2012年7月 晩夏の句会

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◯ 晩夏の兼題は「日盛り」「草いきれ」「扇風機」です。

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【日盛り】
日盛りの墓碑に動かぬ白い傘    天天天天地地地人人人 風写
日盛りを来れば茶請けの塩昆布     天天天地人人   魯斗
日の盛り山車軋みつつ曲がりけり    天天       仲春
カツ丼を喰って出ていく日の盛り    天地人      音澄
競技場に動く者なき日の盛り      天        音澄
速達をいざ出しに行く日の盛り     天        逆月
日盛りのデモに寂聴生き菩薩      天        風写

【草いきれ】
わが村は草いきれあり瀬音あり     天天天天人    菫女
草いきれ微動だにせぬ石舞台      天天      喜の字
山歩く蒸れたバンダナ草いきれ     天天       酒倒
吊橋を過ぎてふたたび草いきれ     天地地      仲春
振り向けば廃炉の屋根や草いきれ    天地人      風写
ふるさとの荷ほどくとき草いきれ    天地       小波
草いきれ草の吐息と思ひけり      天人人      魯斗
ともがきの唾のにおいや草いきれ    天        呑暮

【扇風機】
暑がりの棺に向けたる扇風機      天天天地     仲春
身の丈に合った広さや扇風機      天天      雨不埒
経を読む僧に首振る扇風機       天地地人     音澄
扇風機要らぬ知恵満つ旧家かな     天地地      仲春
扇風機宿なし猫と分かち合う      天地人      魯斗
軽き世や音の静かな扇風機       天地人      菫女
風喰えば鉄の味する扇風機       天人       酒倒
天井にただ居るだけの扇風機      天        芝浜
緊迫の最後の一手扇風機        天        小波
扇風機やがて老人眠らせる       天       喜の字


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つぶやき再録

★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【日盛り】
天 日盛りや物みな微動だにもせず
地 日盛りの墓碑に動かぬ白い傘
人 日盛りに影を吐きだす古本屋
 
天の「微動だにもせず」は思い切りがいいです。なんか動いているはずだけど、作者の中では止まっている。時間さえも。地は墓碑と傘の間に、烈しい恋情が震えています。人は「はき出す」が利いています。
 
【草いきれ】
天 振り向けば廃炉の屋根や草いきれ
地 信濃川釣り竿傍に草いきれ
人 草いきれバンザイエラーの向こう側
 
天は、「振り向けば」が利いていますね。鋭い視線には、言葉では表せない激しい感情がこもっている。地は、雄大な信濃川から一転足元に目をやって草いきれが立ちあがってきた。人。男の子なら誰にもある思い出。「向こう側」には、なかなか見つからないボールと、魔物が潜んでいる。草いきれに黒い汗が吹き出し、誰も来てくれない情けなさに涙も混じる。
 
【扇風機】
天 扇風機要らぬ知恵満つ旧家かな
地 故郷のからから回る扇風機
人 軽き世や音の静かな扇風機
 
天地人と三大話みたいに勝手に組んでしまいました。黒く重い扇風機までが何やらどっしりとエラそうにしていた旧家。理に合わない、既存の価値ばかりを押し付けてくる。そんなものが満ち満ちている重厚不遜な家。
町や村の庶民の家にあった扇風機は、羽根のビスが緩んでいるのか、カラカラカラと不安定な音を立てていた。耳障りな、しかし、なぜか懐かしい音。そして今、扇風機には優れた機能が備わって、音などしないし、睥睨するかのような重々しさもない。いい世の中ではないか・・・と!ここで、人の句の上五がびしっと響いてくる。「軽き世や」!この句が天だったかもしれないですね。


★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

 日盛り
・日盛りを来れば茶請けの塩昆布  天
・日の盛り帆柱上る航海生     地
・日盛りに人死ぬる世となりにけり 人
 
 草いきれ
・吊橋を過ぎてふたたび草いきれ  天
・草いきれ一里先には原発基    地
・わが村は草いきれあり瀬音あり  人
 
 扇風機
・軽き世や音の静かな扇風機    天
・扇風機宿なし猫と分かち合ふ   地
・留守居して独り占めする扇風機  人
 
 『辛口、御免蒙』
 私の選句は、以上ですが、今回「私にはわからない句が多くあって」困りました。読解力のなさですけれど。
 ・子ら跳ねる白き川面や日の盛り
 子供たちが水に入ってワーワー跳ねていれば「川面は波立って」白いままではないはず、と思いました。それでも、川面の反射が目に入る位置にいれば白いのでしょうが、理に走りすぎる見方ですか。
 ・日盛りにゆうゆうと咲く夏の花
 日盛りは「晩夏の季語」ですから、季節は夏で、咲くのは確かに夏の花で。これが、季重なりでしたね。他の句にも季重なりがありましたが、もう少し、季語の確認と推敲をしましょう。17文字しかない俳句の中に、季節を表す言葉を二つも入れるのは無駄です。
 ・日盛りや葉陰たどりし雲ひとつ
 葉陰を雲がどうやってたどるのか、わかりませんでした。雲ひとつは「柿ひとつ」と同様、俳句ってこういう感じ、に使いがちです。
 
 ・日の盛り帆柱上る航海生     地
 この練習船は帆船で、帆が海の光の中で風をはらんで白く輝き、マストにセーラー服を着た青年たちが上り下りする光景が「日盛り」そのもので、この句は「白く輝く様子」が素晴らしい。
 面白い句なので、選句で最後まで悩んだのが、
 ・速達をいざ出しに行く日の盛り
 でした。これ、実は、とてもお気に入りです。暑いのはわかっているけれど、速達にしたい内容の手紙なんだから早いところ投函したい、エエイッ、行くか!! と、郵便局まで行かなければいけない。この感じがいい。ヤケクソ。お気に入りなのに、選句に入りきらない、音澄のやりがちなことですが。
 
 さて、草いきれ。
 ・ふるさとの荷ほどくとき草いきれ
 ・山歩く蒸れたバンダナ草いきれ
 ・応援もとぎれとぎれや草いきれ
 ・草いきれ土手に捨てたり似非泥鰌
 ふるさとから届いた荷をほどくと「草いきれ」を感じたということでしょうが、草いきれはそういうモノではない気がしました。荷物にどうやって草いきれが入ったのか? 荷物に草いきれが入って来たのではないとすれば、どこで荷物をほどいているんでしょう? と困惑。
バンダナの句ですが、句からすれば汗で蒸れたバンダナが草いきれを感じさせる、ということになりますが、草いきれと汗臭さの匂いはまったく異質ではありませんか。それとも、バンダナと草いきれの二つを取り合わせの句として詠んでいるんでしょうか、それでもやや辛い気がしました。
 ・応援もとぎれとぎれや草いきれ
 草いきれの中で応援しているのかなぁ? どんなに田舎の草むらだらけの場所であっても、その中で応援はしないでしょうに。
 ・草いきれ土手に捨てたり似非泥鰌
 これは、まったくわかりませんでした。風景が想像できない。泥鰌を土手に捨てるんですか? 泥鰌は、野田首相のことなんでしょうか。
 私が、選んだ
 ・吊橋を過ぎてふたたび草いきれ  
 ・草いきれ一里先には原発基 
 この二句は、流れが滑らかで風景も良く、心に残りました。
 こっちの草いきれを抜けて揺れる吊り橋を渡る。吊り橋はちょっと怖いけれど、川の上にいる間は涼しくいい気持ち、でも、渡りきればまた草いきれの中をしばらく歩かなければいけない、という動きが自然で、うまいなぁ。
 原発基の句。「俳句の私は」、今、夏草が生い茂って、草いきれを感じられる場所に立っている。夏のさなか、遠くの巨大な人工物を見つめている。一里先には厄災をもたらした(もたらすかもしれない)原発基が、嘘つきたちと無策の象徴のように存在している。この句の、時代性が重く鋭い。17文字で時代を切り取ることができる、というのは、こういう句のことをいうと思いましたね。他にも、原発系の句があるのですが、この17文字が無駄なく詠めていると感じました。
 「人の句」は、その村の日常の穏やかさが沁みました。
 
 ・暑がりの棺に向けたる扇風機
 この一年で、お棺のある場所に四回いました。今は、棺の中にドライアイスが入っていて、扇風機は向けないようですよ。とすると、自宅での、葬儀でしょうね。わりと最近、通夜、告別式に出席したモノで、この句に対して、あれ? と思った次第。この句のようにしたくなる遺族の気持ちというところでしょうか。
 ・扇風機気配を読んで首を振る
 本当に、気配を読みますか、扇風機が? と長谷川櫂が言いそうです。私もそう思いますが。
 ・今日もまたイヤ!と首振る扇風機
 これも、擬人化が過ぎるような。暑い暑い日を、イヤ! と言っているんでしょうけれどね。これは、扇風機という季語は入っていますが、ほぼ川柳側に線を跳び越している気がします。
 
 というのが、音澄のつぶやきです。
 俳句のような五七五、ではなく、また、俳句ってこんな感じでいいんだよね、でもなく、しっかり俳句にしましょう。せっかくの「味のある遊び」ですから、より面白くしないとね。
 私自身のヘボは棚に上げて書きました。ヘボなりに、精進精進と思っている日々です。
 
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・小間使いより
※いただいた句をエクセルで整理しています(保存と、ソート)。それを、ワードにコピーして、罫線を消せれば問題はないのですが、移し替えた場所でどういう風にすれば罫線が消えるのか、うまくできなくて、ご迷惑をおかけしております。お届けした俳句に、見えないまま罫線がくっついている状態のようです。
 何人かの方に教えていただいたのですが、うまく消えません。
 もう少々お待ち下さい。
 
 「俳句四季」という月刊の句誌で、仲春さんの句が「特選句」に選ばれて、その紹介文の中で、「メールで句友と俳句をたのしむ「滅入る句会」同人」と、ついに、滅入る句会の名前がマスコミに載りましたよ。


コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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このページは、cave(管理人)が2012年7月22日 23:17に書いたブログ記事です。

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