◯ 仲夏の兼題は「梅雨寒」「らっきょう」「めだか」です。
【梅雨寒】
梅雨寒や大仏少し縮みたる 天天天天天天地人 駒吉
ことごとく我が師は鬼籍梅雨寒し 天天天地地地人 魯斗
梅雨寒やひよこ抱くよな指揮者の手 天地人 菫女
野仏も肩ちぢこまる梅雨寒し 天地 魯斗
梅雨寒し古戸車に油注す 天地 酒倒
梅雨の冷え消せぬ留守電聴きにけり 天人 磨角
梅雨寒や返しそびれたカーディガン 天人 山女
再稼働巨大陥穽梅雨寒し 天 逆月
【らっきょう】
ふるさとの砂を運びしらっきょかな 天天天天天地人 呑暮
辣韮漬け母は生涯故郷訛り 天天地地地人人 魯斗
飴色を待てずにラッキョのふたつみつ 天地人人 風写
相客と電気のはなしらっきょ食む 天地人人 磨角
らっきょうの軋む歯の根や嘘のあと 天地人 蝸牛
退職しらっきょう漬けの腕上げる 天地 音澄
今日漬けしらっきょの匂ふ指の妻 天 磨角
小坊主の行列見たりらっきょかな 天 雪童
のり平のクレオパトラや花辣韮 天 酒倒
どこからが茎か辣韮の下仕込み 天 芝浜
【めだか】
区役所に受付気取りの目高かな 天天天天 喜の字
田の脇にめだかの分校生き残る 天天地人人 音澄
涼を縫うめだかの影の二つ三つ 天天地 蝸牛
好きなのよ目高育てるおかまBAR 天天人人 仲春
月島の四十二階のめだかかな 天地地 磨角
見下ろせば白雲泳ぐや紅めだか 天人 風写
浮き草を躱してツンツン白目高 天 雪童
この丈に命の宿るめだかかな 天 音澄
ビニールの袋に目高二匹かな 天 仲春
つぶやき再録
★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
音澄様、環境の大変化(?)でお忙しいところ、いつもの様にまとめてくださり感謝です。滅入る句会はメンバーの数も増え、どうやら日本列島を縦断?するほど広いエリアに広がっているようですね。毎回、唸ってしまう秀句が連発され、逆月、自信喪失するばかりです。
滅入る句会俳人のみなさん、毎回、もうちょっと多くの方の「つぶやき」が読みたいなと思っています。お忙しいとは思いますが、短くてもぜひ。酒倒さんのご尽力にも応えたいし。
今回は、らっきょ、めだかという季語に苦悶苦闘しました。ではつぶやきながら選句を。
【梅雨寒】
天・梅雨寒や大仏少し縮みたる
地・梅雨寒やひよこ抱くよな指揮者の手
人・梅雨寒や返しそびれたカーディガン
今回は選ぶのにとても迷いました。梅雨寒もいいのが多く、過去帳や古戸車のような大正昭和の雰囲気のもあれば、ふたりで過ごそや人の句の様なほのかに甘いのもあり、大いに競り合った感じです。天と地は初め逆だったのですが、携帯で送られたリストを眺めていたら大仏が突如カッと目を見開いて・・・・・!!
【らっきょう】
天・辣韭漬け母は生涯故郷訛り
地・蕎麦湯汲む女将の指にらっきょの香
人・相客と電気のはなしらっきょ食む
のり平がよかったのだけどよくよく読むと、「や」のあとに、広がっていくものがなかったような気がします。天は皮むく手つきと母もの対決の末、故郷訛りで寄り切りでした。「指」対決は蕎麦湯の応援を得て女将が妻を押し出し。電気のはなしはずっと天に決まっていたのですが「食む」がどうもネックになって人に。冷えたる酒もよかったです。
【めだか】
天・区役所に受付気取りの目高かな
地・畔に足が抜けないメダカ採り
人・群れめだか時に背泳ぎ立ち泳ぎ
天は吹き出しましたね。「ああ、いるいる!」ってヤツ。手打ち蕎麦屋の早仕舞いは初め地につけたのですが抜かれちゃった。地の、畦を「たのくろ」と読んだ造詣に脱帽。人は「立ち泳ぎ」が効いた。手水鉢、命の宿るもよかったです。
それでは皆様、夏風邪にお気をつけて。
★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
梅雨寒
・梅雨寒や大仏少し縮みたる 天
・梅雨寒し古戸車に油注す 地
・過去帳に裏貼りをして梅雨寒し 人
奇をてらわない句、なんとなく「昭和の匂いがする句」がいいな、という気持が少々ですが、確かにありました。「戸車」など、言葉そのものが久々でした。
「大仏」を選び「野仏」を選びませんでしたが、肩ちぢこまるほど寒くはないだろう、とね。梅雨の時期に、鎌倉に紫陽花でも見に行って大仏さんを見かけたら「おや、今日の寒さで少し縮みましたか?」といった軽い気分がよくて、とりました。
・梅雨寒や読みかけの本読みかける
あ、この言い方成り立つなぁと思いましたね。読みかけの本、また、読みかけに終わってしまっている。ありそうな。
・ことごとく我が師は鬼籍梅雨寒し
身につまされる句でした。いい句だと思いました。何年かのち「ことごとく我が友は鬼籍梅雨寒し」になってしまうか。
・梅雨寒や白足袋の踵くっきりと
きれいな風景ですが、「初釜や白足袋の踵くっきりと」とも、詠めるのでね。
らっきょう
・角のなきらっきょのごとく生きるとす 天
・ふるさとの砂を運びしらっきょかな 地
・浮世かな女優干されてらっきょ食ぶ 人
らっきょうの句では、なんといっても
・のり平のクレオパトラや花辣韮
でしょうが、ここまで巧く詠むと「川柳の傑作」に足を踏み込んでいますね。
人の句の「浮世」が「憂世」なら、私は天にしていたのでした。勝手なものですが。かなりな女優が干されてしまって、臭いも気にせず「えーえ、あたしはどうせねぇ」と、やや開き直り加減。もうご存じないでしょうが、サガミチコなんぞでありますな。
天は、軽さがいいです。「らっきょうに角が無いのを今さら確認して」人生を生きようったって、もう遅いんでしょうに。それでも、塩らっきょうなどを前に「なんだい、こんな風に角のない人生もいいってことかい」でした。
今時は、葷酒山門に入らずを無視して、らっきょうを食う禅宗の坊主がいるので、そういう句があると思っていたのですが、難しかったですかね。
・なまぐさや辣韮坊主の月参り
これは「生臭坊主」を詠んでいるのではないような気がしました。
句を読んでみると、らっきょうを甘く漬ける傾向が強く、一般的にはそうなのかと納得。飲めないじゃなりませんか。
めだか
・見下ろせば白雲泳ぐや紅めだか 天
・膝入れて澱みにめだか追ひにけり 地
・めだか飼ふ手打ち蕎麦屋の早仕舞い 人
めだかを8年間飼い続けたことがあって、詳しい。世代交代させ、近親交配を避けるために新しい個体も入れて、という風に飼い続けて、観察もしていました。だから、背泳ぎはしないと思いますよ。めだかの句では、
・好きなのよ目高育てるおかまBAR
でしょう。カウンターで飲む常連は、まずめだかに付いてあれこれいうおかまBAR。参ったなぁ。でも、こういう自在な句はいいなぁ。金子兜太さんなんかが、これはいい!といいそうな感じ。言わないか。
-------------------------------------------
ではでは 小間使い
・質問を取り次ぎますよ。また、この人に「教えを乞いたい」という場合も仲を取り持ちます。ご遠慮なく。
酒倒でございます。
音澄さんにつぶやいていただいた拙句、
・なまぐさや辣韮坊主の月参り
ですがこれ、葷酒山門を詠み込んでやろうと目論んで自爆しましたw。
最初は「辣韮和尚」にしてたんですが、
沢庵和尚と引っかかって煩雑になるかと思い「坊主」に変えたんです。
かえって、坊主頭が浮いてしまったか。
まあ、あたしの力量では無理筋でしたね。
のり平は「鼻辣韮」にするか迷いました。
クレオパトラのCM動画はこちらにありますよ。
↓
http://www.momoya.co.jp/museum/cm/50-60/06article.php
1966年の作品。「毒蛇はどこじゃ」が懐かしいス。
塩辛の「イカあった、いかった〜」の駄洒落も好きでした。
寒暖・乾湿が激しい昨今であります。みなさんお気をつけられますよう。