2012年12月 仲冬の句会

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◯ 仲冬の兼題は「寒波」「重ね着」「晦日蕎麦・年越しそば」です。

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【寒波】
寒波来る空に国境なかりけり     天天天天地地人  喜の字
寒波来る月のしずくか流星群     天天天       山女
海黒く山白化粧寒波きぬ       天天人       雪童
アラ還や膝にチクリと来る寒波    天天        雪童
尋ね人三行広告寒波来る       天地地人人人    芝浜
きのふより干芋甘し寒波来る     天地人       菫女
出不精の心に施錠寒波来る      天         魯斗
寒波来て出棺の列くろぐろと     天         酒倒
寒波来る今日の煮物の塩辛さ     天         蝸牛

【重ね着】
重ね着が島の朝市のぞき込む     天天天人人人    仲春
逢う日には重ね着できぬ恋はじめ   天天天人人     蝸牛
居酒屋のハンガー足りぬ厚着かな   天天地人      酒倒
重ね着を脱いで話の長くなる     天地地地      魯斗
重ね着を脱皮していく露天風呂    天地        雪童
重ね着や言ひたきことは別のこと   天地        磨角
重ね着がぞろぞろぞろとぼや騒ぎ   天地        音澄
重ね着やいつもの路地は狭くなり   天地       雨不埒
床屋出て坊主頭に厚着する      天人        魯斗
重ね着や袖口ゆるきカーディガン   天人        音澄
重ね着や際立つ脚の美しさ      天         即馳

【晦日蕎麦・年越しそば】
黙しても事足るふたり晦日蕎麦    天天天天天地人人  魯斗
勘三郎ひとくち啜れよ晦日蕎麦    天天地地地人   喜の字
池之端鐘の余韻の晦日蕎麦      天天地人     喜の字
しずくごと年を振り切る晦日蕎麦   天地地地地人    呑暮
湯屋を出で鐘聞くほどの晦日蕎麦   天地人人      風写
父母も祖父祖母もなく晦日蕎麦    天地人       音澄
無き年もままあり今年の晦日蕎麦   天         菫女
「こうもり」の序曲に針や晦日蕎麦  天         磨角
起こされて寝ぼけ眼の晦日蕎麦    天         仲春
晦日蕎麦勤めを終えし箸二膳     天         蝸牛


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つぶやき再録

★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【寒波】
天 寒波来る空に国境なかりけり
地 尋ね人三行広告寒波来る
人 寒波来るデルス・ウザーラの報せだな

天、シベリアからはるばる旅した寒気であることを、わたしも何とか詠めないかと思ったのですが難しすぎて諦めたところでした。これは鮮やか!
地、「被災地の復興薄く大寒波」から一歩踏込み戻らぬ家族を待つ一個の人格を浮き彫りした句、という勝手な深読みをさせていただきました。
人、こういった、俳句史上おそらく一度も詠まれたことがなかろう単語を織り込む精神がとても好きです。攻める俳句、見習いたいです。

【重ね着】
天 居酒屋のハンガー足りぬ厚着かな
地 重ね着や言ひたきことは別のこと
人 重ね着の背信の歩やセーヌ岸

天、日常の実感を切り取った句、よくぞそこに目をつけたなあと感心もし、なぜわたしはそこを見逃した?と悔しくもあり。
地、重ね着の、かゆい所に手が届かない感じと肝心なことを言い淀む気持ちが、とてもうまく響き合って、お見事と思いました。
人、冬のパリで何があったのでしょう。人妻との逃避行でしょうか。妻ある身の禁断の恋?背後に大きなドラマを感じます。

【年越蕎麦】
天 起こされて寝ぼけ眼の晦日蕎麦
地 旧友の知らせで晦日蕎麦残し
人 父母も祖父祖母もなく晦日蕎麦

天、子供かな。酔って早々に眠ってしまったお父さんかな。はたまたカウントダウンパーティで飲みすぎた仲間を叩き起こして、どん兵衛にお湯を注ぐ若者の風景?いろいろ共感を呼びますね。
地、どんな知らせだろう、静かな大晦日にそんなに慌てさせるなんてタダごとじゃない。やはりドラマのある句には惹かれます。
人、大みそかやお正月って、どうしても家族のイメージと結びつくものですね。親の不在、普段は忘れていても、こんなときは胸に拭えぬ寂寞が広がります。静かに蕎麦をすする音が聞こえる句でした。


★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【寒波】
天 アラ還や膝にチクリと来る寒波
地 ワルは皆誘ひ上手で寒波来ぬ
人 寒波来る空に国境なかりけり

「あらかん」と言えば、浮かぶのは嵐寛、こういうのには文句なくヨワイ。軽妙洒脱。
地も洒落ております。何に誘われたのかしりませんが、一緒にいきたいなあ。
人。考えてみりゃ、土も空も島も海も、みんなお天道様のもの。あの島は俺のだおめえにはやらないだの、ここまでの空はオレッチのだなどと、厄介ですね人間は。

【重ね着】
天 重ね着がぞろぞろぞろとぼや騒ぎ
地 居酒屋のハンガー足りぬ厚着かな
人 重ね着が島の朝市のぞき込む 

「ぞろぞろぞろと」はカウンターパンチ! 日本語って不思議だなあ。あのハンガー、昔はなかったですよね。誰が始めたんだろ。人。厚着すると行動が鈍くなり思っていることが表に出てきてしまいます。子供に帰る感じです。のぞき込んでいる連中がちょっとかわいい。
 
【年越し蕎麦】
天 池之端鐘の余韻の晦日蕎麦
地 しずくごと年を振り切る晦日蕎麦
人 よく無事で顔見合わせる晦日蕎麦

天は、音読して一発いただき。きれいに舌に乗り、のどを滑る。
蕎麦屋さんが笊をさっと振る。水が切れる。あの気風の良さで過ぎ去りし時を忌って捨てる。人は、被災者の集まりですかね。安堵と気遣いの笑顔が、一瞬、逝ってしまった人々への鎮魂に変わる。
さてと、また一年が過ぎようとしています。滅入る句会もまる10年を過ぎて11年目に突入ですね。しかも会員は増え続けている本当に稀有な句会です。よいお年をお迎えください。そして来年もよろしくお願いします。


★呑暮さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【寒波】
天 海黒く山白化粧寒波きぬ
地 寒波来て思い出しをる校歌かな
人 尋ね人三行広告寒波来る

天は最初そのままだなあと思い、まずは三角印をつけておいたのですが、眺めているうち
に型の美みたいなものが見えてきて、これにしました。
地は昔の学校。空調がない時代。教室にストーブはあるが、講堂(体育館)にはない。寒い朝の全校集会。
人のキーワード三行広告は前に別の句で見た気がしますが、もし見ていなかったら取ったと思うので。上5を工夫して切れが2カ所できないようにしたらもっといいと思いました。

【重ね着】
天 重ね着が島の朝市のぞき込む
地 厚着の子横断歩道をころころと
人 居酒屋のハンガー足りぬ厚着かな

天は1泊旅行に来たおばちゃんの集団ですかね。おばちゃんはなぜか同じ格好をしています。「これ、買おうかな」「そうねー」「でもやめとこ」「そうねー」ほとんど意味不明の会話ですが、これは女性脳が得意とする「共感力」と呼ぶらしいです(ネガポですね)。
地は「ころころと」の語感がいい。小さい体が着ぶくれて、おまけにランドセルを背負っていますから、球形に近づいていきます。
人は、一本のハンガーにまとめて掛けんかい、というツッコミを入れるために選びました。

【年越し蕎麦】
天 晦日蕎麦勤めを終えし箸二膳
地 勘三郎ひとくち啜れよ晦日蕎麦
人 日清にニシンを乗せた晦日蕎麦

天の「勤めを終えた」のは、箸そのものでしょうか。「務め」でなく「勤め」ですから、もしかしたら、暮れのぎりぎりに仕事を終えてほっとした人が蕎麦を手繰ったのかもしれません。後者のほうが趣があります。
地はやはり落とせませんね。
人は日清とニシン、よく見つけました。中5を「ニシン乗せたり」としたほうが収まりがいいと思ったので、今後に期待して。


コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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このページは、cave(管理人)が2012年12月21日 18:36に書いたブログ記事です。

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