◯ 晩春の兼題は「八重桜」「春の闇」「壷焼き」です。
【八重桜】
八重桜ほろほろこぼる尼の寺 天天天 磨角
八重桜ひなたの犬の大あくび 天天地地人人人 出船
老記者の引退記事や八重桜 天天人人 音澄
昼酒の濠端しづか八重桜 天地地 酒倒
八重桜厚化粧する五十代 天地人 駒吉
結納や白湯に満開八重桜 天地人 雪童
在り方の重さを問うて八重桜 天地 出船
父の背で十数えしや八重桜 天人人 呑暮
九尾狐が駆け抜け香る八重桜 天 青羽
花たわわ笑顔もたわわ八重桜 天 芝浜
【春の闇】
春の闇地震の崩せし武者返し 天天地 磨角
よりそへる匂いと匂い春の闇 天天地 凛語
穢土浄土結界にじみて春の闇 天地地人 青羽
女名の店並ぶ奥に春の闇 天地人人人人 音澄
白杖の音の向こうに春の闇 天地人人 雪童
切れ切れに二胡の稽古や春の闇 天地人人 呑暮
春の闇幾光年の向こうまで 天地 音澄
春の闇テーマパークの勝手口 天地 酒倒
あやまちを不問に付すや春の闇 天地 青羽
手脚伸ぶ作句の床に春の闇 天 風写
障子越し三味線の音を聞く春の闇 天 芝浜
朝まだき馬のいななき春の闇 天 愚多楽
少年の胸に棲みつく春の闇 天 仲春
【壷焼き】
壷焼きの角を数へて酔ひ深し 天天天地地 芝浜
壺焼きや屋根に石置く磯の茶屋 天天天人 仲春
でこぼこと猫背並びぬ壺焼屋 天天地 青羽
壷焼きや先ず絵手紙を描いておき 天地地人 雪童
うわばみが口をすぼめて焼き栄螺 天地地 青羽
壺焼きに挑みかかるや爪楊枝 天地人 出船
壷焼きは生まれ変わりて盆栽鉢 天 雪童
壷焼きは上司次第の新社員 天 酒倒
立夏が過ぎれば、夏が来ます。
次回は、初夏の句会です。