◯ 晩冬の兼題は「春いまだ」「凍港」「こたつ猫」です。
【春いまだ/春遠し】
目覚めても無明の窓辺春いまだ 天天地地地地人 音澄
耳朶でとらえし夜風春遠し 天天地人人 小波
春いまだ漱石の鬱子規の念 天天 出船
春遠し前髪ぱつんと切りました 天天 小波
春遠し切ない話夜中に来 天地 仲春
傍らに気配なき夜春遠し 天人 見燗
すきとほる水沁み入るや春遠し 天 凛語
春いまだ女の話に尾鰭あり 天 菫女
春遠し杖の老婆は鞠のよう 天 酒倒
【凍港】
凍港にデイサービスのバス巡る 天天天地地人 出船
凍港や旅立つ勇気風に散る 天天人 好喜
凍港や燈台ひとり睥睨す 天地地 雪童
凍港や船のロープの硬きこと 天地人 音澄
凍港を奮い立たすや大漁旗 天地 好喜
凍港や訛ほどよき標準語 天地 青羽
そっと目尻なぞる男や凍港 天 磨角
凍港や魚は焼けて船は出ず 天 小波
凍港の先に浦塩カムチャッカ 天 酒倒
凍港の廃船半ば傾きて 天 芝浜
【こたつ猫】
こたつ猫蹴飛ばし詫びる独り酒 天天天人人 雪童
繰り言の聞き手を降りるこたつ猫 天天地地人 凛語
そんなこたくだらぬことよこたつ猫 天天地地 磨角
迫り来る足に怯えずこたつ猫 天天 出船
おめかしをじっと見てゐるこたつ猫 天地地人人人 小波
今朝もまたあくがるるかなこたつ猫 天人 岩牡蠣
炬燵猫となる夢をみる炬燵かな 天 芝浜
往来もこたつも知らぬCAFEの猫 天 酒倒
兼題を出す者として、「想像句」ではどういう世界を
思い浮かべるのかと、気になったり、
実体験で詠むとどう詠むのかと、気になり
楽しみでもありますが、
今回の「こたつ猫」などは、世界が狭いので
風景が似るのはしょうがないでしょうが、
「ハッとする」句は難しかったようですね。
ではでは 次回はもう春、初春の句会です。
お楽しみに。