◯ 晩秋の兼題は「十月」「公孫樹散る」「新酒」です。
【十月】
十月やうねのこすれたコーデュロイ 天天天天地 音澄
大伽藍十月の空切り取りて 天天地人 雨不埒
十月の淡き影踏む海にをり 天天地 磨角
十月の雨踊り出す池之端 天地地人人 雨不埒
十月の暮れの早きを肴にし 天地地 呑暮
十月や自転車の風首すくみ 天地人人 雪童
十月を匂いて犬は空を知り 天人人 出船
十月は黄昏の国長き影 天人 芝浜
花の種揉み蒔き散らす十月の庭 天 山女
十月の庭は名知らぬちさき花 天 菫女
【公孫樹散る】
散る公孫樹膝にあつめて足湯かな 天天天 仲春
公孫樹散る世界一周さかあがり 天天地 青羽
公孫樹散る踏みつよけつつ老夫婦 天天地 好喜
職場去る毅然たるひと公孫樹散る 天地人人 出船
それでいいそれでいいよと公孫樹散る 天地人 即馳
片想ひおほいつくして公孫樹散る 天地 芝浜
走り行く車にスタンプ公孫樹散る 天人 山女
夜通しの風に銀杏の裸体かな 天人 風写
天空に線画を描き公孫樹散る 天人 雨不埒
公孫樹散る渡り廊下の三人衆 天 磨角
澄む朝の路面も見せず散る銀杏 天 風写
【新酒】
憂き節も胃の腑に落とす新酒かな 天天地地人人 雨不埒
膝小僧くっつく席の新酒かな 天天人 磨角
表情の硬き杜氏の新酒唎く 天地地地地人人 音澄
新酒酌む猪口選びつつ夕間暮れ 天地地 好喜
清貧も壺覗きこむ新走り 天地 風写
酒林くぐりて多摩の新酒きく 天地 菫女
新酒得て早めにつかる湯舟かな 天人人 仲春
新酒酌み過ぎて無体な自己主張 天人 酒倒
杉玉を見て購いし新酒かな 天 酒倒
風土濾し新酒の風味ほのかなり 天 即馳
定番の説教かわし新酒酌む 天 好喜
新酒かな杯わたる風香る 天 山女
新酒の会一斗で居並ぶ恵比寿さん 天 雪童
うっかりでしょうけれど、
「湖面に沈む」という句がありました。
沈むなら、湖底ではないでしょうか。
湖面であれば、浮かぶか映るか。
詠む人も選ぶ人も、もう少し注意深く。
それから「五七五」になっていない句が多いです。
私のスタイルはそれだ、といわれればそれまでですが
韻文の俳句は、まず五七五にととのえるのが基本。
山頭火も放哉ももとは五七五の句を詠んでいます。
推敲を重ねてなお五七五にならないのかどうか、
ぜひ切磋琢磨を。
台風が去り、秋が深まり。次回はもう初冬の句会です。