おかやどかりの飼育
26話
6度目の冬越し
〜ヤド六のつぶやき〜
↑さて、ぼちぼち脱皮と冬越しをせにゃならん。
う〜寒ぶ、と。ぼちぼち夜が冷え込むようになってきたなあ。おっさん、ようやくパネルヒータの電源入れよったみたいやけど、なんせ水槽ガラスの背面外側に貼り付けとるさかい、あんまり温うならんのやな、これが。そのうえ、まだ昼がそこそこ暖かいもんやさかい、サーモスイッチが効いてて、すぐに発熱してくれへんがな。まあ、夕方までは天井の照明が点いてるし、蛍光灯の熱で十分暖かいからええけど。
先週はじめ頃から、なんやカラダが、ぼちぼち脱皮やで〜、と言うとるような感じがして、それならそろそろ潜ろうかと思て、2日ほどかけてそこらじゅう掘りまくってから一旦は潜ったんやけど、どうもしっくり落ち着かんので、一日明けてまた外にでてきたら、暖かいエエ天気の日や。不味いことにおっさん暇そうにしとって、水槽を覗き込んどるときに出てしもた。わたい見て、おっさん、にやっと喜びよったがな。一瞬いや〜な予感したんや。そしたらあんのじょう、水槽ごと抱えてベランダに持っていきよったもんな。こっちが脱皮せなあかんさかい潜る準備してるのを、向こうも察しよったんやろ。次潜る前に、一発砂を陽に当てて消毒しとこうか、ちゅう魂胆や。出てこんといたら良かったで、まったく。
砂の天日干しだけならまだええんやが、珍しく暖かい日やさかい言うて、バケツに海水汲んどるがな。また嫌いな行水や。風邪ひいたらどないすんねん、脱皮の前やちゅうのに。ああ、冷たいのに入れられてしもた。なんとか逃げられんかなあ。あかん、ツルツル滑って脚がかかれへんわ。もう疲れるし諦めよう。しかし厭やな、脚が水に浸かるのは。また、いつもの通り貝殻の上にでも登っとこ。どうせまた水に落としに来よるんやろけどな、おっさん。
ん?今日はなかなか戻って来よらんなあ。ははあ、また金魚の病気か。おお、せっせとバケツ運んどるわ。いつも見てるけど、おっさんも大変やなあ。そやけど、こんなベランダの明るいところに放ったらかしにされてもなあ。カラスとかが来たら喰われてしまうがな。あいつら、わたいがなんぼ「天然記念物」や、言うてもお構い無しの畜生やさかいなあ。もっとも地元でも石鯛とかのエエ釣りエサやとか言われて、仲間どんどん減ってるがな。あんまり効果あれへん。何が「天然記念物」や。ま、人間も畜生の親玉やさかい仕方あれへんか。お、おっさん戻って来よった。早よ出してえな、このバケツから。
やれやれ、やっとわが家に戻れたで。うん、まあ、日光消毒のあとの砂は、気持ち良いもんや。潜るにはありがたいな。お、飯が入ったみたいやな。なになに、ニンジンに干物にポップコーンかいな。ん〜折角やけど、今はあまり食欲が湧かんなあ。脱皮前なんやけど。ここは、ガジュマルの葉っぱでも食べとくか。あ、しょぼくれたふりしてたら、おっさん、ガボンバとアナカリスを入れてくれよったで。これは大好物や。よっしゃ、これ2本喰って潜ることにするか。潜ったら当分喰えへんさかい、この際は茎まで全部喰うてしもたろ。
あ〜喰った喰った。満腹や。ひと休みしたらちょっと穴掘りするか。細い砂と粗目の砂とふた通りに砂の質を分けてくれとおるねんけど、今回はどちらに潜るかなあ。夏の間は、天井がアルミのパンチ板やったさかい、砂が乾燥して、細いほうは掘りにくかったけど、寒くなってガラス板に替わってからは、かなり湿気があって掘りやすくなるねん。よっしゃ、とりあえず細い砂のほうから掘ったろ。あ〜しんど。わたい不器用やさかい、あんまり上手いこと掘られへんのや。わ、また落盤や。しょうがないなあ、あ〜大変。そや、おっさん!わたい潜って寝るんやさかい、ヒータの電源、入れるの忘れたらあかんで!頼んまっせ、ほんまに。
※「うちな〜ぐち」をご存知の方は、関西弁をそっちに置き換えてお読みください。
↓いかんいかん、ここじゃガラスに近すぎて丸見えやん。
↓たっぷり詰め込んでから、潜らにゃあな。
2003/10/30 (Thu)
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