おかやどかりの飼育

36話
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春の訪れ 〜ロフトで冬越し完了〜

↑海水浴のあと、流木に滲みた水分を吸いだすヤド六。(06.04.05撮)


 大阪は桜が満開だ。この春を迎え、ヤド六はわが家にやって来てから7回目の冬越しを済ませたことになるのだが、この冬は過去6回とはちょっと違う展開だった。それというのも昨年は10月に脱皮潜りをしてしまったので、11月アタマから今までの厳冬期、ずっとヤド舎内をウロウロして過ごす羽目になってしまったのだ。ズボラ飼い主としては、環境に一番気を遣わねばならない寒い期間には、できることなら例年通り大人しく砂に潜っていて欲しかったのだが…。とはいえ、よしんばタイミング良く脱皮潜りをしたとしても、せいぜい一か月強潜るだけなので、たいして楽になるというわけでもないんだけれど。

 もうひとつ、今回は水槽底面に砂一切なしの、アクリルボックスのロフト2つのみでの初の冬越しでもあった。冬用のレイアウトに模様替えしようかとも考えたけれど、まあ問題なさそうだったので、秋バージョンのままで済ませてしまった。その冬の間に、2回ほどロフトの砂の入れ替えをしたので、環境の点では例年よりは良好だったのではないだろうか。ヤド六が潜っていないときを見計らって、ボックスのみを取りだして砂を総替えできるから、ズボラには持って来いだ。

 正解だったな、と思うのは大小2つのロフトを作っておいたことだ。異なった環境ができるので、こちらが特に気を遣わなくても、その時々、ヤド六が自分の好みでマシなほうを選択してくれる。メンテのとき交換する砂は、片方は濡らさず、もう片方を多少湿り気味にしておく。すると二種類のロフトが、水槽内にドライな環境と適当な湿度を供給し、両立させてくれるので都合が良かった。砂粒の大きさは、どちらか一方には常に細目のものがあるようにしておき、あとはストックのうちで状態の良いもの(つまり、いちいち洗わなくても使えるもの)を粒の大小にこだわらず入れている。濡らすのはより粗い砂粒のほうにしておくのが無難だ。

↑寒波が来ると、その期間だけ短期潜りをして凌ぐ。
今回も小ロフトに3日間だけ潜って出て来た。(06.04.05撮)

 ひと冬の間じゅうウロウロされたわけだが、観察していて大したもんだと思うのは、寒気団がやって来て急激に冷え込む日があると、ちゃっかり潜る。で、寒気が去るとすぐに出てくる。飼い主が綿入れを着るように、ヤド六も風邪っぴきにならないように自己防衛をやっているというわけか。この見事なくり返しを見ていると、こちらがあれこれ世話を焼いてやる必要もあんめ、という気にさせてくれる。

 オカヤドカリは、冬季には活性が落ち食欲も減退するというのが一般的な見解のようだが、飼育下でもそうなのだろうか。この冬のヤド六に関しては、活性・食欲ともに夏場とあまり変化がないように見えた。もっとも、活性や食欲が低下するときもあったが、これは気温や湿度を維持するために密閉に近い状態にせざるを得ないことによる、冬の水槽内環境の均一化が原因ではないかと思った。つまり、飼育下ではどうしても暑すぎたり蒸しすぎたりしがちなのだ。しかも逃げ場がない。快適な環境へ移動する選択肢が減り、活動するには辛い状態になるのではないかと感じたのだがどうだろう。活性や食欲は、冬季の気温が低下するから落ちるというよりは、繁殖のサイクルに伴ったものと考えたほうがしっくりくる。

 4月4日。ヤド舎を覗いてみると、ヤド六は小ロフトの底の方でトンネルをゴソゴソ掘っている。こりゃチャンス、と小ロフトのみを取りだして、水槽の丸洗いをした。1月末から放ったらかしにしていたので、底に溜まった水に餌が落ちて腐り、流木はその水に浸かっていた部分から大カビが。大ロフトの中目サンゴ砂は糞だらけ。飲み水もひと月以上換えていなかった。水槽と流木をお湯でゴシゴシ荒い、大ロフトにストックのサンゴ砂パウダーを入れ、穴掘り中のヤド六入り小ロフトを戻して、はい終わり。ヤド舎が綺麗になったのを感じたか、ヤド六は穴掘りを止めてそそくさと地上へ。いやはやまったくもって酷い環境であったが、そう簡単には死なんもんやなあ。

↑隣の金魚水槽は中3日で水換えをするので、その度に水草の端切れが出る。
好物なものだから、ヤド六の主食はもはや水草に落ち着いた感じ。(06.04.05撮)
↑大ロフトのスペースにはストックのサンゴ砂パウダーを入れた。
新品ではないから水を注さなくても適当な湿り気がある。(06.04.05撮)

 テキヤから前甲5mm程度のヤド六を100円で買い、面倒を見て7年半。さすがに徐々に大きくなったとは言うものの、いまだ前甲長は15mm超というところ。ちまたでまれに売られている、超どデカいサイズのムラサキなどの大きさに到達するには、あと10年経ってもとても無理だろう。つうわけで、そういうサイズのオカヤドカリを購入して飼育しているお兄さんお姉さんがた。あんたん家のヤドカリは、長年厳しい大自然の中を生き抜いてきた猛者。あなたよりよほど人生経験が豊富ですぞ。種こそ違えど同じ生物。おそらくは昭和50年代生まれの先輩に対し、粗相や失礼をすることなく、十分な敬意を持って育てていただきますよう。これはお願い。


 春のメンテナンス

←ヤド六が小ロフトに潜っているスキを見て、ヤド舎を全メンテ。砂を総替えし、ケースも丸洗いした。終了後、ヤド六入りのロフトを戻してやると、トンネル掘りを止めて出てきた。きれいになったヤド舎をまた砂だらけにしてやろうという魂胆か。
(06.04.05撮)
←昨年10月以来脱皮をしていないが、体色は少しずつ変化しているような気がする。紫みが強くなったり、白っぽくなったり。まあ、光の加減による錯覚なのかもしれないが。
←3日ほどの潜りだったとはいうものの、砂だらけだし、海水浴でもさせとこうかと海ヤド水槽へ。暖かくなってきたせいか、今回は躊躇なく底の方へ。
←海ヤド水槽の底をウロウロするヤド六。現在こちらで暮らすヤドカリは、イソヨコバサミの磯六一匹のみだから、ほぼ貸切みたいなものである。

↑銭湯から戻ると、潮っ気でノドが渇く(のかな?)。
流木の湿った部分に鋏を擦り付けて、真水を吸い上げる。(06.04.05撮)

←「やっぱり、流木からの吸い上げじゃ、いまいちモノ足らん」つうのか、真水入りのケースにおそるおそる近づいてゆく。どんくさいので、しばしば脚を滑らせてハマってしまうのだが。
(06.04.05撮)
←「ん〜、水はうまいなあ」
それもそのはず、メンテ前まで、この水はひと月以上替えていなかったのだ。「ズボラな飼い主を持つヤドカリの苦労も知ってもらいたいもんだ」
←喉の渇きを癒したら、今度はメシだ。ダイニングのスペースでポップコーンと焼鮭フレークを腹に詰め込む。左うしろにあるのは、常設の塩土とカトルボーン。
←しかし、青物が大好物のヤド六である。水草やガジュマルが入るやいなや、猛烈にがっついて一気に平らげてしまうのが常。これはガボンバだが、5cmくらいのガジュマルの葉なら30分もかからずに跡形もなくなる。
←ヤド六のお気に入りの場所がココ。一通りの行動が終わると、ダイニングの隅っこにご帰還。この冬もおおかたはこの場所で落ち着いていた。しかし落ち着くということは、トイレでもあるということになり、自分の糞を座布団にして腰を下ろしている。まあここなら脇の塩土もちょいと摘めるしねえ。手前の三角フラスコにガジュマルの一輪挿しが入れば、結構なお隠れスペースになる。(現在ガジュマルは養生中。まもなく新芽が入るであろう)

2005〜6年はロフトで冬越し
↑この冬のヤド舎のレイアウト。砂のスペースは大小二つのロフトのみ。
(05.11.05撮)

←シートヒーターだけで20℃キープが困難な、冷え込みの強い夜間は、上部照明を熱源にして温度を稼ぐ。夜中、煌々と明るいのもヤドにとっちや迷惑だろうからと、グリーンのカラー塩ビ板を挟んでお茶を濁す。
(05.11.06撮)
←砂を浅く掘って、そこに落ち着くヤド六。
よく「隠れ家」を入れてやるという飼育者がいるけれど、わたしは設けない。常にヤドカリが視野に入っていないと、健康状態も判断できず、脱走や事故などの場合の対応が遅れる不安があるからだ。なので死角は作らない。同じ理由で断熱材で水槽を覆うこともしない。しかしまあ、砂に潜ってしまった場合は別で、そのときの生死はヤド任せ。飼い主がズボラを決め込める、お気楽期間ということにさせていただいている。そんな仕打ちを知ってか、ヤド六は自分なりに納得の行く場所を探したり作ったりして凌いでいる。
←狭いヤド舎なので、プラケース以外のスペースを有効利用したいのだけれど、手持ちの流木の形状ではうまく納まらない。そこでヤド六お好みの「雲南古木」を一本追加購入して入れた。流木三本と備長炭と貝殻を配置して、汚水の溜まった水槽底面に降りられないように工夫している。
(05.11.05撮)
←ヤド六お得意の「ダラケ」ポーズ。第一、第二の4本の触角を大バサミの間に仕舞い込んでいるときは、ぼーっとしている証し。脚の力も抜いて自分の貝殻に依りかかっているだけだ。この上、両眼まで畳み込んでしまうと、もはやオネンネモード。危機管理度はゼロということになる。こういう状態のとき、ふいに大きな音をさせて見ると、必ずコロンと落ちる。
(05.11.30撮)
←飼い主に水槽を買い替える余裕はなし。金魚の世話に追われている現状では、オカヤドの数を増やすのもためらわれる。またヤド六も宿替えする気配も見せず、このところは同じような写真ばかり。代わり映えしないダラダラ更新が続くけれど、何卒ご容赦のほどを。
(05.11.05撮)

↑冬期でも海水水槽の水温は25℃以上。まさに銭湯である。
しかし湯冷めにはくれぐれもご注意を。(06.01.13撮)

↓「飼い主はどうやら今年も婿取りをする気がないらしい。
早いトコくたばらんかなあ、あの菌魚ども」
2006/04/08 (Sat)

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