『総天然色 夜の京都』と題された絵葉書セット。モノクロ写真に人着彩色し、4色分解にてカラー製版してある。夜景を人着処理しているので、元の写真は完全な下書きとなってしまい、もうほとんど絵画と言ってよいような風情を醸し出している。中味の葉書は8葉が現存しているが、京の住人の所有物ということもあり、すでに使用されてしまったものがあったかもしれない。
カバー裏には、リード文が印刷されており、饒舌にムードを盛りあげようとしているので、以下に転載しておく。しかし、なにやらちょっと怪しげな文章力ではあるが。
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山紫水明の都と謳われてゐる京都にも繁華街は絢を競い、美を蒐め、夜ともなれば電飾華やかに人を呼ぶ…
……夜の京都………
表玄関京都駅は不夜城を誇り、新京極を中心に四条通り、河原町通りは東京銀座を凌ぐ五彩のネオンが夜空をこがし、アーケードの下は蛍光灯に集まる人々の渦が巻く。
鴨の川面に映えるあかりは京都らしい抒情をかもし、紅灯ゆらぐ祇園町に、往き交ふ可憐な舞妓のあで姿……
弦楽の流れの雅びやかさも夜の京都の一情景である。
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さて、この絵葉書、発行年を特定できずに困った。本体には全く日時が印刷されていないため、描かれて(写って)いるモノの内容から年を特定しようと試みたが、さだかには分からない。三代目京都駅ビルで、昭和27年以降というのは分かるのだが、後ろ(何年以前)を決めかねている。昭和30年代なら技術的にカラー写真使用は可能だったと思うのだが。表現やコストの兼ね合いで、あえてモノクロ人着処理を選択したのか。それとも人着が当時の絵葉書の定番だったのか。考察・感想などは各絵葉書に簡単なコメントを付けた。 |