金魚と淡水魚の飼育
42話
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水カビ病について今一度考えてみる

↑カタメがいなくなって広くなった容積を、おのおの無闇な成長でキッチリ埋め、
性懲りもなく自らの首を絞めている大飯喰らいの馬鹿金魚ども。(04.08.14撮)


 「金魚も、永いこと飼っていると、可愛いでしょうねえ」などと言われても、「べつに」としか答えようのない、つれないわたしではあるが、連中の生死一切を預かっているという立場上、病気などに罹った折には、手を掛けてやらないわけにはいかない。とはいえ外を歩いていれば、知らず知らず蟻ん子を踏みつぶしているのだし、蚊やゴキブリが出たといえば、条件反射のようにたたき殺すのであるから、殺生はいかん、と目くじらをたてるだけの値打ちのある人間でもない。ウチの水槽にいる金魚掬いの金魚なんてものは、「小赤」「エサ金」などとよばれ、高価な肉食魚などの餌用として売られているのだから、「命の尊さ」なんてことに言及すると、ややこしくなる一方である。ヒトそれぞれが勝手な感情論を交えるとどうにも収拾がつかなくなるので、わたしは、生物の飼育を愉しむうえで留意すべきことは、とりあえず「生態系を乱さない」、この一点のみで良いと考えている。つまり、飼えなくなったら、飼い主が始末する。そこいらの川や池に放流しない。首を絞めて殺しても焼いておかずにしても良い。自らの手でこの世から抹殺してやれば良いのであるが、それがなかなかできないものだから、死ぬまで延々飼い続けることとなる。たかが金魚とはいえ、水が悪くなったり病気が出たりすると、てきめんに辛そうにするし、環境が改善されるやいなや、嬉しそうにスイスイ泳ぐものだから、別に可愛くなくとも、世話をしてやらないわけにはいかない。

 カタメの死によって、一匹分広くなった75cm本水槽の金魚4匹は、あんのじょう、その余裕分を埋めるように即デカクなり、個体数減少による環境改善は幻に終わった。したがって(もう書くのもいささかウンザリしているのだが)、あいかわらず「水カビ病」は継続中で、週二回の半量換水は、いまも続いているのである。飼育初期の頃なら、あれ、卵を生んだ。やれ、子が孵った。と面白がっていられるのだが、何世代もルーティンしてしまった今は、ああ、またか。てな感じで、面白くもなんともありゃしない。しいて言えば、「次に死ぬのはどいつか」くらいしか新たなイベントはないのである。まあ、ポジティブな見方をすれば、「最後に残る一匹がどのぐらいまでデカク成長するか」というのを愉しみにすることもできるが、飼育観察してきた経験から言うと、急速にデカク成長する金魚は長生きしないようである。では、「どこまで長生きさせられるか」を目標にするとなると、目下の飼育スタンスでは全く駄目で、間引きも必要だし、餌の与えかたなど根本的に飼育方法を変えてしまわなければならない。これもヤなこった、である。ウチの場合、「飯くれ」と要求すれば与え、「苦しい」そぶりをすれば換水する。それで肥満過多になろうが糞で水が汚れようが自業自得。だいたいが、金魚に75cm水槽なんてもの自体、ウチには身分不相応なのであって、今から思えばどうして買えたのか不思議なくらいの贅沢品なのだ。

 で、今日も今日とて、大汗をかきながら不毛なバケツリレーを繰り返しているのであるが、もはや当欄に「水カビ」の話題は辟易である。写真も汚い症例ばかりになる。しかし、上記したように、もはや水カビ以外の新しいエピソードがたやすく出そうにもない。そうすると更新のネタもなくなる、とういうわけで、新たな更新ができずにいたところ、前々回の記事「産卵水カビ換水発情ローテーション」をご覧になられた、山形県は天童市在住の「月の人」さんから、丁寧なメールをいただいた。月の人さんも、わたし同様、水カビ病でお悩みだとのことで、拙文を参考にしていただいた旨とともに、対処法や考え方も記していただいた。今までここに散々書いてきたわたしの水カビ奮闘記には、まったく結論がなく、効かなかった。治らなかった。死んだ。という記述の繰り返しであり、偏屈な飼育者のスタンスが理屈っぽくボヤかれているばかりで、「どう対処すれば良いのかをスグ知りたい」という人にはほとんど役にたたないものである。しかし、「飼育法」の記述のあるサイトや書籍を読んでみても、紋切り型に「魚病薬名」と「投薬方法」のみが並んでいるところがほとんどで、決まって末尾に「罹ってしまうと治りにくい病気である」との記述がある。実際、ウチの水槽では、それらの薬剤で根絶できたためしがないのは過去のレポートの通りであり、だからこそいろいろなことを試みてみたりもする。まあ、水槽ごとに飼育環境も事情も違うわけだから、いきなり「完璧な解答」を他者に求めるのは無理というものなのだが、薮から棒に「教えてください」と尋ね、「効かないじゃないか」と憤る人が多いのを苦々しく思っていたところに、月の人さんの飼育スタンスに触れて、なんだかほっとさせていただいた。

 そう。杓子定規に、この病気にはこの薬をどれだけ、というのではなく、他の飼育者のいろいろな対処例と結果を参考にして、自らの水槽の生体と環境に落し込み、いろいろ工夫をこらしてみること。これがまあ、飼育の愉しみなのではないだろうか。となると、いろいろな方が試みられた対処法の実例データは数あるほうが良い。わたしひとりの例では心もとないし、またこの種の情報をネットで探すのは大変である。というわけで、当欄でのメール文掲載をお願いしたところ、快諾していただいたので、一部を省略して掲載させていただくことにした。そして今までダラダラ書いてきた、わたしの「水カビ・スタンス」も今一度、簡単に文末にまとめておく。これらは「対応の一例」であり、「絶対的解決法」ではありえないことをご承知いただきたい。みんないろいろ苦労してんだよ〜、という話である。あなたの飼育の参考になれば幸いというところ。

金魚のお話

はじめまして。
山形県天童市在住の「月の人」と申します。
先日、金魚の水カビ病に悩まされていた際、貴サイトを拝見しました。
うちの金魚は魚屋で売っていたものです。(笑)
1匹100円程度でしたが、2年も一緒にいるうちに信じられないほど大きくなり、餌をねだったりする姿がかわいくて情も移ってしまっています。
水カビ病は初体験ではないものの、繰り返し発生する状況は初めてでした。

うちは、近所の山で飲料可能なほどの湧き水を(伏流水?)汲んできています。
この湧き水の周囲にはサンショウウオが産卵、生息しています。
もちろん塩素は含まれていませんが、年間を通じて9.8度という低温のため常温に戻す為に一晩程度寝かせます。
これ以上清浄な水はなかなか期待できないだろうと自負していましたので、今年の水カビ病は少なからずショックでした。
自然水ですので、逆に言えば水カビにとっても良い環境だったのかも知れません。
水カビ発生の当初は、水の交換でなんとかしたいと思っていましたが、水カビの衣装を身にまとっているように見えるほどで金魚も随分衰弱してしまいました ので、やむを得ず投薬を試みることにしました。
薬は市販の「ニューグリーンF」の粉末です。
水が濃青緑色に変化するのを見て金魚も驚いていたようですが、数日後、なんとか水カビは沈静化したかに見えました。
しかし今思えば、投薬によって水槽の中の全バクテリアを死滅させてしまったのではないかと思えます。
そして、水カビの菌床か胞子だけが生き残ったのではないかと。
つまり水槽内は水カビの天下になってしまったわけです。
そうとは知らない金魚たちは、当然食べては排せつします。
排泄物を分解するのは水カビだけとなれば、数日後に水カビ王国がふたたび繁栄を見せることになります。
防火水槽や池などで元気に泳ぐ金魚がいることを思えば、水質とはつまりバランスなのではないかと思うようになりました。
水槽の中の水カビ菌の存在を否定せず、それを抑えるだけのバクテリアや微生物がいればいいのではないかと。
けれど、水槽の水はすでにバランスを失ってしまっています。
近所の池で水を汲んできた方が良いかもしれないとも考えましたが、これまで利用していた水のことを思うと勇気が出ませんでした。

ネットでいろいろ調べていたら「トウガラシ(タカノツメ)」に延命効果が期待できるようだとの記事を見つけました。
恐る恐る与えてみると、確かに一時的に元気になったように見えましたが、水カビ撲滅には至りませんでした。
時々出かける温泉から飲料可能なお湯を汲んできていましたので、水カビ退治にならないかと少量与えてみたら、金魚の方が虫の息になってしまいました。
こうなると、市販のバクテリア液を投入するだけで解決できるとは思えませんでした。

そんな中、「水カビのローテーション」の記事を読ませていただきました。
思案した結果、意識を「水カビ退治」から「ローテーションからの脱却」へと切り替えることにしました。

僕は、少し小さめの(安かったので)新品の水槽を用意して金魚2匹を移動しました。
急に狭い所に入れられてあちこちぶつかっていましたが、なんとか慣れてくれたようでした。
それから元の水槽の石や砂利を取り除き、水槽の掃除をして2〜3日天日干しをしました。
最後に熱湯消毒をして、またいつもの汲んできた水をいれました。
それから砂利をやめて川砂にしてみました。
うちの金魚は水槽の底に身体をこするように泳ぐのが好きなので、金魚の身体に傷がつくのを予防する為です。
これは予想と違った効果があったようです。
砂を口に含んでは吐き出して遊んでいるようです。(笑)
ミネラルの摂取が目的なのか、歯を磨いているつもりなのか解りませんが、気に入っているようです。
ろ過装置も新品のものに交換しました。
ホテイ草も買ってきて入れました。
1週間ほど過ぎましたが、水カビ発生ローテーションからは抜けられたのではないかと思います。
1匹の金魚のひれに白い小さな水カビが発生しましたが、これまでなら一夜明けると全身に広がっていたのに、今はそれ以上の繁殖が観察できません。
水が少々白っぽく濁りましたので、木炭とバクテリアを投入しました。
ほてい草は金魚によって食い散らかされ葉っぱしか残っていません。(笑)
エラから出血したり、ヒレが縮れてしまったりして、一時は諦めかけたのですが、まずはホッと一安心といった所です。
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(以下:cave略)

天童の美しい風景などが掲載されている「月の人」さんのホームページはこちらです→「あとりえ 然

 以上が、月の人さんの「水カビ病奮闘記」である。トウガラシや温泉水などの使用例まで書かれていて、ご苦労がしのばれる。くどいようだが、水槽ひとつひとつの環境が同じであるはずがなく、だからこそおのおのが苦労工夫して改善の方法を探るのであり、それがまた飼育の愉しみの一つであると言える。こういう実例からあなたの水槽へのヒントをあなたなりに導き出していただければ良いわけだ(これらの記述により生じたいかなる損害も、当サイトはその責を負わないことをお断りしておきます)。月の人さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。

 水カビローテーションから脱却するには、魚を一個体ずつ別の水槽に分けて、薬剤等で慎重に治療し、おのおの完治させてから、丸洗い殺菌した元の水槽に(水作り後に)戻してやる、というのがまあ確実な手だろう。菌が魚体に棲み付いているので、ケースや飼育水や底砂などを殺菌しても、カラダから伝染して、また殖えだしてくるからである(ウチの場合はどうやらオヤジJRのよう)。しかしこの方法をとるには、病気の金魚の匹数分の水槽と濾過装置その他を必要としてしまうが、ウチの金魚どもは軒並み25cmを超えてしまっているので、わが家ではスペース的にも経済的にも、とても行なえるものではない。なので私は「死なない」程度に水カビと付き合うということにし、換水のみで誤魔化し続けることにした。その場凌ぎの換水が永遠に続くというのは大変だが、おかげで週に二回も金魚と触れ合う機会ができる。常に発生寸前の状態なので、金魚の様子も注意深く見ていなければならないし、結果として頻繁に水槽に向かわなければならないが、まあこれが「飼っている」ということなのじゃないかと考える。換水はたいがい面倒だけれど、こんなに長い時間金魚と付き合っている飼い主も少ないだろうし、順調な水槽の健康な金魚たちなら、普段どれくらい観ている時間があるものやらと…。ともあれ、これが「水カビ」最後の記事になることを切に願う次第である。


←オヤジJR(じゅにあ)以外の三匹は、比較的健康な状態を維持しているので、今だ!とばかり、パワーフィルター2つとサブフィルターを洗浄し、新たなバクテリアの定着を目論んだ。飼育水のバランス育成に欠かせないのが水草だが、ウチの場合、入れるとあっという間に喰われてしまうので、水ができるまで急造セパレーター(穴あき透明塩ビ板)の囲いの中に植えてみた。食害は防げるのだが、根元に糞が沈殿したりして、いまいち企画倒れのような…。(04.08.14撮)
←三代目のトメ子(上)は、餌をとる要領が良いので、どんどん大きくなっている。一年先に生まれたオヤジJR(下)を体長で超えてしまった。もっともオヤジJRは、「水カビ病持ち」のうえ、食事がいたって不器用なので、成長が遅いのもいたしかたないか。
←折角、良い方向に向かいつつある環境を、一匹で「わや」にし続けているオヤジJR。どんどん皮膚の痛みが酷くなってきている。どうやらこいつが「菌」を後生大事に飼い続け、水槽中にバラ撒いている張本人のようだ。可哀相なので軟膏を塗ったり、指でカビを落としたりしてやっているのだが、病気などお構いなしに暴れまくってスレ傷が絶えず、頭部に“ハタケ”まで作ってしまった。どうしたものかなあ。
←ジャンボ(左)の水カビ症状は、徐々に治まりつつある。まだ鰓の下部に少し痕跡が残っているが、目玉の曇りもかなり改善されてきた。しかしお前さん、ちょっとデカくなりすぎ。
←段平の美白は、ますます進行し、もはや「銀魚」に近づきつつある。前回レポートの写真と比べて、さらに赤色部分が少なくなっている。尾鰭などは完全に真っ白。向こう側にいるジャンボの赤い口が透けて見えているほど。さて、どこまで進行するのやら。
←トメ子も段平同様、今後白化するタイプと思われる。顎から胸にかけてと、尾鰭の先の白い部分が徐々に増えてきている。
←美白して、元気満々の段平(右)と、皮膚病悪化でショボクレているオヤジJRのオス二匹。オヤジJRは、別容器に隔離して長期集中治療する必要があるのだが、残念ながらもはやウチの水槽は全部使用中でアキなし。一番の暴れ屋なのでバケツでは無理だしなあ、こいつだけは。
←段平が思わぬ白化をしたおかげで、殺風景だった水槽の風情にアクセントができたとは言える。

↓次の脱落者は、オヤジJRの公算が大であるが…案外どんでん返しがあるもんだ。
2004/08/31 (Tue)

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