スティーブ・ジョブズ 1955-2011。
生まれ育った世代はそう変わらんのですがね(まったくえらい違いや)。Apple信者でもジョブズ信者でもないけれど、生業の得物として25年以上使ってきたのがMacintosh。あたしの半生をこの道具と共に過ごしてきたということになります。しかしてこたびのご逝去の報に接し、しみじみとした感慨はあるものの、このカリスマの所業に感動したり頭に来たりしたことはあまりなかったなあというのが正直なところです。
あたしが最初に使ったMacはMacintosh IIcxでジョブズ更迭後のマシン。実際に散々ガミを喰わされたのは68030/40やsystem6.x〜7時代のMacintoshで、ジョブズ復帰後もしばらくはQuadra950を使ってたから直接の接点があまりなかったんですな。まあMacLife誌はずっと購読してたから、NeXTなどその後の彼の動きを知らないわけではなかったんですが。なもんでG4に買い変えてようやくシステムが安定し、ほっとした時にやっぱりジョブズはエラいと思ったのが最初かなあ。
25年以上もMac一筋で口を糊してきたあたしにしてもたいした実感がないのに、今回の訃報のあとたるや、マスコミもウェブもジョブズ、ジョブズ、ジョブズ。世間はなんでこんなに騒げるのかと。だいたい彼が作ってた初期のApple製品なんて、ポンと買えて、さわれた日本人ってそうそういないはずで。
あたしの場合も勤めていた広告制作会社のボスが新しいモノ好きで、これからは「Macだ!」なんつて無理して一台導入したんで触れられたようなもん。当時周辺機器を入れると一式300万以上したのではなかったか。バブル期だったとはいえ普通買えんでしょう個人じゃ。だからきっといま彼を惜しんでいる皆さんは、iMac以降(iPodやiPhone)のApple製品の生みの親として讃えているんでしょうね。
初めて触ったPCはMS-DOSやbasicで、こんな面倒な機械はあたしには無理だと即、打っちゃったけど、優れたインターフェースのおかげで、Macintoshならなんとかいけた。職人の道具なので、なるだけ美しいものを愛着を持って使いたいというのもあった。以来、パソコンはAppleのしかよう使わんし、未だにWindowsのマウスの使い方がわかってないという体たらくなわけです。(でも誰もが極めて簡単にゲームに没入できた「ファミコン」のほうがよほど賞賛すべきコンピュータだと思ってます)
ウェブ時代への移行期にも頑固なジョブズの方針のおかげで、いらん苦労や我慢や出費をさせられたのは確か。でもこのご時勢になってもいまだにWindowsを使う気がしないのは、ひとえにデスクトップやフォントの汚さに耐えられないからでありまして、Macのディスプレイの見え方が標準だと彼に洗脳されてるワケですな。この、美しいものを普通に使うという感覚を普遍化しようとしたのがスティーブ・ジョブズなんでしょう。誰であれ、どの企業であれ、このポリシーは広く受け継いでいってほしいですね。合掌。
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