◯ 仲秋の兼題は「弓張月」「柘榴」「秋出水」です。
【弓張月】
小夜更ける浮島架けて月の舟 天天人 風写
幾万の声を矢とせむ弓張月 天天人 呑暮
車窓暮れ弓張月の白さかな 天天 仲春
月の舟辻に消えゆく胡弓の音 天地地地人人 喜の字
半月と君を盗んで時を飛ぶ 天地地人 蝸牛
月の舟浮かべてしづか鳰の海 天地地人 磨角
風の音止みて湖面に月の舟 天地地人 蝸牛
ジャズピアノ奏でて揺らす月の舟 天地地 好喜
ラーメン屋弓張月の下の列 天地 音澄
男あり弓張月の再起かな 天地 凛語
ならまちの軒の狭間に月の舟 天人人 酒倒
脱藩は弓張月の夜半すぎ 天人 音澄
半月を見上ぐ東京丸の内 天 見燗
弓張月進めば戻る恋の色 天 好喜
月の舟ジョン万次郎が舵を取る 天 喜の字
ひとり乗り漕ぐは夢路の月の舟 天 風写
【柘榴】
熟れてなお愛想笑いはせぬ柘榴 天天地地 青羽
実ざくろのかなしみ喰みて赤く染む 天天地 蝸牛
遊ぶ子ら息止め惑う柘榴の実 天天 好喜
暴かれし嘘や柘榴の赤き舌 天地地 呑暮
朝市やまだ値のつかぬ柘榴かな 天地地人人人 喜の字
高きほど実柘榴赤し祖母の庭 天人人人人人 見燗
番人の果てたる苑や柘榴笑む 天人 磨角
食よりもモチーフとなり柘榴かな 天人 雨不埒
熟れてなお鴉の食わぬ柘榴かな 天 音澄
柘榴爆ぜ笑う女の紅き口 天 喜の字
脳ドック柘榴のごとく腑分けされ 天 見燗
平和にも男は倦めり柘榴割れ 天人 菫女
泣く柘榴笑う柘榴に耳塞ぐ 天 蝸牛
塀のうち熟女ほほえむ柘榴かな 天 酒倒
つぶつぶと小言聞きつつ喰むざくろ 天 青羽
片恋の柘榴ひとつぶ噛みつぶす 天 芝浜
【秋出水】
秋出水明けの青空容赦なく 天天天地人人 逆月
秋出水溺れつ祈る地蔵尊 天天天地人 好喜
秋出水沈黙の鳥低く飛ぶ 天天地地地地人 山女
刈り取りの夢も沈みぬ秋出水 天天人 凛語
一村を「流」の一文字秋出水 天天 喜の字
止んでなほ夕陽を流す秋出水 天地地地地人 芝浜
窓閉めて激流を聴く秋出水 天地 菫女
秋出水刺し子で走る消防団 天人 音澄
村の顔皆土手の上秋出水 天人 音澄
目で追いて傾斜を知るや秋出水 天人 青羽
水の星地球は不機嫌秋出水 天 喜の字
秋出水つけっぱなしのNHK 天 呑暮
柘榴のトップに「青羽」さんという、
初めて参加の方がいます。いきなり、お見事。
長野県佐久市にお住まいの方です。
中部地方にも滅入る句会が進出!(ここは笑うところです)
この前は選句一覧で間違いをしてしまって、申しわけない。
何人もの方から「何も焦ることはないんだから、ゆっくりどうぞ」と
言ってもらいました。
夏が終わって、秋色が深くなるこの時期、
日本人はいかにも俳句向きだと感じるのではないですか。
どうぞ他流試合をして俳句の腕を磨いてください。