◯ 仲秋の兼題は「台風」「竜胆」「むく鳥」です。
【台風】
大提灯たたんで台風通しけり 天天天天地人 喜の字
台風を待つ夜の少し弾みけり 天地地地地 芝浜
立ち喰いの靴濡れそぼつ雨台風 天地地人 雪童
宙深く台風一過の始発便 天地人 風写
颱風の逸れて予報は行き場なし 天 逆月
台風のあと澄むほどに月あかり 天 山女
颱風を過ごす屋台の酒愉し 天 酒倒
台風に耐えて名月渡す橋 天 風写
台風過はや「竿竹や」「竿竹や」 天 仲春
【竜胆】
木道の継ぎ目の軋み蔓竜胆 天天天天 魯斗
同姓の三基の墓や濃竜胆 天天 仲春
竜胆を抱き深山の石羅漢 天地地地人人 雪童
竜胆や群れずに独り青は濃く 天地人 芝浜
岳人の深山竜胆歌ふ声 天地人 菫女
りんどうの孤独を知らず野路に咲く 天地 音澄
咲き初めの釣り鐘竜胆虫の宿 天地 山女
竜胆に案内されて登山道 天人人人 駒吉
【むく鳥】
むく鳥の群れて一樹の狂いだす 天天天地地 仲春
空に椋鳥点描ごとき絵の浮かぶ 天天天 魯斗
鋤き返す畑にむく鳥降るごとく 天地地地 音澄
椋千羽空舞う南京珠簾 天地地 風写
逆光の西陽に椋鳥のふくらみぬ 天地人人 芝浜
むく鳥の木とも知らずに待ち合はす 天人 仲春
椋鳥の群れ坩堝となりし森ひとつ 天 魯斗
椋鳥の竹藪斜め谷に向く 天 菫女
つぶやき再録
★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
我らがガキ時代は、人情も世相もそして天気の神様も、今よりおっとりしていました。夏の暑さだって簾と団扇と打ち水で何とか過ごせたし、熱中症なんてえ凝り性の親戚みたいなのもなかった。颱風だってなんだか楽しかった。
台風を待つ夜の少し弾みけり
そうそうそんな気分。私も類似句をひとつつくりました。褒めといてすみませんが選にはもれました。
【台風】
天 台風のあと澄むほどに月あかり
地 大提灯たたんで台風通しけり
人 台風下気長にみがく古グラヴ
天の「あと澄むほどに」が、凛としてきれいです。地は粋です。人はグリースの匂いがしそうな・・・。
【竜胆】
天 木道の継ぎ目の軋み蔓竜胆
地 竜胆を抱き深山の石羅漢
人 竜胆や銃声音の無骨なる
天は不足なく蛇足もない、気持ちのいい完全さがいいです。地は何と言っても音読すると気持ちのいい響き抜群の句。人は「銃声」の意外性に軍配あげました。
【椋鳥】
天 むく鳥の群れて一樹の狂いだす
地 椋千羽空舞う南京珠簾
人 逆光の西陽に椋鳥のふくらみぬ
椋鳥ってかわいそうなくらいマイナスイメージの強い鳥なんですねえ。
それならいっそ「狂」わせてしまえと天。
南京珠簾ねえ!作者、分かりましたぜ。「逆光の西陽」のくどさに脱帽。