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2005年10月、梶井基次郎の短編小説「檸檬」の舞台にもなった老舗書店「丸善」の京都河原町店が惜しまれながら閉店した。もっとも、丸善が京都に出店したのは1872年で、小説の舞台になった旧店舗は別の場所にあったようだが、このたび閉店したビルの7階に「丸善画廊」があったことはわたしも憶えている。その京都・丸善画廊のマッチ箱だ。
内容が、ギャラリーの催し案内になっているので、開催期間が「29・9・17〜9・23」とあり、当欄にこれまで掲載してきたマッチ箱の中で、唯一正確な作成年代がわかる代物だ。管理人にとっては非常にありがたいのであるが、これは正真正銘昭和29年のブツである。
さて、催しを詮索してみると、「第三回 亜土 工芸展」とある。「しらかべ」は意味不明だが、このマル文字タテ詰み書体の「亜土」といえば、もうあの人、「歌ってお絵かき」のおねえさん(当時)に違いない。ええ、あたしだって見てましたよ、青っ洟垂らしながら白黒テレビで。アクリル板に絵を描きながら歌ってましたが、あれ、本来はカラー放送だったのかな。
この国の、ファンシーキャラクターグッズの元祖にして権化のような方だが、現在でも、画家・イラストレーター・工芸家・作家、はたまた舞台女優やジャズ歌手としてご活躍中で、「亜土ちゃん」なんて呼ばせておられます。余談だが、「篠原ともえ」なんてのは、この路線を追求しているのであろうかね。
しかし、このマッチは「昭和29年」の催しで、しかも「第三回」である。イメージを大事になさっている方に大変失礼なこととは思うが、レトロものを扱う者として、裏付け調査はせねばならぬ、というわけで一応調べさせていただいた。ご当人は1939年12月、東京は日本橋のご生誕とある。この個展の昭和29年は1954年、とすると14歳。第三回だから、年一度、毎年開催したとして初回が12歳…う〜ホントに「あの人」の個展かね? 別人なのか。ま、美空ひばりや中村メイコなんて方々もいらっしゃる訳ではあるが。そう思って再び箱を眺めると、あの作家にしてファンシーなイラストが入ってないというのも解せない。となると「しらかべ」の意味するものは…怖いのでこれ以上の捜査はやめておこう。 |
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