金魚と淡水魚の飼育
44話
ヨウ素で殺菌
↑なんだか最近はいくぶん調子が良いんでないかい?
(05.03.05撮)
窓の外は桜が満開だ。記事を更新することはできなかったけれど、このひと冬の間も、わが馬鹿菌魚どもはあいかわらずすったもんだを繰り返しつつメシを鱈腹摂取し成長し続けてはきた。懸案の水カビ病の波状攻撃は、もはやわが家の貧乏同様、無いと寂しく感じるぐらい日常的な出来事であるのだが、いくつかの環境改善を行なった結果、いくぶんは効果らしきものも確認できたので、今回はそのあたりの顛末をご報告しておくことにする。
昨年(04年〉11月の水カビ発生はかなり酷く、中二日〜三日の半量換水で凌いでいたのだが、わたしの生業が多忙の時期に入り、この換水ペースを続けることが難しくなった。とはいえ、換えないと一週間で金魚が全滅するのは明白である。そこで12月後半、なんとか時間を捻出し無駄なあがきかも知れないが、いくつかの改善策を施してみた。施した改善策は、パワーフィルターの全メンテ、底砂の若干の増量、餌の種類変更、そしてヨウ素イオン樹脂抗菌剤『アイオマックペレット』の投入である。
75cm金魚水槽(約120リットル)のパワーフィルターは、エーハイムエコ2233(90cm水槽用)とフルーバル103(60cm水槽用)の2本立てであるが、ズボラをこきまくって永らく放ったらかしであったのだ。ウチの場合、あいつぐ投薬と換水でバクテリアの育成は期待できず、25cm超級四匹がひりだす「饂飩」クラスの大量の糞は、もはやストレーナーの目を通過しないので、換水時にプロホースで吸い取るしかなく、ほとんど気休めグッズと化しているのである。そう、水質の浄化はわたしの頻繁なバケツ換水が全てと言っても過言ではないのだ。蓋を開けてみると、あんのじょうスポンジフィルターもそんなに汚れていないし、糞も溜まってはいない。パワーフィルターの他に投げ込み式で入れている二本のミニゴン2の水中フィルターのほうは毎回換水時に洗っているのだが、こちらはたった三日でドロドロになるほどで、ほとんどミニゴンが処理を賄っているようなものである。とはいえ何事も気分が肝腎。二つのパワーフィルターを綺麗に洗い、新しい瀘材に交換した。
底砂は手持ちの大磯をほんの少し追加した。これも気休め程度。なにせウチに値の張る専用水槽台など買える道理が無く、家具屋のバーゲンで強度だけを重視して買った五千円の下駄箱で代用しているのだ。わが家の食卓の横には医薬品や食器の収納された「下駄箱」があり、そこにドデンと水槽が鎮座しているのである。これがかなり頼りない代物であって、今後も150kgもの重量を無事支え続けていてくれと祈るばかりなのであり、底砂を増量しこれ以上水槽の重量を増やすことは避けなければならない狼藉なのである。そして餌だが、いままで与えていた鯉用の餌を、袋当たり百円ほど上乗せして「胚芽入」のを驕ることにしてみた。少し上等にすることで、食べ残しが減り(といってもウチの連中、水質が良好なときには食べ残すことなどはありゃしないが)、消化が改善されれば排泄物も少なくなって、水質悪化が抑制されることを期待したわけである。が、目に見える効果といえば…段平の白化が止まり、赤味が戻りつつあることくらいなのであった。
最後の一手は飼育水の殺菌である。魚病薬ではこれと言った効果が得られなかったので、菌魚自体の回復はこの際、その金魚の体力任せということにして、まずは発生した水カビ真菌の急速増殖を食い止め、換水頻度を減らそうという魂胆である。安直に真似をしてもらっては困るが、ウチの場合、もはやカルキ抜きはほとんど投入しない。水道水の残留塩素で真菌を殺したほうがメリットが大きいからだ。当然、魚体に与えるダメージも少なくないだろうが、これは菌魚どもの体表や鰓の様子を注意深く見ることで、中和剤の投入が必要かどうかをその都度判断している。
↑『アイオマックペレット』をローターSで転がして、飼育水の殺菌を試みた。
(04.12.20撮)
さて今回のメインテーマ、ヨウ素による殺菌である。ヨウ素とは何ぞや? 水道水などの殺菌には前述のように広く塩素が使用されている。こちらのほうは発ガン性や毒性などの難点が指摘されているが、それにつけても使用されて続けているのは、ま、コストの問題なのであろう。で、ヨウ素だが、この殺菌力は、かつてのガキどもの常備薬「ヨーチン」や、うがい薬「イソジン」などに、ポピドンヨードとして使用されているといえば、なるほどとご理解いただけるだろう。わたしは頑固な水カビにアタマに来た〈キレ気味)ときなど、ガキ用のうがい薬(B級コサジンだが)を水槽にチューチュー振り撒いたりしていたのである。考えてみれば、こんなに勿体ないこともありゃしないのだが。
そんな時。わたしは海のヤドカリを飼育していることもあり、マリンアクアリストの方々のサイトでご教示を伺うことも多いのだが、海水魚飼育では普遍的に「白点病」対策が重要な問題になっている。その話題のなかで、観賞魚用
ヨウ素イオン樹脂抗菌剤『アイオマックペレット』
の存在を知った。発売元のサイトで詳細を確認し、「ま、とにかく一度試してみるべえ」と注文してみた。殺菌の詳しい仕組みや能書きは、リンクを辿って内容を読んでいただくことにするけれど、ウチの菌魚水槽では、遊んでいた簡易濾過装置『ローターS』を引っぱり出してきて、瀘材のバクターセルの替わりにアイオマックペレットを入れ、エアーを送って常にクルクル回っているように設置してみた。また、『ミニゴン2』内部のストレーナーが二段繋ぎになっているのを利用し、その下段の内部にもペレットを詰めている。これは、ペレットに接近した菌(マイナスに帯電)がプラスに帯電した樹脂に引き寄せられ、飛び出したヨウ素の力で酸化・殺菌される仕組みのため、常に周囲の飼育水を流動させていたほうが殺菌効率が上がるからである。
この殺菌はあくまで、ペレット周囲の飼育水にのみなされるものであるから、魚体に付着した真菌に対しては直接の効果がないのがもどかしいところだが、理屈から考えてみれば、菌魚の体がペレットに触れる状態にしてやれば効くのである。冗談だが、このペレットに糸通し用の穴を空け、ビーズ細工のようにして鎖帷子のようなベストを編み、これをオヤジJRに着せてやれば、直接魚体も殺菌でき、あやつの病気も快復に向かうのではないかと思うのだ。まあ、袖の部分から胸ビレ尻ビレを出すことになるからかなり難しい編み物にはなろうが。鎖帷子コルセット姿のオヤジJR、見て笑いたい気もする。
上記4つの策を施し、さてその効果は…あったのである! 投入後20日ほど経った頃には、換水ペースを一週間おきにまで延ばすことができたのである。大量の糞が水を汚すので、一週間に一度の換水は必要だが、少なくとも水カビは急発生しなくなり、コケも発生もいくぶんかは抑制された。多忙の折、実に助かったのである。メデタシメデタシ……で、4月に入った現在はどうかというと、中三日でカビ発生、オヤジJRはグロッギー、またぞろバケツリレーを余儀なくされているのだ。そう、このペレット、「病気の根本は治せない」のである。しかしま、ウチの水槽の場合、アイオマックペレットの効果は3ヶ月程度で消滅することが判明したわけだ。で、本日追加注文しました〜。
↑水カビさえ出なけりゃオレたちの食欲かァ無限だぜ。メシくれ!
左からジャンボ(♀)、段平(♂)、トメ子(♀)。
(05.01.14撮)
←ペレットの大きさはこのくらい。水に浮くのでそのまま投入するわけには行かない。また、ヨウ素が自然に水中に溶け出すわけではないので、ペレットが菌を含んだ飼育水に触れる機会を増やしてやるのが上手い使い方だ。というわけで、余っていたローターSを利用することにした。
←重症菌魚2匹が殺菌装置をバックに記念撮影〈左:オヤジJR、右:ジャンボ)。ペレットは飼育水を殺菌するが、魚病薬のように魚体が持つ病気自体に直接作用するわけではない。したがって、こやつらが振り撒く病原菌VSヨウ素の殺菌力のイタチゴッコなのである。
(05.03.05撮)
←オヤジJRのボロボロさは、最近は滑稽味さえ感じさせる。何度も、もはやこれまでか、と思わせる一方、換水直後の元気さは水槽一番なのだから不気味な奴である。ただこの春はあんまりサカっていないようだ。やはりダメージの蓄積は大きいのか。
←でぼちんには“くさ”、目玉は“白内障”、唇も荒れ放題のオヤジJR。胸ビレの付け根にも水カビ病による爛れを常に持っている。おまけにアタマも悪い。ただバカはバカなりの真っ直ぐな気性はかえって潔い。昨今、人間界にもこういう“漢”は少なくなった。
←ジャンボも目玉の曇りが解消しない。背鰭にあいた簀も大きくなりつつある。背中の腫れ物も治らない。のに、なんで毎日あんなに大量のメシが喰えるのか? 古来、人間界にもこういう“おばはん”はゴマンといる。
←水質改善の試みの一つとして、餌を胚芽入りのものに変えた。まあ色揚げ用のスピルリナなんかも含まれているのだろうが、結果、段平の白色化の進行が止まり、逆に徐々に赤みが戻ってきているように思える。
(05.01.14撮)
←スランプのときの桧山進次郎(阪神)のような顔だな。
←段平の背中。ね、赤みが戻ってきているでしょ。
←パワーフィルターのメンテも、飼育水の殺菌も、水槽の根本的環境からいえば気休めに過ぎない。大飯喰らいの25cm超級四匹は75cm水槽のキャパを超えている。さて、換水だけでどこまで行けるものやら。また、わたしのカラダがいつまで持つものやら。
メダカ親父&老アカヒレ逝く
↑晴れて夫婦となった黒メダカの兄妹。メダカ水槽はこの二匹のみとなった。
(04.03.05撮)
旧・海軍兵学校のメダカ水槽(60cm)では、一匹ずつ残っていた、鬼畜親父と老アカヒレが天寿を全うし、あいついで老衰死した。親父メダカに追われ続けていた息子は、ようやく妹と番うことができたのである。メデタシメデタシ。
←親父メダカは痩せてヨイヨイになりつつも、最後の最後まで空威張りを続け、その意地を見せた。左の写真は死ぬ前日だが、餌が入るとダッチロールながら気力で水面を目指して上がる。
(05.01.20撮)
←う、もう動けん。とうとう大磯砂を枕に床に伏せてしまった、メダカ親父。自分の寿命に納得しているのか、その目には清々しい潔さが見える。1月21日没。
←あんなにデブだったアカヒレも寿命が尽きる直前となると、さすがに痩せてきていた。水面近くをフラフラと泳ぐ。3月2日没。
←一度は実の親父に囲われてしまった娘メダカではあったが、ようやく兄ちゃんと二匹っきりの暮らしが始まった。いまやだだっ広い水槽の住人は黒メダカ二匹の他にはヤマトヌマエビ三匹と石巻貝一匹だけだ。(モノアラガイは無数に棲息)
(05.03.05撮)
↓もっと大きい水槽、きぼーん!
2005/04/09 (Sat)
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