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←暖かくなってきた
そろそろオカヤドカリが活発に活動しだした。
なにか面白いことをしでかしてくれるかも。
(3月9日撮影) |
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この2、3日また寒さが戻ってきたが、桜も咲いていることだし、春は春だ、目出たい。
オカヤドカリも、ようやく砂中から這い出してきてうろうろしだした。とはいっても盛夏にくらべれば、まだまだ動きは鈍く、ヒーターの側に寄り添うようにじっとしていることが多い。食欲もあまりない。尤もヤドカリは、金魚のように大飯喰らいではないので、煮干しに取り付いている姿を眼にしていれば、それなりに喰っているのだろうし、健康には問題はないと思われる。
3月上旬に敷き砂を中目の物から細目のサンゴ砂に換装した。個体差があるのかもしれないが、ウチのやつは、どうも細かい砂に潜るのが不得手のようだ。中目の砂の時は貝殻がすっかり隠れてしまって、どこにいるのかわからなくなるほど深く潜っていたが、細かな今では、せいぜいアリジゴク状態で止めてしまっている。砂の水分が少ないと、掘っても崩れ落ちてきて、そうなってしまうのは道理だが、逆に湿っていても、体中に砂が纏わりついてしまい、オカヤドカリも不快なのかも知れない。乾湿両方の砂の環境をつくり、もうしばらく様子を観て、どちらが適しているのかを検証しようと思う。
さて、拙宅のオカヤドカリを露店商から100円で買ってきたのが一昨年の夏。そろそろニ年になる。そのとき入っていた貝殻は、実は今ホンヤドカリ(海水)が入居している、殻の直径1.5cmくらいの物だった。現在は東急ハンズで購入してきた直径3.2cmくらいの巻貝を宿にしている。砂に潜って脱皮を繰返したあげく、色白だった体もだんだん青みや赤みが付いて、逞しくなってきた。横着な予想だが、ホンヤドカリの育ちぶりなどを参考に類推するに、4〜5歳と云うところではなかろうか。露店商では3,000円クラスのサザエみたいなものも売っていた(種が違うのかもしれない)ので、あの大きさまで生きるとすれば、かなり長命な生物ということになる。いまの飼育環境でどこまで育つものかは疑問だが、これは楽しみなことだ。
このオカヤドカリ、わたしが子供の頃から、夏の露店商やペット屋でよく売っていたものである。毎年、購入しては秋の声を聞くまでに全滅させていた。そういう生き物だと思い込んでいた。だが実際に飼育してみると、さほど手がかからなくて、それでいて愛嬌のあるヤツだということが分かった。金魚にくらべても驚くほど世話がラクだ。餌代もほぼゼロだし、大袈裟な海水の濾過システムもいらない。上手くやれば(照明の熱とかで)ヒーターも不要かもしれない。ただし、個体の健康状態と飼育環境(温度、湿度等)は、こまめにチェックしてやらねばならないが。死んでしまう可能性は脱皮の失敗がほとんどで、これはこちらがどうこうできるものでもなさそうだ。ヤドカリがドジ踏んだ、ということになる。そのために砂に潜ってしまったら最後、こちらとしては、女房が婦人科の分娩室に入ったのと同じで、出てくるのを待つしかないわけだ。つまり、手が掛からない。
じゃあオカヤドカリの魅力は?といえば、やはりその表情の愛嬌さだろう。特に「目」だ。怒ってもいないし、笑ってもいない。強いて云えば、ちょっとアタマの足らん、情けないやつの目だ。(ホンヤドカリの目は「宇宙人」みたいな不気味さ、怖さを持っている)この目の付き方と動き方が絶妙に良い。弱者なりの意志を感じさせる目である。
それから、その動きの早さが適当だ。時々ケースから出し、テーブルの上などに置いて行動を見ると愉快だ。怯えると意外に早く移動するが、あっというまに窓から逃げ去った、という羽目にはまずならない。しかし、飼育当初はいい加減な飼い方だったので、度重なる「脱走」に悩まされもした。一週間ほど見つからなかったことも数度ある。冷蔵庫のウラで干涸びていないか、などと家具の隙間を中心に捜索するのだが、まずいない。諦めた頃に「コーン」という音でその所在がわかる。大概、家具やカーテンの上部から足を滑らせて落下してくる。目の表情と同様、「○○とケムリは高いとこへ登る」なのである。
そのウスラバカな表情を眺めていると、「キミはいったい何処で採られてきたんだ」と思う。
オカヤドカリは日本では天然記念物に指定されている。しかしまあそのへんの海水浴場にはいない。南西諸島にいるようだ。天然記念物は数が少ない生き物ということだから、採っちゃいけないものだ。じゃ、ウチのヤドカリはガイジンか?と云うとどうやらそうでもないようだ。調べてみると、天然記念物とはいえ、※ 認可を受けた特定の業者に年間30トンの捕獲が認められているという。ヤドカリ30トン。1トントラック30台分。なんと300万匹が、とにかく採っても良いことになっているらしい。つうことは、それだけ採っても絶滅の危惧はない天然記念物ということになる。クジラの尾の身のように料亭でオカヤドカリが珍重されている話も聞いたことはなく、かといってハムスターのように、そこいらじゅうの子供が飼え飼えとも云っていない、地味なペットである。で、この認可を受けた業者が実際それだけ採って採算がとれるとは思えない。…これ、いわゆる談合じゃないが、変な業者保護の、というか南方地元議員のセコイ算段の結果なんじゃないのか?と思い至ってしまうのである。
偏屈の結論!これは我々が ※「採ってもいい」生き物だ。もちろん、目的が飼育による学習や研究であることが前提ではあるが。ただし採集現場で逮捕されても責任はとりません。
ハムスターの話題がでたところで、オカヤドカリもブームになっておかしくないキャラクターだと思うのだが、どうだろう。
愛嬌がある。飼いやすい。長生きする。手にもとれるし、アニメ化しても受けそうだ。なにせハムスターは2年が寿命だ。臭いのはハムも亀も同じ。ポケモンの主人公がピカチュウでなくヤドランだったとしたら、いまごろ空前のブームになっていたかも知れない。ハム太郎も地味なままだったかも。しかし、一見可愛く思われるオカヤドカリも、裏を返して腹からみれば、これはもう「エイリアン」である。殻から胴体を引き出せば、なおさらで……まあ無理と云うことにしておこう。
私にとってもブ−ム中のペットを喜んで飼育する趣味はさらさらない。このままひっそりと変わり者で居続けた方が、性に合ってる。
(※2006.09.01追記:本文は2001年4月に記したものですが、その後、大手玩具企業が2004年夏に販売した飼育セットを契機にオカヤドカリの飼育が一般化しました。それに伴い、オカヤドカリを取り巻く状況は大きく様変わりしました。2006年現在ではオカヤドカリの認可捕獲量は年間2トンにまで減少したとも言われています。上記過去記事(特に下線部)は訂正・削除はしませんが、状況はすでに大きく変化していることをご承知の上、良識をもってお読みください。/cave)
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