金魚と淡水魚の飼育
43話
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菌魚と銀魚

↑餌をねだるときだけ媚びた目付きで尻尾も振る馬鹿面4つ。(04.11.23撮)


 あら、もう11月も終わりだ。そういえば水道の水温も低下してきた。前回、『これが「水カビ」最後の記事になることを切に願う次第である。』と纏めた経緯もあるので、今回は「水カビ」については知らんぷりをしながら書き進めることにしたい(でもね、ウチの水槽じゃ、それはやっぱり無理というもんだ)。前回、週2回の水換えと書いたが、今はもはや「中二日」ペースになっており、巡り合わせによっては週3回のときもあるわけで、じんわりと水がチベタクなってきたのには辛いものがある。金魚水槽は前面75cmだが、深さ奥行きはともに45cmあるので、いざメンテとなるとTシャツ一枚になり肩近くまで水に浸けながら行なう羽目となる。そりゃ鼻水も中に落ちようて…ま、毎年のことながら、辛いのう。

 ぼやいていても話が始まらないので、あいかわらず肥大化を続ける4匹の住人の近況について書いておくことにする。水槽内の水質については、「中二日」換水のかいあって、致命的な状態になることは避けられている。しかしまあ、住人のほとんどが、真菌をみっしりカラダに植え付けている『菌魚』なのだから、元気に泳いではいるものの、魚体に見られるダメージはだんだん大きくなってきているようだ。

 一時はもはや昇天かとも思われた「オヤジJr(じゅにあ)」は、一応の元気をとり戻してはいるが、カラダの白い膜かぶりは悪化する一方で、目玉はもはやよく見えていないのではないかと思われるほどに白濁してしまった。最巨漢の「ジャンボ」も、目玉の白濁はさらに進んでいるし、背鰭の軟条部の溶解が進み、たくさんの隙間ができてしまった。右体側上部にできていた大きな腫れ物も、どんどん爛れが酷くなってきているようだ。「段平」の白化は一時のスピードはなくなったようだが、あいかわらずジワジワと赤い部分が減少してきている。どうせなら、早く真っ白になっちまえばいいのに、夏の日焼けの皮がめくれだしている男のようで貧相である。この際、真っ白になってしまえば、晴れて『銀魚』として、大手を振って泳げるものを。とはいえこの段平、いつかも書いたように、頭部が右側に歪んでいる不細工な金魚なので、色が美しく変化したところで器量が良くなるとは思えない。そして段平にも背鰭の軟条部に簀ができている。これら3匹よりも、まる一年若い「トメ子」だけは、一年分ダメージが少ないのか、もともと丈夫なタチなのかはわからないが、ほぼ健康な状態を保っている。まあよくよく見ると鰭に少し簀が入りだしてはいるようではあるが。「トメ子」も「段平」同様、白化が進みだしていて、左目の上の小さな傷をきっかけに白い部分が頭部に広がってき、ルチャ・リブレのマスクマンのようなヘンな顔になった。サングラス焼けのようでもあり、けっこう笑える。こうして文章にしてしまうと、全員「死にかけ」のような感じになってしまうが、「中二日」換水を継続しているかぎりは、食欲も旺盛であり、いずれの魚もすこぶる元気なのである。


↑元気だけは一丁前。左:トメ子(雌)、右:オヤジJr(雄)

 ウチの金魚達の親は、金魚掬いからやってきたのであるが、今泳いでいる4匹はいずれも、ウチの水槽で孵化した連中である。2000年の冬に孵った3匹は4歳で、三代目のトメ子は3歳だ。しかしてジャンボの全長はすでに25cmを軽くクリアしている。サカナの大きさ(長さ)を表わすときは、頭から尾鰭の付け根までの長さを「体長」とし、尾鰭の先までを「全長」と称するキマリがあるようで、当欄ではいままで「全長」を測ったうえ、その都度テキトーに記述してきたが、遅まきながら今後はこの決まり事に従って大きさを表わすことにする。しかしまあ釣師もそうだが、現物を見ていない人に魚の大きさを話すときには「鯖を読」みたがるのが人情というものである。いちいち俎板の上に取りだして巻尺で測るわけにもいかないので、寸法に正確さを欠くことはご了承願いたい……で、4年間で25cm超という大きさ(全長)は、キンギョとして正常な発育なのかとの疑問を感じたのである。2番目に大きい段平も25cm級だ。3年目にすぎない「トメ子」でも段平とそう変わらない大きさなのである。まあ、母親の故「東王」にしても、晩年は30cmに達していたのだけれど、そういうG馬場的遺伝子をもった家系なのか、それとも、金魚というものは通常そんなもんなのか、というギモンなのである。

 分類学上でいうと、キンギョというのは、条鰭魚綱、コイ目、コイ科のサカナで、フナもそのグループに属し、そのフナを人間が一生懸命弄くりたおして作り出した観賞用のサカナであるから、まあ、フナなんである。学名(ラテン語)も、フナの種と同じになっている(日本の魚/中公新書)。で、一般にキンギョと呼ばれるものは、琉金やらんちゅうなどの、もっと凝った品種改良をされたやつらの事を指し、ワキンと呼ばれる比較的シンプルなやつらでさえ、尾鰭は三つ尾か四つ尾になっている。ところが金魚掬いの金魚は、キンギョではあるけれど、「ヒブナ」とも言われるように形はまんまフナである。まあ、フナの色が赤いだけの、あんまり「弄ってない」「凝ってない」やつらだ。池や川を眺めていると、ときどき「ヌシ」と呼びたくなる、1m近くあるようなどデカいコイがゆらり、と姿を表わすことがあるが、フナにしてもそれに遜色のない大物が釣り上げられることがある。ヘラブナのでかいので体長40cmというから、全長は50cmにもなろうか。つうことはウチの連中も体形はさほど変わらないから、そうなる「素質」は備えているということか。くわばら、である。

 ちょいとネットで検索(金魚にすくわれた/西部日刊スポーツ)してみたら、日本最大の金魚として認定されているのは42cmだそうで、いみじくもその通称は「ジャンボ」とな(苦笑)。しかもそれが、かなり「弄ってる」品種のオランダシシガシラだというのだから、たまげる。ならば、弄ってないヒブナのほうがデカくなる素質は高そうだもの。でもまあ、ウチの連中にそこまで巨大化する心配は不要である。なにせ「中二日」換水をして、ようやく生き永らえているのである。人工透析患者のようなものだ。この世話が続けられているのも、飼い主のわたしが不景気で外を出歩く小遣いもなく家に閉じ篭っていざるを得ないからであって、忙しくなれば長期外出も増え、換水などしていられなくなる。健康を害し、入院してしまってもしかり。一週間換水しなければ、ウチのやつらは確実に全滅するから、その生命は飼い主の「無能の人」のような貧乏生活によってかろうじて維持されているといえる。しかし金が入れば強力な濾過装置が買える、ということにもなるか……。ええいままよ!金魚共は甘い期待などしないで、今の一日一日をしっかり噛みしめて生きてゆきなさい。

↑白いのが『銀魚』になりつつある段平(雄)。
赤い2匹は『菌魚』のオヤジJr(雄)とジャンボ(雌・右)。

←ジャンボの右体側の腫れ物は、その後も改善がみられないばかりか、じくじくした感じに悪化してきたように見える。
←オヤジJr(じゅにあ)は、あいかわらずボロボロだ。目玉を覆うレンズは曇りが一段と増し、もはやあまりよく見えていないのではないかと思われる。もともと下手くそだった餌とりが、ますます闇雲さを増してきている。
←オヤジ(故魚)の遺伝子を強く受け継いでいると思しき体形のオヤジJr。無闇矢鱈と高速で泳ぎまわるので、尾鰭もだんだん大きさが目立つようになってきた。悔い改めないと、父さんみたいに早死にするよ。健康優良児のトメ子に抜かれ、今や水槽で一番小さな個体と成り下がった。
←ジャンボは再び症状が悪化してきている。折角快方に向かいつつあったのに元の木阿弥。そのせいか、最近はいつも不貞腐れた顔をしている。思い切り陰気なサカナになってきた。
←体調は悪いはずなのに、餌だけはたらふく喰って肥大を続けているジャンボ。昨年は「蕎麦」くらいの太さだった糞は、今や「饂飩」並に。ストレーナーの吸い込み口をカッターで切って拡げてあるのだが、饂飩ではもはや入りようがない。水質悪化に大貢献中である。
←段平は、頭がいい。餌とりの要領も良いし、普段の行動にも無駄な動きがない。それは認めるが、いかんせん、その良い頭が右側に歪んでいる。白くなったところで器量の悪さはどうしようもなし。なんや、その情けない表情は!
←段平は、なぜ脱色しだしたのか。このサカナ、昨年(2003)の夏に、一度死にかけている。バケツのなかで横転していた状態から奇跡的に生還した。かの「矢吹丈」も力石との一戦の後、瞬時に白髪化してしまったのではなかったか。…それやな。しかし、カサブタのような赤色の残り具合にセンスがない。どうせなら錦鯉の「なんたら三色」みたいに、洒落た意匠にできんかったもんか。まあ、全部白くなって、完全な『銀魚』になるのなら許そう。たぶんならんと思う。おまえさんにはそうなるような「徳」がない。
←昨冬、オス共のサカリ騒ぎに巻き込まれ、嫁入り前の額にハリー・ポッター傷を負わされたトメ子であったが、その傷が拡大してヘンな顔に。上には「マスクマン」なんて書いたが、ビキニの日焼け跡のようでもあり、競走馬のようでもある。ウチの金魚は揃いも揃って、どうしてこうも器量が悪いのか。
←トメ子のみが、かろうじて健康的なカラダを保っている。しかし、こいつも脱色部分が大きくなってきた。体付きには、故・俊太郎の面影が強く出てきているようだ。アイツ、助平だったからなあ。キッチリと種を残す役割を果たしたから、悔いなく逝ったのかもしれない。
←左から、ジャンボ、トメ子、段平。換水により、環境の変化を感じると、しばらくの間は、底付近に並んで大人しくなる。というか、どうやら換水後投入される「アクアセイフ」が苦手なようなのである。
←ジャンボは、食事後、お腹がくちくなると、水面に口を出してパクパクをするのが日課だ。これが不健康維持の秘訣なのか?

ひさびさの「メダカ水槽」近況

永らく、旧・海軍兵学校の現・メダカ水槽(60cm)のことを書かなかったので、ちょこっとご報告。昨年6月に立ち上げた当時の住人はクロメダカのつがいとアカヒレ2匹、ヤマトヌマエビ三匹、オトシン、石巻貝であった。
後にメダカの子が三匹孵ったが、その後、母ちゃんが死んだと思ったら、父ちゃん、すかさず娘を勾引かして強引に我がものとした。その娘は盛んに産卵を繰り返している。ほかの稚魚は息子だったのだが、父ちゃんは一匹を追い回して殺し、残った兄ちゃんも日がな追い回し続けている今日この頃だが、そろそろ老衰の兆しが見え始めた。兄ちゃんの我慢が酬われる日も近いぞ、ということで、現在クロメダカは三匹である。(04.11.23撮)
←メシをたらふく詰め込み続けながらも、肥満を気にすることもなく、悠々と暮らしていたアカヒレ二匹だが、この夏、一匹が逝った。老衰なのかもしれないが、最後は太り過ぎで泳げないほどになっていて、水草に寄りかかるようにして過ごしていたので、ま、自業自得といえる。一匹は、デブのまま健在。
←ヤマトヌマエビは脱皮を繰り返しつつ、三匹とも健在である。ウチの水槽でこんなに長い間生き続けているのは珍しい。メダカ水槽は、ほとんどかまっていないのだが、水質のバランスがうまくいっているという証しか。
←メダカの兄ちゃん。父ちゃんに毎日追いまくられているが、辛抱の日々ももう少しだ。ぼちぼち父ちゃんの寿命が尽きる。そうなりゃ、妹はおまえさんのもんだ。そのうえ残っているロートルアカヒレがくたばれば、子も生まれようぞ。ただし、卵を自分で喰わなければ、ね。

↓本音をいえば、もうこれ以上大きくならないで欲しいのである。
2004/11/24 (Wed)

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