◯ 晩春の兼題は「八十八夜」「楤の芽」「ぶらんこ」です。
【八十八夜】
一窓に八十八夜の阿蘇五岳 天天天天地地 仲春
父の伴八十八夜の苗探し 天地地人 山女
八十八夜家庭菜園計画書 天地地 豆蛙
八十八夜こまごま記す農日記 天人人 魯斗
まだ風の尖る日もあり八十八夜 天人人 魯斗
手術経て八十八夜空青し 天人 駒吉
降りつづく八十八夜でありにけり 天人 喜の字
振り返り八十八夜の月の海 天 磨角
神棚に八十八夜の水をあげ 天 音澄
【楤の芽】
楤の芽や淡き色吹く国境 天天天天 磨角
たらの芽や古刹に下がる大草履 天天天人 仲春
たらの芽をそれなりに揚げひとり喰う 天天 喜の字
二の膳はたらの芽づくし山の宿 天地地地人人 喜の字
たらの芽をスルーしてゆく山ガール 天地人 酒倒
道問えばたらの芽隠す背中かな 天 酒倒
【ぶらんこ】
ぶらんこや連山寄ったり離れたり 天天天地人 駒吉
ブランコの背を押した手も今はなく 天天地 音澄
ぶらんこにおんな置いてくそんな夜 天地地 喜の字
ふらここや靴ひとつ飛び明日も晴れ 天地 豆蛙
ぶらんこや見え隠れする霞み富士 天人人 山女
ぶらんこで遊んでいたらブラタモリ 天 酒倒
ぶらんこを九九終わるまでひとり占め 天 喜の字
ぶらんこや花びら乗せて揺れている 天 山女
ふらここや恋せよ四十路咲き誇れ 天 蝸牛
つぶやき再録
今回は、つぶやきはありませんでした。
★雨不埒さんの選句(参考)-------------------------------------------
〈八十八夜〉
天・グーグルに八十八夜教えられ
地・まだ風の尖る日もあり八十八夜
人・八十八夜羽織も清し新真打
〈たらの芽〉
天・たらの芽をスルーしてゆく山ガール
地・たらの芽や喰らうに余る傷の数
人・たらの芽や古刹に下がる大草履
〈ぶらんこ〉
天・ブランコの背を押した手も今はなく
地・ぶらんこや連山寄ったり離れたり
人・初めての立ち乗りぶらんこ別世界
酒倒でございます。
つぶやき、じゃなくて、ぼやきです。
たらの芽の末席に滑り込みました拙句、
・たらの芽をスルーしてゆく山ガール
なんですが、
投句寸前まで「してゆき」か「してゆく」か迷いました。
「き」のほうが切れて俳句らしい気はするんですが、
性分としてどうも普通っぽくしてしまいたくなるんです。
なにせ「標語好き」なもんですから。
そういう作りってアリなんでしょうかね?
酒倒様
逆月です。今回は野暮用があってつぶやきませんでした。でもこの形にしていただいて、なんだかコミュニケーションしやすくなりました。家に窓が一つ増えた感じ。
山ガールの句。とても気になったのですが、すみません、逆月は入れませんでした。
その原因ををよくよく考えてみると、「普通」だったからのような気がします。
山ガールという連中が楤の芽の形を知っているとは思えませんし、知っていたとしても当然スルーするだろうという「普通」です。それは、お悩みの「スルーしてゆく」でも「スルーしてゆき」でも、あまり変わらないでしょう。それよりも、ファッションやガイドのお兄さんにばかり気を取られている「山ガール」なる一族が、何のために山に登るんじゃ?という風潮の根本をとらえたほうがよかったのではないのでしょうか。それは、恐れを知らない山ジジイ、山ババアにもいえることです。でかいカメラを下げ、高価なシューズを履いて、身の丈に合わない高度な山に平然と登り、時々へたばり、たまにくたばって、他人に迷惑をかける。
行き会った楤の芽に強い視線を送り、立ち止まり、感じる。そんなことはまるで無縁です。楤の芽に限ったことではないと思います。だから、ここは、楤の芽を「代表」として詠んだほうがよかったのではないかと、不肖、逆月は思います。楤の芽を山ガールたちのものではなく、「こっち」のものとして捉える。そうすれば、この句は「普通」じゃなくなったのでは?。キーは切れ字、ではないでしょうか。
楤の芽やスルーしてゆく山ガール
元山ボーイの逆月、勝手なつぶやきでございました。お読み捨てください。
おお逆月さま!
早速丁寧なご教示をありがとうございます。
なるほど切れ字で、ずいぶん趣が変わりますね。
なんというか俳句脳みたいなものが弱いようで
切れ字が上手く使えない(というかちょっと使うの恥ずかしい)。
長いことやってるのにこれじゃあ困りますね。
たいへん参考になりました。多謝です。
双方向のやりとりができますから、
みなさんもどんどんつぶやいてくださいな。