◯ 晩冬の兼題は「冬深し」「ホットドリンク」「鐘冴える」です。
【冬深し】
漆器塗る手のしずけさや冬深し 天天天天天天地 風写
冬深し二度寝に迫る犬の鼻 天天地 出船
冬深し月を毛布に山は寝る 天地人人 即馳
冬深し母娘の繕ひ未だ遠し 天地 菫女
冬深し電気機関車ひと啼きす 天人 酒倒
マニキュアの赤を濃くして冬深む 天 磨角
冬深しぐるぐる巻きの女子高生 天 呑暮
【ホットドリンク】
荒れた手がホットワインを包む夜 天天天天地地人 出船
ホットレモン窓の告白すぐ消して 天天天地人人 雨不埒
母一人子一人の夜ホットレモン 天天天人 菫女
師の便り筆致に滲みるホットワイン 天地地 好喜
甘すぎるホットミルクに洟落ちる 天地 呑暮
ホットワイン飲干し答ふる女かな 天人 磨角
【鐘冴える】
鐘凍る寝酒頼みに帳場まで 天天地 音澄
回廊へ鐘冴えわたる永平寺 天天人 風写
鐘冴える筆圧強し置き手紙 天天 青羽
鐘冴えて夜間中学始まりぬ 天地地地 出船
大空を星にかえして鐘冴ゆる 天地地人 喜の字
参道の灯明尽きて鐘冴ゆる 天地人人 酒倒
鐘冴えて揺らぐ読経や荒行僧 天地 好喜
放蕩を尽くし三叉路凍る鐘 天人 青羽
ポケットの硬貨チリリと鐘凍る 天人 雪童
姫に打つ鐘冴えにけり夜叉ヶ池 天 芝浜
★音澄さんのつぶやき(ほんのつぶやきです)--------------------------
およそ俳句を詠むとき、お寺と来たら「仏像だの、墓石だの
坊さんだの住職、読経、参道などなど」、そこにそれがあるのは
当り前のものを添わせるのを「付きすぎ」とします。
禁止事項、ではありませんが、俳句の風景がごく狭くなってしまう。
いかにも凝縮して詠んだようには見えますが、さて、どうか?
今回の「鐘」の句で、そりゃ名刹では毎日の勤行は
鐘の音にしたがって行うんだから、そうでしょうという風景、
また菩薩、阿吽像、読経、荒行、参道、灯明など、「付きすぎ」の
句が多く、少し驚きました。
私はヘボですが、もう一歩俳句に踏み出して欲しいと感じました。