2014年5月 初夏の句会


◯ 初夏の兼題は「夏めく」「鈴蘭」「蟻」です。

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【夏めく】
夏めきて軽い誘いに軽く乗り     天天地人      蝸牛
とりどりと和菓子司も夏めけり    天天地       酒倒
夏めくや勤労婦人の足の爪      天天人       呑暮
夏めくや藍が主体の江戸切子     天地人人      音澄
夏めけば鼻緒の色も淡くして     天地人       芝浜
重きペダル夏めく坂を登りきり    天地        蝸牛
夏めくや高座の老爺男まへ      天地        菫女
夏めきて髷結ふ力士となりにけり   天人人       菫女
夏めきて転た寝迫る昼下がり     天人        風写
漁や筋肉光り夏兆す         天人        逆月
夏めいて誰も彼もが白い腕      天         小波

【鈴蘭】
君影草白くちゐさき毒婦かな     天天天地地人    逆月
すずらんや風と戯る無人駅      天天地       好喜
木洩れ日と会釈を交わす君影草    天地人人人     魯斗
鈴蘭の鈴の音もなく揺れるかな    天地        芝浜
すずらんや北国行きのキスリング   天地        酒倒
流れ雲スズランの野の昼寝かな    天人人       酒倒
鈴蘭やベテラン女優の控え室     天人        音澄
すずらんは年長組のおしゃま顔    天         呑暮
鈴蘭を鉢に移して友の床       天         風写
鈴蘭や夜の空気を重くして      天         小波
鈴蘭や少女の欠片こぼれをり     天         磨角

【蟻】
子も巣立ち蟻の上がらぬ家となり   天天天地地人    呑暮
蟻の巣に一人動かぬ下校の子     天天天人      魯斗
大仏の掌とは知らずに蟻のぼる    天天地      喜の字
ひたすらというはたやすき蟻のみち  天天人人     喜の字
願かけて蟻一列を跨ぎけり      天地人       呑暮
境内は果て無き大地蟻の旅      天地        音澄
迷い蟻敷居の端を一人旅       天人人       雪童
蟻殺す跡形もなく人知れず      天         山女


◯ つぶやき再録 ◯

★魯斗さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

 先代ワンコを19歳で見送って2年半。ガマンしきれず一昨年暮れに飼いはじめたワンコも間もなく2歳。ワンコ不在ですっかり運動不足になっていましたが、毎日朝夕二度の散歩ですこしダイエットにも成功。ついでに散歩の時間が作句の時間として復活しました。
 が、北海道に暮らしていると、句会のお題に実感が伴わない。散歩で眺める風景と、頭の中で詠む俳句の風景がミスマッチ。毎回、句会の季節と大きくずれているなぁ、と感じ、それを口実に駄作を連発する日々であります(笑)
 ところが今月、「初夏」はピタリと合うようで、妙な違和感もなく参加できました。ただし、駄作が解消されたかと言えば、相変わらずの体たらく。以下、選句です。

【夏めく】
天・夏めくや高座の老爺男まへ
地・とりどりと和菓子司も夏めけり
人・夏めきて転た寝迫る昼下がり

天。絽の着物でしょうか。味わい深い名人がいっそう粋に見えるんでしょうねぇ。寄席のない街に暮らしていると想像もできなかった「絵」です。
地。私の暮らす帯広はお菓子の街と呼ばれています。たくさんの菓子屋が腕を競い合っているのですが、歴史がないからなのか季節を細工した和菓子ってあまりない。やはり京都などではこんな感じなんでしょうね。
人。もう少し気温が上がると転た寝も苦行のようになるでしょうから、この時期がベスト。
ちなみに、汗のかけないワンコの長い舌が目立つのも夏めくしるし。肉球もしっとり濡れはじめました。

【鈴蘭】
天・君影草白くちゐさき毒婦かな
地・目の合わぬ鈴蘭見知らぬ美女のごと
人・鈴蘭や庭に五線譜音かなで

  天。玄関の真ん前の植え込みにノラ鈴蘭が咲いています。毎年毎年律儀に咲き続けてくれますが、実は毒性が高く、菜食大好きな我がワンコには危険なヤカラであります。また、山菜摘みで行者にんにく(こちらではアイヌネギ)と間違えて食べ、中毒を起こす事故が毎年報じられます。そんなわけで天は実感。愛らしい容姿と秘められた毒。「魔性のをんな」なんですよね。
地。鈴蘭はアマチュアカメラマンには恰好の被写体で、あちらこちらで撮影されている方を見かけますが、写真を撮るとき地面にカメラを置くぐらいローアングルにしないと撮れない。しゃがみ込んだり、腹ばいになったり・・・傍で見ているとなんとも滑稽で微笑ましい風景です。
人。同じ季節に鈴蘭と競い合っているのが「ムスカリ」。ブドウヒアシンスとも呼ばれる紫の可愛いヤツです。形はト音記号っぽくも見え、鈴蘭の白い花が音符のように思えていました。地面にへばりついて見上げるように花たちを眺めるとき、五月の真っ白な雲が楽譜の紙・・・かな?

【蟻】
天・境内は果て無き大地蟻の旅
地・子も巣立ち蟻の上がらぬ家となり
人・黙々と働く蟻と覗く我

  つい先日まで公園や神社の庭で忙しなく走り回っていたのがエゾリス。ワンコにとっては狩猟本能がジッとさせてくれない相手。油断すると思いっきり引っ張られて転びそうになります。が、出産子育てがひと段落したらしく、姿を見せなくなってきました。これで少しは落ち着いて散歩を楽しめる、と思っていたら、アリンコの季節到来。急に立ち止まって痙攣するように脚をばたつかせる。時には地面にカラダをこすりつけ七転八倒。蟻が這い上ってくるんですね。ムズムズするのが気持ち悪いようで、たまに噛まれて腫れ上がることも・・・・。少々厄介な相手です。
天。蟻の目に映る広大な世界。ワンコの巨大さはいかばかりか、と。
地。裸足で庭遊びする子、いまもいるんでしょうか? 高層マンションなどではあり得ない話ですかね?
人。実感と共感。ついでに少し自己嫌悪と反省と。

北海道から季節だよりっぽくなってしまいましたが、良い季節ですのでよろしければ来道ください・・・と、冷え切った北海道経済立て直しを画策して、観光誘致でした(笑)


コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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このページは、cave(管理人)が2014年5月24日 23:05に書いたブログ記事です。

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