光でなく闇の、鈍でなく鋭の、シンプルでなくカオスのイメージを抱いた。
ぼくにとっては「テディ」が圧倒的に衝撃度No.1だった。そのラストシーンは鮮やかなほどに、衝撃であった。
テディというある種の天才少年が主役である。その生涯について語られるような内容ではなく、時系列で言うと半日ほども経たないうちに幕は閉じる。
テディは家族とともに客船上にいる。彼の、家族とのちょっとしたやりとりから、少年時代にあるまじき卓越した思考回路を持っていることがわかる。その“才能”の噂を聞きつけたある青年が、一人で甲板に出たテディに話しかける。青年との対話から、人知を超えた能力さえも備えているらしいことが感じられる。興味尽きることの無い青年は何度も彼を引きとめて話しを続けようとするが、やがてテディはその場を去る。そして、宿命の待つところへ。
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