◯ 晩夏の兼題は「送り梅雨」「蟹」「メロン」です。

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【送り梅雨】
送り梅雨靴を片手に父帰る       天天地地地人   雪童
送り梅雨白身魚を薄く引く       天天人人     呑暮
紺碧の足爪晴れて送り梅雨       天天       即馳
点滴を横目に外は送り梅雨       天地人     雨不埒
天職を求めあぐねて送り梅雨      天地人      出船
その後の言葉無くして送り梅雨     天地       磨角
濁流に赤いボールや送り梅雨      天        仲春
信濃路を別れて揖保路や送り梅雨    天        風写
送り梅雨片道だけの旅支度       天        出船
送り梅雨猛けて聴こへぬ波の音     天        仲春

【蟹】
干されたる茣蓙に蟹這ふ釣の宿     天天天天天天人人 仲春
入日影白き腹見せ蟹死せり       天天地地人    出船
小走りの蟹につけたし万歩計      天天人人     好喜
沢蟹の背なや赤々透ける水       天天人      風写
一筆と友から届き蟹二杯        天       雨不埒

【メロン】
駅前の目付き鋭きメロン売り      天地地地地人   呑暮
退職を決めし夫にメロン切る      天天人      仲春
頭数八揃ひたりメロン切る       天地人人     菫女
文机や宛てる漢字のないメロン     天地人      酒倒
初物を供へてメロン農家かな      天地       仲春
父食はぬメロン団らん不在の日     天地       好喜
メロン匂ふ夜の隙間に忍びこみ     天地       磨角
熟してもウリ科の匂いメロンかな    天        音澄
五日見てずしりと掬うメロンかな    天        出船
裏門を押される嗅がれるメロンかな   天        風写
ごめんメロン匙を差し出し兄笑う    天        即馳



◯ 仲夏の兼題は「五月川」「柏餅」「桜桃忌」です。

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【五月川】
単線の音高く越ゆ五月川        天天天天地地人  磨角
山の香を里に運ぶや五月川       天天天天     青羽
五月川大阪平野を二分して       天地地     岩牡蠣

名も知らぬ花くるくると五月川     天地人人人    青羽
なけなしの雨を集めし五月川      天地       呑暮
五月川田の隅々まで水渡る       天人人      山女
五月川おっとり刀の消防団       天        音澄

【柏餅】
孫五人太郎ばかりや柏餅        天天天人     仲春
挫けし日母のまあるき柏餅       天天人      好喜
柏餅葉の香なつかし祖母の家      天地地人    岩牡蠣
玄関に伯母の残り香かしわ餅      天地地      酒倒
笑んで喰む吾子のほっぺや柏餅     天人人      青羽
年寄が並ぶ店先柏餅          天人      雨不埒
それぞれに柏餅買ひ別れけり      天        磨角
卓袱台の布巾の下の柏餅        天        芝浜
曇天も部活掛け声柏餅         天        見燗
柏餅味噌餡足らず剣呑に        天        音澄

【桜桃忌】
終活や古書も荷造り桜桃忌       天天地地地地   雪童
とつとつと降る雨太し桜桃忌      天天人人     見燗
太宰忌や文学少女枯れにけり      天地人      仲春
背広ひとり茶屋に居りたる桜桃忌    天地       見燗
降りるべき駅を過ぎをり桜桃忌     天地       磨角
死ぬことをひらりかすめる桜桃忌    天人人      青羽
棚奥へ深く沈めし桜桃忌        天人       風写
止まり木に弱虫見つけ太宰の忌     天人       好喜
月曜がのそり始まる桜桃忌       天        呑暮
駅前の書店で知るや桜桃忌       天        青羽
赤みどりソーダに沈む桜桃忌      天        芝浜


◯ つぶやき再録 ◯

★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

「五月川」は、五月雨が毎日降り続くと、川は濁り水の量を増し、岸の葦叢を浸し流さんばかりの光景になる。(角川俳句大歳時記)
ということで出題してのですが、なじみがなかったか、少々受け取り方に違いがあって、五月の穏やかな川面を詠んだ句もありました。

【五月川】
・単線の音高く越ゆ五月川
・五月川大阪平野を二分して
・五月川田の隅々まで水渡る

【柏餅】
・孫五人太郎ばかりや柏餅
・柏餅そっと食みたりピアスの子
・かしわもち戦時は餡も餅もなく

【桜桃忌】
・太宰忌や文学少女枯れにけり
・終活や古書も荷造り桜桃忌
・止まり木に弱虫見つけ太宰の忌

柏餅の「孫五人」がみんな太郎という句は、なんでもない句に思いましたが、五人の孫が元気にワーワーいっている風景を描くことができて、山盛りの柏餅なんかが卓上にあるんだろうなぁ、と思うとじわじわいい句になっていきました。
ピアスと柏餅、意表をつかれました。
「桜桃忌」は、太宰という作家の人物像が行き渡り、固定していることがわかりました。固定されてしまった太宰像からポンと飛び出した句がなかった。
 桜桃忌の句に「種植えり」という下五がありました。種は蒔くものではありませんか。やや違和感ありでした。植えるのは苗木、苗でしょう。

 大雨の被害はなかったでしょうか。


◯ 初夏の兼題は「新緑」「水母」「焼酎」です。

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【新緑】
新緑に瀬戸の島々肥えてをり      天天天地地地   仲春
新緑の影立ち尽くし樹木葬       天天地      出船
新緑や梯子でのぼる秘密基地      天地地人人    仲春
新緑を軽きペダルで追い越せり     天地人人人    出船
新緑やスパンコールの風に揺る     天地人      酒倒
新緑の香り塗りこむ写生会       天地       青羽
新緑や樹々のみどりの陣地取り     天人人      好喜
新緑や酒断てぬ友永眠す        天        音澄
新緑を集めて落とす華厳瀧       天        風写
新緑に昭和歌謡が口をつき       天        音澄

【水母】
高架下貴様と歯茎で噛む水母      天天地人     酒倒
透けながら見えぬ命の水母かな     天地地地地人人  音澄
美ら海の水母の群れに迷い込む     天地人      山女
ケセラセラ波に凭れて寝る水母     天地人      仲春
満ち潮の濁りに見えてみな水母     天地       音澄
漂ふて流るるこの身や水海月      天地       風写
子ら連れて水母気にした日々遠し    天人       酒倒
海中に雨や降るるか水母傘       天人       風写
舞ふ水母欲が無いから透き通り     天        仲春
夢もなくさめもやらない水母かな    天        凛語
大海月ふわりと平和牽引し       天        好喜
くらげ伸びくらげ縮みて館暗し     天        菫女

【焼酎】
焼酎に付き合ふてみる紅一点       天天天地人   菫女
焼酎や米麦芋と南下旅          天天      音澄
焼酎や玄界灘に舟ひとつ         天天      酒倒
焼酎とともに流るる心隈         天地地     即馳
夜更けて焼酎瓶の仁王立ち        天地      出船
バス旅行水筒ふたつ湯と焼酎       天地      仲春
焼酎や寿司屋の湯呑みと父の指      天人      青羽
しょちゅうまか下戸のせごどんてげぐらし 天人     岩牡蠣
焼酎をぐずぐず飲んでちょっと美人    天       仲春



◯ 晩春の兼題は「春暑し」「桜草」「みどりの日」です。

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【春暑し】
黒スーツ女子大生の春暑し       天天地人     菫女
春暑し納屋の片づけ秋に延べ      天天       酒倒
捨て犬に懐かれてゐて春暑し      天地地人人    仲春
告白の言葉は乾き春暑し        天地地      即馳
春暑し少し濃くしてジンライム     天地人人     音澄
春暑しTシャツの腕白いまま      天地人      山女
浅煎りの珈琲豆や春暑し        天地       音澄
春暑しサンダル履きの教頭さん     天人人      芝浜
春暑し気息わき出す土の下       天人       菫女
春暑し腕立て伏せに軋む息       天        出船

【桜草】
野を染めて富士浮かせたり桜草     天天天地人    風写
文庫本ひらけばいつかの桜草      天天人      芝浜
青空を気球が行くよ桜草        天天       酒倒
新婚の窓に刺繍とさくら草       天地地地人人   仲春
煙草屋の店番いづこ桜草        天地地      酒倒
退院の荷物のひとつ桜草        天地人人人    仲春
返信を少し焦らして桜草        天人       磨角
独居老愛づるチワワと桜草       天人       菫女

【みどりの日】
単線の稀な賑はひみどりの日      天天天天人    菫女
風焦がすソーラーパネルみどりの日   天天人人     好喜
三代の号を跨ぐやみどりの日      天        酒倒
土の香や子等にも嗅かす緑の日     天        風写
知らぬ間に添い寝の猫とみどりの日   天        出船
みどりの日みどりに濡れる赤子かな   天        芝浜
縁側にぽつんと帽子みどりの日     天        好喜
みどりの日ゆるりゆるりの時と酒    天        出船


◯ つぶやき再録 ◯

★呑暮さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【春暑し】
天 春暑し腕立て伏せに軋む息
地 春暑しTシャツの腕白いまま
人 春暑し少し濃くしてジンライム

「人」のジンライムは何を濃くしたんでしょうね。ライム? なわけないですよね。いや、この前、「緑茶ハイの緑茶多め」と頼んでいた人を見たものですから。

【桜草】
天 野を染めて富士浮かせたり桜草
地 煙草屋の店番いづこ桜草
人 文庫本ひらけばいつかの桜草

「地」の「いづこ」は時でしょうか、場所でしょうか。私は前者とみました。たばこ屋の店番歴50年、可愛らしかったあの子が今や見る影もなし。残念。

【みどりの日】
天 風焦がすソーラーパネルみどりの日
地 みどりの日穴から食べるドーナッツ
人 公園の満車の合図みどりの日

「地」のドーナツの穴は、ないことによって存在するという、有名な哲学的思考ですね。5月4日が祝日じゃない頃は3日と5日でドーナツだったんだけど、穴が埋まって3連休になって、各祝日の意味が分からなくなったわけです。


★小間使いさんから--------------------------------------------------

ということで、菫女さんの二冠でありました!!

次回は、もう初夏です。
このところの気候の変化の激しさに
体調を崩さないようにお気をつけください。

ではでは 小間使い


◯ 仲春の兼題は「名残雪」「干鰈」「入学試験(入試)」です。

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【名残雪】
窓越しに交わす目礼なごり雪      天天天地地    磨角
校庭の名残り雪踏む門出かな      天天地人     風写
なごり雪汽車を電車と云ふ輩      天天       酒倒
惜別の今朝北窓の名残り雪       天地地地人    風写
荒行僧うなじに溶ける名残り雪     天地地人     好喜
露天湯に思はぬ馳走名残り雪      天地       仲春
引越しを終えて夜空の名残り雪     天地       雪童
名残り雪ふいの終わりをほのめかす   天人人      出船
陽射しある上野を出でて名残り雪    天人       菫女
人波に消ゆる背中や名残り雪      天人       磨角
青春の光と影に名残り雪        天        音澄
名残り雪明けを知らせるカラスかな   天        見燗

【干鰈】
吉日や骨離れ良し干鰈         天天天地人人   見燗
時止まる置き竿の浜干鰈        天天地人人    呑暮
西風に波静まりて干カレイ       天天       好喜
干鰈島の宝が風に揺れ         天地地人人   愚多楽
鰈干す浜の女の頬被り         天地地      菫女
干鰈売る婆さんの手の乾き       天地人人     音澄
干鰈しゃぶって育つ若狭の子      天地人      仲春
過去捨つる修行の果てか干鰈      天人人      出船
おつまみの駄菓子に探す干し鰈     天        風写
磯の香や浜辺で炙る干し鰈       天        雪童
小包のお国言葉と干鰈         天        小波
灯る窓夜を締め出し干鰈        天        即馳

【入学試験(入試)】
初旅の試練もくぐる入試かな      天天天地     呑暮
受験生一直線なり朝の道        天天地地人人   山女
空を見よ入試とスマホ投げ捨てて    天天人      出船
入試明け今朝から空は我のもの     天地地地人人   風写
教師より老けた顔して入試受く     天地人      仲春
鉛筆の声に聞き入り入試終え      天人人      即馳
おほかたは無言で歩き入試の子     天人       磨角
入試前塾の輪に咲くエイエイオー    天        好喜
入試終え幼き昨日かすむ街       天        出船
鉛筆はすべて新調入試かな       天        小波
わが辞書の入試の項は死語となり    天       岩牡蠣
青春の残滓入試の悪夢かな       天        芝浜


◯ つぶやき再録 ◯

★愚多楽さんの選句とつぶやき----------------------------------------

【入学試験】
天 初旅の試練もくぐる入試かな
地 家中が入学試験で肩が凝り
人 験担ぎする子しない子入試かな

同窓会で中学校の受験番号をまだ覚えている人がいます。
そう言う私も、合格発表で715という番号を見つけた時の喜びを忘れられません。
難しい大学に入っていたら、中学の受験番号なんて忘れて、大学の受験番号を
覚えているんでしょうけど。私の人生、中学合格がゴールだったはずがないと思うと、
まだまだ何かいいことが待っているのではないかと楽しみです。


★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【名残雪】
・引越しを終えて夜空の名残り雪  天
・いろいろと明日にしよう名残り雪 地
・名残り雪うれしさもある別れの日 人

【干し鰈】
・吉日や骨離れ良し干鰈      天
・江ノ島やこよひあなたを干鰈   地
・干鰈しゃぶって育つ若狭の子   人

【入学試験】
・初旅の試練もくぐる入試かな   天
・教師より老けた顔して入試受く  地
・浪人に包囲されたる受験席    人

「名残り雪」の句は、私個人としては三句とも天でした。まぁ、横並びはしない選句なので、「地と人」の俳人には、ごめんなさい。名残り雪なんて、もう時節は春になっているんだから、フワッと降って、短い感慨を残して消えてしまうのでさらりと詠む句が似合っていると思いました。
干し鰈の「江ノ島」は、三分の一ぐらいは川柳が入っていますが、おかしくていい、と思って選びました。亡くなった逆月さんがよく、皆さん真面目な句ばかりではなくもう少し緩んでもいいと思う、というようなことを言っていましたが、そう思います。
若狭の子が干鰈をしゃぶって育つというのは、まったく意表を突かれました。そういえば若狭鰈の地だものなぁと納得してしまったのですが、ホントウかいな? というところが俳諧の「諧」のあたりでしょう。笑って選びましたね、この二句は。
浪人経験者として現役を囲んだかなぁ、私。実際の現場では、現役の連中が「頭よさそう」に見えるんですけれどね。

イルカの歌のせいでしょうね、名残り雪と別れ(しかも駅頭で)の風景をひとつのものと見た句が多くて、はぁこうなるかと思いました。冬の名残りの雪、あるいはこの雪が最後の雪で春になるなぁ、なのであって、別れにつき物の雪というわけではない。そうそう都合よく駅での別れに雪が降るわけがない、ということで、軽くていい気分の句を私は選びました。
「名残り」という言葉に力がある。だから、似た着想の句が山をなしてしまった。

芭蕉がいる頃はまだ「俳句」とはいいませんでしたが、「この風景って俳句になるなぁ」と思う風景は、これまで誰も見たことのない風景なんかではなく、芭蕉からこっち何万人もの人が見て、何万句もの句に詠まれた風景です。この21世紀の今、自分の着想が非常に個性的で、これまでのどの句とも似ていないから「いいぞ」と思うのは、ほぼ間違いでしょう。逆に、この風景を見てこんな句を詠んだ人が何千人もいるに違いない、とすると「ワタシが独特の句を詠むには」どれだけ工夫し、考えなければいけないか、と考える必要がある。それが俳句の面白いところ、私はそう思います。不易で流行、と芭蕉がウンウン考えたのはそこではないですか。
毎月の句を見て、「あ、同じ着想だ」という経験はあるはずで、そのことを心してそこから一歩出ないことにはイッパシの俳人にはなれない、と思ってください。

干し鰈の句に、くっつきすぎの句がけっこうありましたね。俳句では鰈という「海のモノ」が出てきたらそこに「繰り返し海を思わせるような言葉は出さない」という、ぼんやりした約束があります。「厳禁」ではありませんが、たった十七文字で詠む俳句の中に同じ情景を引き出す「鍵になる言葉」を繰り返すのは、しない方がいい、いや、やらないもんだ、とされています。

干し鰈となれば、まぁ酒を飲む景色に干し鰈を肴として置く句があるんだろうなぁ、という思惑が当たりました。
兼題に食べ物が出ると、たいてい「酒を飲む風景に、その食べ物を肴にしてはめ込む句がある」のです。こういう句で「お!」と思う句はあまりありません。これも先の話と同じで、季節の食べ物を酒の肴にして詠む句は、ほとんどの人が考えるでしょう。そして、月並み句になりやすい。もし、酒を飲む句を詠むならその風景か、心情をよほど「創造的な」ものにして詠まないといけない気がします。
よく、通夜の酒が出てきますが、その句を詠んだ人にとって故人は「多くの思いをもたらす人」であっても、その句に接した読む側にはその人に対しての思い出がないのが普通です。
いや、酒を飲む場面の句は詠まないものです、というのではないですよ。

面白かったのが入学試験の句。句の中には入社試験もありましたが、日本人はよほど試験に悩まされて大きくなるのだとつくづく感じました。それと、入試が終わった後の解放感・開放感がよほど大きいのでしょうね。青年に呼びかけている句もありました。これは、この時期に何度か詠んでみると面白い兼題だと思いました。
もう半世紀前になってしまう団塊の世代の受験から、心情的にあまり変わりがないので、そのことに驚きました。ああ、だめだったなぁと実感しながら、「当時はまだ10時間以上かかった故郷まで」眠れない一人旅。挫折を運ぶ旅の始まりでしたね。うぬぬ。

上の文章の俳句についてのもっともらしい話は、講談社学術文庫・阿部筲人著『俳句』からの受け売りが多く入っております。はい。


◯ 初春の兼題は「薄氷」「伊予柑」「春嵐」です。

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【薄氷】
幼子の一歩に失せり薄氷        天天地地     菫女
うすごおりモノクロームの万華鏡    天天地地     好喜
水鳥の砕氷船行く薄氷         天天       雪童
黒天の星座を映し薄氷         天地地      酒倒
薄氷やしゃがみて映す顔ふたつ     天地地      仲春
薄氷を割いて水打つ老舗前       天地人人人    風写
薄氷を踏んで向かうや試験場      天地人      呑暮
薄氷や風の姿を彫り上げる       天人人      即馳
めだか飼う火鉢に今朝は薄氷      天人       音澄
うすらひや水のややこのおぶらあと   天        酒倒
薄氷聖堂にいま止む祈り        天        出船
人消ゆる光残して薄氷         天        出船

【伊予柑】
いい陽より伊予柑むいて猫になる    天天天天人   愚多楽
伊予柑を置いてうたた寝祖母の午後   天天地地人人   好喜
伊予蜜柑むき置きて去る母の家     天天地人     菫女
伊予柑を剥く嫁の手をながめおり    天地人      呑暮
病室の空気押しのけ伊予柑香      天地人      好喜
伊予柑やおんな二人のバスの旅     天地       磨角
手土産の伊予柑提げて路地の月     天地       出船
伊予柑やきまって一つはスッカスカ   天        音澄
棟上げや飛びゆく伊予柑甘さ増す    天        即馳
伊予柑を剥く親指に憂いなし      天        出船

【春嵐】
春嵐ブランコ揺らし遊び去る      天天天      即馳
顔を打つネクタイ跳ねて春嵐      天天地人人    雪童
交差点たてよこななめ春嵐       天地地      音澄
春嵐子どもの声を舞い上げし      天地地人人    小波
組み直す午後の段取り春嵐       天地人人     仲春
春嵐裾から袖に抜けにけり       天地人人     酒倒
止まないで学ラン借りた春嵐      天地      岩牡蠣
春嵐変えうるものを変える意志     天人人      出船
春嵐去った朝なお砲火の日       天        好喜
昇る陽が戸惑い踊る春嵐        天        好喜
春北風に舞い強いられてレジ袋     天        芝浜
春嵐泣きっ面に雨連れて来て      天        雪童



◯ 晩冬の兼題は「春いまだ」「凍港」「こたつ猫」です。

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【春いまだ/春遠し】
目覚めても無明の窓辺春いまだ     天天地地地地人  音澄
耳朶でとらえし夜風春遠し       天天地人人    小波
春いまだ漱石の鬱子規の念       天天       出船
春遠し前髪ぱつんと切りました     天天       小波
春遠し切ない話夜中に来        天地       仲春
傍らに気配なき夜春遠し        天人       見燗
すきとほる水沁み入るや春遠し     天        凛語
春いまだ女の話に尾鰭あり       天        菫女
春遠し杖の老婆は鞠のよう       天        酒倒

【凍港】
凍港にデイサービスのバス巡る     天天天地地人   出船
凍港や旅立つ勇気風に散る       天天人      好喜
凍港や燈台ひとり睥睨す        天地地      雪童
凍港や船のロープの硬きこと      天地人      音澄
凍港を奮い立たすや大漁旗       天地       好喜
凍港や訛ほどよき標準語        天地       青羽
そっと目尻なぞる男や凍港       天        磨角
凍港や魚は焼けて船は出ず       天        小波
凍港の先に浦塩カムチャッカ      天        酒倒
凍港の廃船半ば傾きて         天        芝浜

【こたつ猫】
こたつ猫蹴飛ばし詫びる独り酒     天天天人人    雪童
繰り言の聞き手を降りるこたつ猫    天天地地人    凛語
そんなこたくだらぬことよこたつ猫   天天地地     磨角
迫り来る足に怯えずこたつ猫      天天       出船
おめかしをじっと見てゐるこたつ猫   天地地人人人   小波
今朝もまたあくがるるかなこたつ猫   天人      岩牡蠣
炬燵猫となる夢をみる炬燵かな     天        芝浜
往来もこたつも知らぬCAFEの猫    天        酒倒


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 兼題を出す者として、「想像句」ではどういう世界を
 思い浮かべるのかと、気になったり、
 実体験で詠むとどう詠むのかと、気になり
 楽しみでもありますが、
 今回の「こたつ猫」などは、世界が狭いので
 風景が似るのはしょうがないでしょうが、
  「ハッとする」句は難しかったようですね。

 ではでは 次回はもう春、初春の句会です。

 お楽しみに。


◯ 仲冬の兼題は「底冷え」「くしゃみ」「葛湯」です。

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【底冷え】
底冷えや男を布団に招き入れ      天天地      磨角
底冷えや胴打ち一閃白袴        天天地      即馳
底冷えの土俵に滾る鬼の息       天天人      出船
底冷えをてけてけてけと明けの犬    天天       出船
底冷えや豆蒸す湯気の白の濃さ     天地地      音澄
底冷えや土蔵の錠前堅くなり      天地人人人    雪童
底冷えに汲む井戸水のやわらかく    天地人      音澄
底冷えやあわれメールの誤字脱字    天人       呑暮
支那そばを待つ底冷えの舗道かな    天人       芝浜

【くしゃみ】
帰り道くしゃみ一つに過去放つ     天天地人     出船
くしゃみしてハナも屁も出る老いきたる 天天地      音澄
くしゃみしてピカソの顔になりにけり  天天       仲春
納戸から小さきくしゃみかくれんぼ   天地地地地人   磨角
大くさめ気配のありて一二秒      天地人      菫女
筋肉美見せて銭湯大くしゃみ      天地       雪童
くしゃみして不運吐き出す阿吽前    天人       風写
バスの列響くくしゃみにお人柄     天人       出船
やすやすとくしゃみをしたり快癒かな  天        見燗
大小のくしゃみ白波散骨す       天        即馳

【葛湯】
匙持つ手無骨な父が葛湯練る      天天地人     雪童
葛湯飲み投網のほつれ縫い合わす    天天地人     即馳
拗ねるのと同じくちびる葛湯吹く    天地地地     磨角
薄命の友を葛湯に透かし見し      天地       風写
今朝ほどは両手に包む葛湯椀      天地       風写
舞台閉ねストリッパーの飲む葛湯    天人人      仲春
頬紅き子らの葛湯や洞の中       天        酒倒
ずる休み午前十時に吹く葛湯      天        出船
夏の日を根に蓄えて葛湯かな      天        出船
夜更かして期限切れたる葛湯吹く    天        酒倒
葛湯飲みもう一年と共白髪       天        即馳


★小間使いさんから-------------------------------------------

 新しい年も、変わらず淡々と続けます。
 本当の宗匠である仲春さんが、皆さん腕を挙げてきたなぁ、
 と申しております。

 ・磨角さん参加の俳句展は、こういう風景
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 ではでは 小間使い



◯ 初冬の兼題は「冬めく」「鴛鴦」「帰り花」です。

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【冬めく】
ビー玉の色散らかるや冬めく陽    天天天人      呑暮
冬めくや七堂伽藍空に映え      天地地       音澄
冬めくや大地の神の薄化粧      天地人       風写
冬めくや猟銃のこゑ轟けり      天地人       菫女
冬めいて薄き日めくり剥ぐ重さ    天地人       出船

冬めきてふくら雀の通学路      天地        青羽
モフモフとヒゲの御仁や冬めく日   天         見燗
冬めきぬ光佇む礼拝堂        天         好喜
冬めいて北の旅への案内状      天         音澄
夜中咲く風の後ろに冬めきぬ     天         山女

【鴛鴦】
波残し鴛鴦の藍消えにけり      天天天人      出船
鴛鴦や互いに丸き腹回り       天天人       見燗
鴛鴦や黙する池を彩れり       天地人人      出船
鴛鴦やひと水下がり妻がいる     天地        山女
蓮枯れておしどり来る寺の池     天地       愚多楽
番鴛鴦瞼交互に閉じてをり      天地        見燗
道ならぬ鴛鴦隠る芦辺かな      天人人       凛語
鴛鴦の浮気するらしそれもよし    天         音澄

【帰り花】
下山道灯るが如く帰り花       天天天天人人    芝浜
また一日伏せる窓辺に帰り花     天天地地地人    好喜
帰り花暗渠の道の指定席       天地人       呑暮

せめてもは帰り花咲く住めぬ家    天人        風写
ひとしきり野の鳥鳴きぬ帰り花    天         菫女
帰り花赤色灯に追わる夜       天         青羽
帰り花背中押したり面接日      天         見燗
帰り花恋に染まらぬ人の恋      天         出船


◯ つぶやき再録 ◯

★愚多楽さんの選句とつぶやき----------------------------------------

【冬めく】
天 ビー玉の色散らかるや冬めく陽
地 冬めいて幹囲われる藁の束
人 冬めくや猟銃のこゑ轟けり

【鴛鴦】
天 鴛鴦や互いに丸き腹回り
地 鴛鴦や二羽で奏でる同心円
人 鴛鴦の色鮮やかな鏡池

【帰り花】
天 下山道灯るが如く帰り花
地 帰り花暗渠の道の指定席
人 今と決め輪郭定かに狂ひ花

 狩猟解禁のシーズンですね。各地で猪、鹿、熊の被害が深刻なようですが、ハンターになる人が減っており、平均年齢が高くなっているようです。
 先日奥多摩で犬を連れた猟師とすれ違いました。イノシシの糞、足跡も見ました。
 意外と人家に近いところにいるのですね。猟銃の音を聞くと、人に当たらないようにといつも思います。


★小間使いさんから--------------------------------------------------

雪が降り、地震がおき、寒さがやってきました。
どこかへ歩くとき、お茶を飲んだりするとき
「17文字」で遊んでください。

「お~いお茶」の伊藤園の俳句を募集していますよ。
17文字で、30万円ほどです。無論、一番になれば、ですよ。

ではでは 小間使い





◯ 晩秋の兼題は「晩秋」「木の実落つ」「秋鯵」です。

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【晩秋】
足長き影晩秋を並びゆく       天天天地地地    好喜
晩秋をとらえて絵筆塩むすび     天天地       雪童
晩秋の寂なぞ知らぬ熱帯魚      天地人       青羽
晩秋や淡き陽射しに甲羅干す     天人人       風写
晩秋や石庭潜る鳥の影        天人        即馳
一閃の業晩秋の恋泥棒        天         青羽
晩秋や草原の雨金色に        天         仲春
晩秋や癇癪持ちに瀬音澄む      天         出船
晩秋の病室微かにブラームス     天         出船

【木の実落つ】
木の実落つ渡り廊下の右左      天天地地      音澄
赤錆のジャングルジムや木の実落つ  天天地       青羽
ご利益を恃むあたまに木の実落つ   天天人       菫女
オルゴオル最後の一音木の実落つ   天天        磨角
城址の濠にさざなみ木の実降る    天地人人      酒倒
木の実降る賽銭箱の中にまで     天地人人      仲春

留守番の木の実を拾う児童館     天地        音澄
木の実降るあの山裾に不老の湯    天地        出船

【秋鯵】
だみ声が山盛りで売る秋の鯵     天天天天地     菫女
秋鯵や訛り渦巻く縄のれん      天天地地人人   雨不埒
焦がしめは父親ゆずり秋の鯵     天天人       磨角
秋鯵やたたく調子は二刀流      天天        雪童
竜王戦観る秋鯵の骨硬し       天地地人      青羽
秋鯵を乗せ移動販売山に入る     天地地人      青羽


★小間使いさんから-------------------------------------------

 「晩秋」の句の中、ボジョレーの句は、
 初出場の「岩牡蠣さん」の句です。

 人伝てに、この滅入る句会で俳句を楽しみたい方が
 いるのは大喜びです。
 長く続けて欲しい、それが一番です。
 この句会で、ということではなく
 せっかく始めたら俳句を面白がってずっと続けて欲しい、
 という意味です。

 仲春さんが、「俳句四季」という俳誌で、
 浅井愼平選の特選句に選ばれていました。

・磨角さんから、こういうお知らせが届きました。
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 ではでは 次は初冬ですねぇ 小間使い



◯ 仲秋の兼題は「宵闇」「秋鯖」「稲刈り」です。

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【宵闇】
宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯      天天天       酒倒
宵闇や下戸は本屋を止まり木に    天天地地人     呑暮
宵闇を貫き消ゆる走者の背      天天人       出船
宵闇や時ごと変わる庭の声      天天        山女
宵闇や石鹸の香とすれ違う      天地地地人     呑暮
宵闇やばくりと割れし胸の蓋     天人        磨角

宵闇に五感冴えるや石階段      天         青羽
宵闇や家庭菜園棒ばかり       天         仲春

【秋鯖】
秋鯖や醤油は玉と弾かれり      天天天天地地地人  呑暮
海の青背に含ませて秋の鯖      天天地地人     青羽
秋鯖やタマの出奔もう五年      天地地人人     酒倒
秋鯖を両手に提げし小長靴      天地地       呑暮
寄宿舎の窓に秋鯖煮る匂ひ      天人人       仲春
山賊が山留守にする秋の鯖      天人人       青羽
秋鯖や懲りぬ酢〆の性と知り     天         風写
秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ     天         仲春
秋鯖の骨が三本皿の隅        天         出船

【稲刈り】
稲刈りの終えて広さを知る田かな   天天地地地人人人  芝浜
稲刈りや親戚集いて無沙汰詫び    天天地人      雪童
稲刈りや再会笑う土と空       天天地人      出船
稲を刈る嫁に代りて赤子抱く     天地地地人     仲春
田の神にお礼を済ます稲刈り機    天地        音澄
稲刈り機あやつる腕のタトゥかな   天人        青羽
ハンドルとレバーで稲刈る農夫の手  天         風写
頬染めて黄金の稲を刈り初むる    天         好喜
稲刈りや山の荷車妻見えず      天         雪童
一夜明け確と風受く稲架の稲     天         磨角


◯ つぶやき再録 ◯

★呑暮さんの選句とプチつぶやき-------------------------------------------

【宵闇】
天・宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯
地・宵闇の帰路に肩押す夜風かな
人・宵闇やばくりと割れし胸の蓋
 少し前まで新聞ではブログを「日記風のホームページ」、ツイッターを「簡易ブログ」などと注釈を入れていました。
 今ではそんなことありません。スマホも俳句のキーワードになってきたなあと思った次第。

【秋鯖】
天・秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ
地・秋鯖やタマの出奔もう五年
人・山賊が山留守にする秋の鯖
 いやー、鯖がそれほどのものかと思いつつ、そういう人もいるんだろうと。鯖をそこまで好きになれた人生。その生をまっとうし、鯖にさえ未練を残さずに逝けた。待てなかったというより、待たなかったのかもしれません。

【稲刈り】
天・稲刈りの終えて広さを知る田かな
地・稲を刈る嫁に代りて赤子抱く
人・逆光にダンダンとゆく稲刈り機
 立って半畳、寝て一畳ですが、人を一人生かすにはどれくらいの田んぼが要るのでしょうか。
 稲を刈った後の田んぼの広がりは、人間の命の面積でもある。人とはそれ以上でもそれ以下でもないのでしょう。



◯ 初秋の兼題は「処暑」「葛の花」「法師蝉」です。

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【処暑】
処暑の風二の腕細し図書係      天天天地地地地   青羽

過ぎ越して頂と知る処暑の山     天天地       出船
来ぬバスに空の青さや処暑の風    天地人人      好喜
処暑の蝶うつむく花を巡りゆく    天地人       山女
まだまだと気構へてをり処暑の朝   天地        菫女
じわじわり入玉模様処暑の盤     天地        即馳
処暑の朝寄付請う便り母校より    天人        好喜
土砂降りの沙汰止みにけり午後の処暑 天         菫女
処暑の子のなほ火照りたるはだへかな 天         凛語
処暑なれど便箋は手に粘りつき    天         音澄

【葛の花】
山守の容赦なく断つ葛の花      天天天天地地    音澄
葛の花無沙汰の文に毒一つ      天天地人      出船
杣道を隠して嗤う葛の花       天天地地人     雪童

領土線気ままなりけり葛の花     天天        見燗
墓じまい散る葛の花清々し      天地地人人人    青羽
眼下なる瀬に釣り人や葛の花     天地地人      菫女
洪水の跡にしとどの葛の花      天         凛語

【法師蝉】
膝笑う長い坂道法師蝉        天天天人      酒倒
法師蝉終の住処と決めし家      天天人人人人人   菫女
法師蝉絵日記のなか鳴いている    天天人       山女
山の色軽くかきまぜ法師蝉      天地地       青羽
境内の読経に降り来る法師蝉     天地地       風写
法師蝉空へ読経を解き放つ      天地        出船
鳴きつくすつくつく法師の鳴きつくす 天人        菫女
葉雫や解き放たれて法師蝉      天         即馳
歓びの歌を覚えし法師蝉       天         呑暮


◯ つぶやき再録 ◯

★出船さんの選句とコメント------------------------------------------------

【処暑】
・じわじわり入玉模様処暑の盤  天
・百ミリの雨を運びて処暑に入る 地
・処暑の蝶うつむく花を巡りゆく 人

【葛の花】
・眼下なる瀬に釣り人や葛の花  天
・杣道を隠して嗤う葛の花    地
・愚痴ひとつ風に舞い飛び葛の花 人

【法師蝉】
・法師蝉終の住処と決めし家   天
・境内の読経に降り来る法師蝉  地
・樹々からはまだ雫落つ法師蝉  人

〈コメント〉
・じわじわり入玉模様処暑の盤
将棋に興味のない人には「なんのこと?」という感じでしょうが、
将棋好きは膝を打つ句でした。


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