2012年2月 初春の句会

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◯ 初春の兼題は「冴え返る」「うぐいす」「椿」です。

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【冴え返る】
海往きの列車見送り冴返る      天天地人      磨角
冴返る忘るなかれと空の言う     天天地       蝸牛
冴え返る京の露地裏鼻緒擦れ     天天地       逆月
観るひともなき無韻の詩冴え返る   天天        菫女
光芒を曳きし落日凍返る       天天        魯斗
日めくりのまだ重そうに冴え返る   天地地人人     小波
真夜中の電話の向こう冴え返る    天地地      喜の字
酔い覚めの水の匂いや冴え返る    天地人人      呑暮
法要の終えし堂内冴返る       天地        仲春
冴え返り回転木馬起きてこず     天        喜の字

【うぐいす】
笠上げて鶯聴くや托鉢僧       天天天地地人    仲春
揺れ動く木々を目で追う初音かな   天天人      雨不埒
鶯を空耳に聞く老父かな       天天人       芝浜
うぐいすの歌まだ硬き北の森     天地地       駒吉
山靴のきしむ駅舎や花見鳥      天地人       逆月
裏切らぬことのひとつは初音なり   天地人       菫女
鶯の長き静寂息とめて        天人        蝸牛
鶯の鳴く庭そこも売り家かな     天人       喜の字
うぐいすやケキョの宛字を考える   天         酒倒
うぐいすや匂い来る枝待ちわびて   天         山女
句帳開く歌詠鳥にあやかりつ     天         芝浜

【椿】
花を愛で仏に会わぬ椿寺       天天天地      音澄
古道果て平らな海や藪椿       天天地地人人人   磨角
雨粒の赤々と澄む椿かな       天天人       呑暮
老女なを欲張りを言ふ紅椿      天地        菫女
鹿威し椿一輪うかべおり       天人人       芝浜
十戸と云ふ峡の在所や山椿      天人        魯斗
息詰めて焼香するや椿の家      天        喜の字
落ちながら美醜を変える椿かな    天         音澄
待ち呉れし人無き庵の落椿      天         魯斗
雨重ね咲き満ちてゆく椿かな     天         山女
赤満ちて堪えきれずに椿落つ     天         小波


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つぶやき再録

★磨角さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

〈冴え返る〉
天・観るひともなき無韻の詩冴え返る
地・冴返る忘るなかれと空の言う
人・風呂の湯にあちちあちちや冴え返る

つぶやき
 「エアーエプロン」が検索しても正体がわからなくて気になっております。

〈うぐいす〉
天・うぐいすやケキョの宛字を考える
地・裏山の もひとつ裏から 初音かな
人・大切な話しはうぐいすの後で

つぶやき
 天の「宛字」は面白いですね。ホーは「宝」「芳」「萌」あたりでしょうか。
 「奉」「訪」も合いそうな。地は遠くから声がする感じが素敵です。
 人の初音に気もそぞろな雰囲気が良いです。

〈椿〉
天・花を愛で仏に会わぬ椿寺
地・老女なを欲張りを言ふ紅椿
人・情熱のラスゲアードや散椿

つぶやき
 天はお庭が楽しくてご本尊をスルーしてしまうことが私もあるなぁと(笑)
 地の「老女なを欲張り」が枯れつつ枝に残る椿の花と重なって見えます。
 人は椿のゴージャスな容姿とギターの音色が相まって”散る”が劇的で格好いいです!


★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

 果ての雪はまばゆく美しいけれど、今年はすぐ、「大変だろうなあ」と思ってしまいますね。さて今回は、「これっ!」というのがない代わりに、天地人へのノミネート句がずらりとあって迷いました。

【冴え返る】
天 光芒を曳きし落日冴え返る
地 冴え返り客なきままの朝の市
人 酔い覚めの水の匂いや冴え返る

 音読してみて思わずブルッと、寒くなった句を優先しました。
 ノミネートは、校庭、回転木馬、昇降機、山脈、白き雨、キース・ジャレット、ねっ、多いでしょう。

【うぐいす】
天 笠上げて鶯聴くや托鉢僧
地 鶯を聴いてシャドウの色変える
人 うぐいすに耳そば立てる塀の猫

 「どこにいるんじゃ?」と、ヤキモキさせるところが春告鳥の面目です。
 ノミネートは、ケキョの宛字、ママの靴、ひと鳴きを、鎌倉に、炭を焼く、裏山の、でした。

【椿】
天 待ち呉れし人無き庵の落椿
地 午睡して曇り硝子に椿見ゆ
人 十戸と云ふ峡の在所や山椿

 ええ、ローカルというかフォークロアというか、景色のどこかに、春暖のひそみを感じられる句ばかり。ノミネートは、一柱を、雨重ね、仏に会わぬ、古道果て、鹿威し、赤満ちて、手水鉢。
 以上です。
 何十年も前に古本で買った松田修「闇のユートピア」が本棚整理で出てきました。
「異端者三鬼」という第5章、読み始めたら面白いこと!異端者が書いた異端者の迫力です。


コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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このページは、cave(管理人)が2012年2月29日 00:00に書いたブログ記事です。

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