◯ 初秋の兼題は「処暑」「葛の花」「法師蝉」です。
【処暑】
処暑の風二の腕細し図書係 天天天地地地地 青羽
過ぎ越して頂と知る処暑の山 天天地 出船
来ぬバスに空の青さや処暑の風 天地人人 好喜
処暑の蝶うつむく花を巡りゆく 天地人 山女
まだまだと気構へてをり処暑の朝 天地 菫女
じわじわり入玉模様処暑の盤 天地 即馳
処暑の朝寄付請う便り母校より 天人 好喜
土砂降りの沙汰止みにけり午後の処暑 天 菫女
処暑の子のなほ火照りたるはだへかな 天 凛語
処暑なれど便箋は手に粘りつき 天 音澄
【葛の花】
山守の容赦なく断つ葛の花 天天天天地地 音澄
葛の花無沙汰の文に毒一つ 天天地人 出船
杣道を隠して嗤う葛の花 天天地地人 雪童
領土線気ままなりけり葛の花 天天 見燗
墓じまい散る葛の花清々し 天地地人人人 青羽
眼下なる瀬に釣り人や葛の花 天地地人 菫女
洪水の跡にしとどの葛の花 天 凛語
【法師蝉】
膝笑う長い坂道法師蝉 天天天人 酒倒
法師蝉終の住処と決めし家 天天人人人人人 菫女
法師蝉絵日記のなか鳴いている 天天人 山女
山の色軽くかきまぜ法師蝉 天地地 青羽
境内の読経に降り来る法師蝉 天地地 風写
法師蝉空へ読経を解き放つ 天地 出船
鳴きつくすつくつく法師の鳴きつくす 天人 菫女
葉雫や解き放たれて法師蝉 天 即馳
歓びの歌を覚えし法師蝉 天 呑暮
★出船さんの選句とコメント------------------------------------------------
【処暑】
・じわじわり入玉模様処暑の盤 天
・百ミリの雨を運びて処暑に入る 地
・処暑の蝶うつむく花を巡りゆく 人
【葛の花】
・眼下なる瀬に釣り人や葛の花 天
・杣道を隠して嗤う葛の花 地
・愚痴ひとつ風に舞い飛び葛の花 人
【法師蝉】
・法師蝉終の住処と決めし家 天
・境内の読経に降り来る法師蝉 地
・樹々からはまだ雫落つ法師蝉 人
〈コメント〉
・じわじわり入玉模様処暑の盤
将棋に興味のない人には「なんのこと?」という感じでしょうが、
将棋好きは膝を打つ句でした。