◯ 初冬の兼題は「冬休み」「生姜湯」「こたつ猫」です。
【冬休み】
冬休み日経を読む十六歳 天天地地人人 仲春
東西の神のせわしや冬休み 天天地人 音澄
校庭に日差しのみある冬休み 天天 菫女
拍子木が月夜に響く冬休み 天地地人 好喜
冬休み巫女の装束愛娘 天地地人 魯斗
学び舎は空いた方舟冬休み 天地人 逆月
吐く息を追いかけ暮れる冬休み 天地 即馳
蝶番壊れたままや冬休み 天人 逆月
冬休み校門飛び出し右ひだり 天 雪童
からっぽの校庭目立つ冬休み 天 喜の字
先生がお母さんしてる冬休み 天 蝸牛
【生姜湯】
生姜湯に焼酎合わせて星の庭 天天天地 風写
生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず 天天天 菫女
生姜湯や解けぬ思ひと共に吹く 天天地人人人 逆月
生姜湯や向こうで父さん酒を足し 天天地 雪童
生姜湯や笑って済ますことにして 天地地地人 仲春
生姜湯を熱めに添えて妻の床 天地地人人人 風写
生姜湯を飲みつつ寺の句会かな 天人 喜の字
生姜湯は言わばカリスマ整体師 天 好喜
【こたつ猫】
出入りするたびにひと鳴きこたつ猫 天天地 音澄
回覧板ひとり留守番コタツ猫 天天 雪童
炬燵ネコ一尺四方の至福かな 天地地人 逆月
こたつ猫その子猫までこたつ猫 天地地 仲春
名を呼べばくぐもる返事こたつ猫 天地人 芝浜
じじばばと競って定席こたつ猫 天地 山女
冷えた足そっと探すやこたつ猫 天地 山女
握り合う手と手を見たりこたつ猫 天人人人人 音澄
ご隠居の顔してをりぬ炬燵猫 天人人 喜の字
こたつ猫愛す大佛次郎かな 天 仲春
こたつ猫呼ぶと尾を振り起きもせず 天 蝸牛
甚五郎手本にしたか炬燵猫 天 雪童
★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【冬休み】
天 冬休み巫女の装束愛娘
地 冬休み日経を読む十六歳
人 ランドセル中をそのまま冬休み
天、大きくなったなあという感慨が伝わります。清純な衣装で、さぞかわいいのでしょうね。
地、受験を間近に、小論文の勉強でしょうか。面接の準備でしょうか。息子をちょっと頼もしくいとおしく見ている、親のまなざしが温かいです。
人、とても好きなんですが、そのまま夏休みにも言えてしまう感じが惜しいかな。生意気ですが。
【生姜湯】
天 生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず
地 生姜湯や向こうで父さん酒を足し
人 生姜湯や笑って済ますことにして
天、ああ分かります、この感じ。健康など、なくして分かる有難み。皆さんご自愛ください。
地、身体に良いんだか悪いんだか。「父は」でなく「父さん」というのが愛らしいです。
人、イライラするのは空腹や寒さのせいかも。おなかを温めて、いろいろ許したくなりました。
【こたつ猫】
天 名を呼べばくぐもる返事こたつ猫
地 出入りするたびにひと鳴きこたつ猫
人 握り合う手と手を見たりこたつ猫
天、猫飼いとしては、とてもよく分かります。眠そうな遠い声がとてもかわいいんですよね。
地、これもかわいい!寝ているところを起こされて不機嫌なのか、甘えているのか...。
人、この視点は他になかったですね。新しい。猫だけが知っている、なんて漱石みたいです。
★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【冬休み】
・蝶番壊れたままや冬休み 天
・吐く息を追いかけ暮れる冬休み 地
【生姜湯】
・生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず 天
・生姜湯や笑って済ますことにして 地
・生姜湯を啜り法話を続けをり 人
【こたつ猫】
・こたつ猫愛す大佛次郎かな 天
・こたつ猫その子猫までこたつ猫 地
・亡き父の席をせしめし炬燵猫 人
「冬休み」の句ですが、自分のヘボを棚に上げていうと、冬休みを夏休みに替えてもあまり変わらない句は、避けました。で、「人」の句が選べませんでした。
「生姜湯」の句に
・寒さ増す冬雷を聞く生姜湯よ
がありました。「寒さ」「冬雷」「生姜湯」と季語が並んでしまいましたね。
17文字しかないので、季節感を出す言葉を重ねない。そのために、季節感や風情を託す「季語」が選ばれ、集められてきたことを思い出して欲しいと思います。
俳句を始めたばかりの人に、いい? 季語は一つね、
・夏休み海水浴だ西瓜割り
こういうのはいけないんですよ、というようにしているのです。これも、季語が三つです。 生姜湯に酒を入れて飲むというのが、どうもね。そうですか? 酒があるならまっすぐそれを燗して飲めばいいと思うのですが。燗酒というのが冬の季語ですし。
「こたつ猫」は、たぶん世界が狭くなるぞと思っていたのですが、案の定でした。そこでどれぐらい意表を突くか、あるいは、猫を観察して詠むかを楽しみました。
俳句は写生とはいうモノの、少し場面転換の「ハッとする」ところを詠みたいと思っています。
★小間使いさんからのお知らせ----------------------------------------
俳号・好喜(こうき)さんという男性が初参加です。と、あるところで、名刺交換をしたとき、私の名刺の裏に書いてある「滅入る句会」会員、に目が止まってしまい、これはなんですか? 句会です、と、進んで、初参加になりました。初回でずいぶんいい点をもらっております。
新しい年も、よほどのことがない限り滅入る句会を続けます。変わらず、しつこく続けるつもりです。しつこくいい句を詠んで、しつこく投句してください。面白がって詠むと、俳句はかなり面白いです。もちろん、選句もよくよく吟味して楽しんでください。※小さな仕事ですが現役で仕事をしています。締め切りのあと、長い時間待てないことが多いので、容赦の時間を短くします。ぜひぜひ、良いお年を。