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68 新「親孝行」術
みうらじゅん 著
宝島社新書
親孝行マニュアル
投稿人:cave ☆ 02.02.06
コメント:京都の「オカン」は難解だ。 |
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すこし前、新聞か雑誌かの読書欄に、この本の紹介が載っていたのを眼にして、多少気になっていた。この著者であれば、通り一遍の「親孝行論」であるはずがない。今まで通り、自分の身を斬りつつも、お笑いの要素をたっぷり絡めた仕上がりになっているだろうと予想されたからである。
「VOW」関係や「マイブーム」などの馬鹿馬鹿しくも軽妙な文章は肩ひじを張らずに読める。ときには軽いものがよろしいときもあり、通勤電車に持ち込んだ次第。
それに、本書のテーマは「親孝行」である。わたしはこれまで、意に反して(ホントか?)「親不孝もの」の行いを続けてきたし、母親も年老いてきたので、反省も込めて、いま、興味のあるテーマなのである。
しかし、いくら最近やや気掛かりになっている「親孝行」がテーマでも、著者が「みうらじゅん」氏でなければ、このテの本を手に取ることはなかったと思う。
何でか? それは著者がわたし同様、京都市出身で、高校は違うものの同じ年の生まれ(彼の方が早生まれの三ヶ月ほど先)であり、同じく美術系大学に進学しているからである。著者のこだわってきた部分なども同世代同地域の傾向を反映してか、やや似ている。本人とは全く面識はないが、たぶん当時は「京一会館」や「千本中立売」あたりで、何度もすれ違っていることと思われる。「同じような格好をしてるやつがいるな」とお互い思ったかもしれないが、わたしに憶えはない。
出自のことを記したのは、「親孝行」についての最大の要素である「親」が、普遍性を伴わないと言うか、「異常」といったほうが適当な、京都人である「親」を下敷きにして書かれているのではないか? と勘ぐったからなのだ。そして、そうであれば、これは読まないわけにはゆかない。
わたしの場合、父親は高校時代に他界してしまったので、現存する「親」は母親だけなのであるが、この「京都の母親」は、著者も本書中で説明している通り、「お母さん」でも「おふくろ」でも「ママ」でもない、「オカン」なのである。これは通り一遍にはいかない存在なのだ。
というわけで、そのあたりがどういう構成になっているか、期待しながら読んだ。
内容は、いつもの著者の手法通り、「親孝行」のツボを、実例も交えながら、笑えるマニュアル書にしたものである。
上手に親孝行をするための実践テクニック集なのであるが、いまひとついつもの切れ味に欠ける気がした。笑いの部分も心なしか少ない。これはたぶん「新書」であることから、新書の形態に嵌め込んでパロディ的な味わいも持たせようと意識したことが影響したのではないか。学者や研究者が書きがちな「面白くない」文章形態に、面白い内容をハメこんで、高度な笑いを目指したのかもしれないが、あまり成功していないように感じた。どうせなら、論文風にまとめずに「ぼくのオヤジとオカン」というようなエッセイ風の形態で親孝行論を展開したほうが、よほど笑えたのではないかと思う。この点が残念。
しかし、個々の細かな内容には、寿司屋での父子の適正な配置図、帰省時における親子の会話セオリーなど、著者一流の鋭くも馬鹿馬鹿しい指摘が健在で、一読の価値はある。
で、わたしの興味の焦点であった「オカン」に対する親孝行術であるが・・・。「親孝行研究家」を標榜する著者にとっても、どうやらまだ明確な結論に至っていない、みたいだ。
「オカン」はムズい。
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