ヤドカリと磯の生き物の飼育

33話
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アサリ大好き
〜チビ・お吟婆・ウニどん・アマオブネA 来宅2周年〜



↑みそ汁用に砂だし中のアサリを台所で発見したおっさんは、家人に内緒で一個失敬して海ヤド槽にポチョン!とな。
早速レイシガイのハンニバル博士がとりついたと思ったら、おっつけホンヤドカリのチビもやって来た。
(08.04.06撮)


 アクアリウムコーナーのトップページに最近設置した「生存日数表示」によると、ホンヤドカリの「チビ」たちが南紀白浜からウチに来てから2年が過ぎたそうである。もっともこのジャバスクリプト、どこかで配布されていたものをまんまテキトーに貼り込んで使用しているので、閏年などが正確にカウントされているのかどうかはわからない。でもまあ、ヤド研関西支部のお歴々とともにバケツぶら下げて南紀白浜某所を訪れ、チビやお吟婆やウニどんを拉致して帰ったのは2006年の4月18日なんで、確かに2年は経過だ。その時以来一度も磯には出かけていないから、当然海ヤド水槽のイキモノの数は徐々に減る一方。登場する新しい面子や珍しい写真とてこれなく更新も停滞ばかりで人出も凋落、坂道ローリングストーン状態なのは否めない。しかし管理人の私的不景気が深まる一方のうえ、体調まで崩す羽目になったとあってますます水槽などに構っていられない今日この頃なのだ(偉そうに言ってる場合かい!)。

 当欄の更新ネタということを考えれば、そりゃあ磯に出て珍しげな新顔を採集してくれば話題には事欠かないだろうし、もっと水量が多くて高性能の濾過装置付水槽を設計しグレードアップして、その性能レポートをするのも愉しかろう。水槽をぼんやり眺めているときなどに、今後の海ヤド槽についてそんな思いを巡らせることもあるにはあるのだ。が、環境を変えても、必ずしもより良好な結果が得られるとは言えないし、どっちかつうと大変面倒な問題に見舞われる確率の方が高いと思う。しかるに現在のデスクボーイ水槽にいるお馴染みの面々たちは、過酷な環境を生き抜いて来た猛者ばかりで、少々ズボラをこいて放ったらかしにしても何気に耐えて生きていてくれるし、はっきりいって最近は、あたしの手が全然かからなくなっている。

 地味で退屈な連中ばかりといえばそうだが、「手がかからない」というのは、水槽飼育の一つの理想の姿であって、ちまた多くのアクアリストがどんどん設備投資を重ねて追求しているのは、ひとえにこの境遇への到達であるとも言えるのではないか(勝手に独り合点をしてまんなぁ)。もうずいぶん前から当デスクボーイはじわじわ水漏れしていて、水槽台がわりの本棚の上に敷いている12mm厚天板は塩を含んでぼよぼよになってしまっている。いずれにせよ近日、水槽を替えにゃならんのであるが、いましばらくはこのままの環境、このままのメンバーで観察して行こうと思う。ま、住人が全滅すりゃ別だけど。毎回何かのセコイベントを企画してやればそこそこ話題もできるだろうさ。今回みたくアサリ一個でお茶を濁したりしながらね。せっかく今、水槽は希有に「平和」な状態なんだから。



活アサリ争奪戦
↑アサリ投入後、一番にやって来たのは、
「生き餌担当」を標榜するレイシガイのハンニバル博士だった。
さすがというか、いまだ衰えずというか。
(08.04.06撮)

アサリのご難

←活アサリを水槽に投げ込むとき、いつも思うことだけど、別に餌になってもらわなくても良くて、ここで暮らせるものなら長く暮らしていただき、その日常の暮らしぶりを観察させていただきたいのである(シジミの場合は海水だからチトきついが)。だから、なるだけ砂に潜り易そうな場所に置いてやるのだが、好物の匂いに対するハンニバルの動きは素早く、一匹のみでは隠れる隙はほとんどない。複数同時に入れた場合は最初に標的にならなかった個体は砂中に身を隠すチャンスもあるのだが…

そういえば以前にも同じネタで作ったことがあったなあ。前のはヤドカリが主人公だったが。18話:活アサリ攻略法
(08.04.06・以下同日撮影)
←そこにやってきました来宅2年経過組、ただいま当水槽唯一のヤドカリであるホンヤドカリの「チビ」登場。

「くんくん。な〜んだかアサリのような、いいニオイが漂ってきてますね〜 いったいどこに居るんでしょうかね〜♪」
「おっ!こんなところに居よったかああ。早速いっただきま〜す」
チビ:「ん?なんか、後ろの方に吸い付いとる先客が居るみたいだなあ」

ハンニバル:「わしじゃあ。このアサリはわしのもんじゃあ」

チビ:「アンタ、そんなこと言うても尻の方で、こっちの水管の方まで手が回っとらんやないかい。ちょっくら頂かせてもらいます」

ハンニバル:「そらズルいわ、後出しの抜け駆けはズルい」

アサリ:「なんかさっきから尻の方がムズムズすると思てたけど、前からも鬱陶しいやつが来よったみたいやなあ」


 イボニシやレイシガイが二枚貝を襲うときには、まず殻に取り付き、二三日かかってくちばしの先の歯舌というヤスリ様の歯と、酸を使って貝殻に小穴を空け、その穴に口吻を差し込んで中身を溶かしながら全部食べてしまうとあるが、ウチのご両人がそんな面倒な作業をしているところにお目にかかったことはない。

 アンダーテイカー(イボニシ)は積極的に生体を襲って食事することはほとんどなく、時折塒から這い出して来て、シーフード片や喰い残されたものを摘んでいて案外粗食である。図鑑などにはイボニシは攻撃的だと書いてあるので、この消極的な習性はウチの個体だけに特有なものかもしれない。一方ハンニバル(レイシガイ)のほうは、餌になる貝の匂いを探知するや否や必死でその場所を捜索し、一目散に近づいて行って取り付くのだが、それでもいまだ二枚貝のぶ厚い殻に穴を開けるところを見たことはない(スガイなどの巻貝の蓋に穴を開けたことはある)。

 しかし、いつもしばらくすると貝殻が開いて身が露出し、レイシガイはそこに顔を突っ込んで直接肉を食べている。残念ながら、まだハンニバルがアサリやシジミに取り付いてから貝が開いてしまう瞬間まで続けて観察したことはないのだが、この一連の写真でもわかるように、おおむね二枚貝の背の蝶番のあたりに口を持って行って何かしていることが多い。そして次に水槽を見に行くと、もう貝がぱっかりと開いて身を晒しているのだ。想像するに、二枚の貝を繋いでいる靭帯部分を歯舌で攻めて、それを切るなり伸ばすなりして貝殻を開かせているのではないだろうか。もしそうだとすれば、硬い殻に三日三晩もかけて小穴を開けるよりはずいぶん合理的で賢いやりかただ。餌にありつくまでの時間もぐっと短縮できるだろう。テクニシャンなのか? ハンニバル。



アサリ:「ハサミで身をチョッキンされてもかなわん。とりあえず引っ込んで蓋を閉めとこう」

チビ:「あ、摘む前に引っ込みやがった、くそお、ほたらどこから喰うベか?」

ハンニバル:「けっ、お前さんにゃこのフタを開けるのは無理だろ、あっちへいって配合飼料でも喰ってな!」
チビ:「くそ〜、でもあいつの言う通り、俺のハサミは貝殻をこじ開けるにゃ力不足だなあ」

ハンニバル:「だからさっさとあきらめて向こうへ行きな、つうの」

チビ:「くやしいなあ。しかし、こいつはさっきから後ろの方で何をやっとるのか?」

ハンニバル:「ゴリガリゴリガリ・・・・・・」
チビ:「やいこら、お前、アサリの背中で何やってんだ?」

ハンニバル:「おっ、邪魔をしに来やがったな」

アサリ:「ぷは〜っ!、ようやくヤドカリの野郎、どこかに行きやがったわい。今のうちにとっとと潜っちまうに限る」

ハンニバル:「ゴリガリゴリガリ・・・・・・」
ハンニバル:「ゴリガリゴリガリ・・・・・・」

チビ:「なあよお、お前さん、そこに吸い付いてりゃアサリが喰えるのかい?」

ハンニバル:「うるせえなあ。今、コイツの蓋を開けてんだよ。仕事の邪魔をするなよな」

チビ:「蓋を開けるって!そんなことができるのか?」

ハンニバル:「ま、見てなって。おいらが先に喰ったあとの残飯ぐらいはお前さんにも回してやるからよ」
チビ:「まあ、蓋が開かないことにはしゃあない。それまで、こいつに乗っかって待っとくとするか、首尾よく開けば一番にイタダキだ」

アサリ:「この隙に、砂の中に潜っちまいたいんだが、なんだか思うように身動きがとれんなあ」

ハンニバル:「ゴリガリゴリガリ・・・ふふふ、細工は流々仕上げを御覧じろ、てんだ」

チビ:「しかし、アンタも結構気長だねえ…」

ハンニバル:「ズボラなお前ェに言われたかァねえょ」

↑喰われる前に砂に潜って身を隠そうと足を出すアサリ。アサリの蝶番の靭帯を切るべく鋭意作業中のレイシガイ。
レイシガイがアサリの蓋を開け終わるのをの〜んびり待ってるホンヤドカリの図、でした。
この後おっさんはシビレを切らして退場し4時間後に覗くとアサリは全開オープン。身は既に両者に喰われておりましたとさ。
(08.04.06撮)



さて、その他の連中も一応は息災です
↑採集から2年が経過したホンヤドカリ(チビ)。今月の中旬に一回脱皮をしたようだ。
徐々に成長はしているけれど、あいかわらず粗食で鋏脚や歩脚が華奢な個体だ。
(08.04.06撮)

←こちらは古株イボニシ(アンダーテイカー)。月に二度くらいはこのようにウロウロしにガラス面に出てくるが、それ以外はいつもの塒の場所でじっとしている。動かない時には活アサリを入れても全く反応しない。こいつは屍肉専門。寝ている鼻先にシーフード片を置いてやると面倒そうに口吻を伸ばして食べに来る。

今回、写真はナシだが、アマオブネガイ(A)も健在だ。こいつも来宅2年である。
(08.03.23撮)
←冷凍シーフード片を銜えたまま移動中の行儀の悪いムラサキウニ(ウニどん)。最近はワカメよりシーフード片を与えることが多いのだが、それだと美味しいウニには育たないのだろうか? ウニどんもチビ同様、来宅2年経過の個体だ。
(08.03.23撮)
←こちらも来宅2年組、ヒメイソギンチャク(?)のお吟婆である。最初に産卵に出くわしたときは興奮したけれど、何のことはない。その後も大潮や人工海水交換の日に結構な頻度で産卵を繰り返している。今月も14日に産卵した。撮影はできなかったけれど、前に紹介した時より、卵の一粒一粒が小さく、色も茶色味が強かったように思う。餌によって変化するのかな。
(08.03.22撮)
←こちらも健在、ケヤリムシ(の仲間)君。こいつは2年経過の白浜組よりも古株で、購入したライブロックから発生したと思われる。鰓の一部にイレギュラー気味に白い部分ができている。鳥の羽根みたいだなあ。

前回記事で話題にした、カーリーことセイタカイソギンチャクは、その後も沢山居るには居るし、じんわりと増えてくるのだが、海水交換の折にサイフォンで吸い取ったり、付着している岩などごと水槽外のバケツに出してはブラシで擦って落としているので、減っては増えの繰り返しというところ。なので増殖も一線は超えずにまあまあ平和だ。
(08.04.06撮)


↑ウニどん食事中。さて、このウニどん、はたしてオスなのかメスなのか。
外見では肛門周囲にある生殖孔の大きさ(オスがやや小さい)を見ろ、とあるが、比較できないからこれはチト無理だ。
食用にするなら精巣と卵巣の色で見分けられるが、割らにゃあならん。それじゃ死んでしまうしなあ。
まあ喰う分には黄も赤も美味しく頂けるから、どっちでもいいんだけどね。
(08.03.23撮)

人別帳&過去帳も変化なしと
↑おかげさまでみんな元気でおます。
(08.03.23撮)

住人覚え書/2008.04.21現在

●先住者(2004.7.18採集)水槽在住3年9カ月
・ハンニバル(クリフレイシガイ)
・アンダーテイカー(C型イボニシ)
・ゴカイ類:大小各種無数(採集・混入日不明/どう代替わりしたかも不明)
 ↑「ケヤリの仲間君」もこちらに含む

●06年春入居者(2006.4.18採集)水槽在住2年0カ月
・ホンヤドカリ:1(チビ)
・ヒメイソギンチャク:1(お吟婆)←種名はテキトーなのでご注意を
・ムラサキウニ:1(ウニどん)
・アマオブネガイ:1(アマオブネA)

●いつ混入および発生したかわからん入居者
・カーリー軍団:無限(セイタカイソギンチャク?)

●過去帳(2008.3.21以降/確認できたもののみ)
・今回はなし



↑アンダーテイカー(C型イボニシ)静かにお散歩中。
しかしこんな地味な生き物のこんな大画像を載せてるお馬鹿なサイトつうのもここくらいでしょうなあ(笑)。
最近
えらく大人しいんで、今回の仮想登場BGMは『 Moonchild(King Crimson)』にしとこう。
(08.03.23撮)

↓さて、次回はどうなりますことやら…
(08.03.22撮)
2008/04/21 (Mon)

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