2016年9月アーカイブ


◯ 仲秋の兼題は「宵闇」「秋鯖」「稲刈り」です。

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【宵闇】
宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯      天天天       酒倒
宵闇や下戸は本屋を止まり木に    天天地地人     呑暮
宵闇を貫き消ゆる走者の背      天天人       出船
宵闇や時ごと変わる庭の声      天天        山女
宵闇や石鹸の香とすれ違う      天地地地人     呑暮
宵闇やばくりと割れし胸の蓋     天人        磨角

宵闇に五感冴えるや石階段      天         青羽
宵闇や家庭菜園棒ばかり       天         仲春

【秋鯖】
秋鯖や醤油は玉と弾かれり      天天天天地地地人  呑暮
海の青背に含ませて秋の鯖      天天地地人     青羽
秋鯖やタマの出奔もう五年      天地地人人     酒倒
秋鯖を両手に提げし小長靴      天地地       呑暮
寄宿舎の窓に秋鯖煮る匂ひ      天人人       仲春
山賊が山留守にする秋の鯖      天人人       青羽
秋鯖や懲りぬ酢〆の性と知り     天         風写
秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ     天         仲春
秋鯖の骨が三本皿の隅        天         出船

【稲刈り】
稲刈りの終えて広さを知る田かな   天天地地地人人人  芝浜
稲刈りや親戚集いて無沙汰詫び    天天地人      雪童
稲刈りや再会笑う土と空       天天地人      出船
稲を刈る嫁に代りて赤子抱く     天地地地人     仲春
田の神にお礼を済ます稲刈り機    天地        音澄
稲刈り機あやつる腕のタトゥかな   天人        青羽
ハンドルとレバーで稲刈る農夫の手  天         風写
頬染めて黄金の稲を刈り初むる    天         好喜
稲刈りや山の荷車妻見えず      天         雪童
一夜明け確と風受く稲架の稲     天         磨角


◯ つぶやき再録 ◯

★呑暮さんの選句とプチつぶやき-------------------------------------------

【宵闇】
天・宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯
地・宵闇の帰路に肩押す夜風かな
人・宵闇やばくりと割れし胸の蓋
 少し前まで新聞ではブログを「日記風のホームページ」、ツイッターを「簡易ブログ」などと注釈を入れていました。
 今ではそんなことありません。スマホも俳句のキーワードになってきたなあと思った次第。

【秋鯖】
天・秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ
地・秋鯖やタマの出奔もう五年
人・山賊が山留守にする秋の鯖
 いやー、鯖がそれほどのものかと思いつつ、そういう人もいるんだろうと。鯖をそこまで好きになれた人生。その生をまっとうし、鯖にさえ未練を残さずに逝けた。待てなかったというより、待たなかったのかもしれません。

【稲刈り】
天・稲刈りの終えて広さを知る田かな
地・稲を刈る嫁に代りて赤子抱く
人・逆光にダンダンとゆく稲刈り機
 立って半畳、寝て一畳ですが、人を一人生かすにはどれくらいの田んぼが要るのでしょうか。
 稲を刈った後の田んぼの広がりは、人間の命の面積でもある。人とはそれ以上でもそれ以下でもないのでしょう。



コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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