2014年1月アーカイブ


◯ 晩冬の兼題は「冬の雷」「寒菊」「咳」です。

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【冬の雷】
冬の雷仔牛に着せる古毛布     天天天天地地人人人  魯斗
冬の雷いななく馬をいさめけり   天天天地人     喜の字
寒雷や沈むがごとき過疎の村    天天地人人人    喜の字
冬雷や大部屋患者打ち解けり    天天地人人      蝸牛
寒雷の予報に北の子を想ふ     天天地        菫女
髪染めて夕闇の向こう冬の雷    天人         山女
トランペット時折リ交じり冬の雷  天          仲春
胸秘める決意の如し冬の雷     天          陽光
冬雷やつぶやくように告白を    天          小波
澄徹の川面に響く冬の雷      天          即馳

【寒菊】
寒菊や遺影はいつも若くゐて    天天天人       小波
さりげなく寒菊に問う氏素性    天天地        魯斗
寒菊や空がきれいと独り言     天天人人       仲春
霜菊の枯れて山路の地蔵尊     天天         風写
墨色の三和土にこぼる冬の菊    天天         酒倒
寒菊のほかは萎れし見舞い花    天地地地       蝸牛
寒菊や女ばかりの昼御膳      天地地        菫女
寒菊に心馳せつつ庭始末      天地人        魯斗
守らねばならぬ畑の寒の菊     天地人       喜の字
寒菊の軒に転居の紙貼らる     天人人人       呑暮
楚々として大地を食らう寒の菊   天人        雨不埒
生きてれば九十九歳冬の菊     天          仲春

【咳】
咳ひとつ拳の穴へ落としけり    天天天天地      魯斗
いつまでも隣家の咳を聞く夜かな  天天地地       菫女
真打ちにめくり変わって咳も止む  天天地人       音澄
咳ひとつ龍角散をぶち撒ける    天天人人人      酒倒
窓下を咳遠ざかる闇夜かな     天天人        音澄
こらへ咳飴そっとくる演奏会    天地地        菫女
図書館の隅にちいさな咳こぼれ   天地人人       仲春
咳き込んで話せば長きことばかり  天地人人      喜の字
咳き込めば皆遠ざかるホームかな  天人         小波
北へ行く深夜のバスの隅の咳    天         喜の字
梯子から落ちるごとくに咳地獄   天          仲春


◯ つぶやき再録 ◯

★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【冬の雷】
天 冬の雷仔牛に着せる古毛布
地 ぱりぱりの宙を貫く冬の雷
人 寒雷やドアノーのキスいつまでも

天、寒く暖かい情景が浮かびます。
地、「ぱりぱり」が何だか気持ちよくて...
人、モノクロの世界と冬の雷がマッチしていますね。

【寒菊】
天 寒菊や遺影はいつも若くゐて
地 寒菊や女ばかりの昼御膳
人 寒菊や呼べば近づく島の猫

天、いずれ自分も、父の遺影の歳を追い越すのかと...
地、ちょうど昨日、そんな光景を目にしました。
人、黄色い菊とサビ柄の猫が見えるようです。

【咳】
天 いつまでも隣家の咳を聞く夜かな
地 古書店の奥より咳の二つ三つ
人 咳遠く響く法文二号館

天、咳って響くんですよね。広い実家でも聞こえるそうです。
地、小上がりの四畳半で、おじいさんが半纏を着ているのでしょう。
人、名物教授がいそうです。学生からは変な渾名を付けられているけれど、実はその道の権威で、著書もたくさんあるような先生。

肝臓を患い、年明けから入院していました。句会の締切は退院前日。病室で句を考えたのですべて病人による病室の句になってしまいました。これも人生初入院の記念です。

★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

浪漫、寂寥、不気味、野生、畏怖・・・「冬の雷」は、人によって持っているイメージが異なるようで、面白いバラエティに富んでいました。
気にかかることが一つ。たった十七字の中で詩を読むのに、「馬から落ちて落馬」している方が何人かおられる。犬吠えて、梢が揺れる、いななく馬。

【冬の雷】
天 冬雷や大部屋患者打ち解けり
地 船団の勇み立ちたり冬の雷
人 冬の雷仔牛に着せる古毛布

天。曇天の病室は暗い。そこへ遠い微かな雷鳴。誰かが小さくなにかを言い、それは沈黙を破り、小さな笑い声さえいきかって、薄闇の中の連帯をかたちづくった。
俳句には「おのれ」が居なくてはならないと言います。地も人も「船団」「仔牛」を詠みつつも、そこにはある重要人物の存在がある。

【寒菊】
寒菊に、ひとは秘め事を感じる。寒菊そのものが静かに抱いている出自の秘密のようなもの。まさに地の・・・。

天 寒菊や空がきれいと独り言
地 さりげなく寒菊に問う氏素性
人 庭先に光る寒菊回り道

地。まともに「問う」より、素直にその魅力をたたえよう。お前も生き物、私も生き物。
人。出自より今現在の光りかたこそ。

【咳】
天 こらへ咳飴そっとくる演奏会
地 真打にめくり変わって咳も止む
人 咳をして余白満ちたる居間のなか

滅入る句会のレベルは決して低くないと思いますが、自戒を含めて、皆さん真面目でちょいと足らないのが諧謔。そうは思われませんか。この3句。音読すると、読んだ頭のどこかの隅で小さな笑。いいですねえ。参考になります。

★小間使いさんからのお知らせ----------------------------------------

晩冬で、一年ひとめぐりの終わりということになりました。
また来月、初春から新しい一年の句会を継続します。
その前に、小間使いから句会に関したお願いを送りますので、
少々お待ち下さい。

大寒です、ぜひお体にお気をつけ下さい。
蝸牛さん、退院後の養生をしっかり。


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