◯ 初春の兼題は「薄氷」「伊予柑」「春嵐」です。
【薄氷】
幼子の一歩に失せり薄氷 天天地地 菫女
うすごおりモノクロームの万華鏡 天天地地 好喜
水鳥の砕氷船行く薄氷 天天 雪童
黒天の星座を映し薄氷 天地地 酒倒
薄氷やしゃがみて映す顔ふたつ 天地地 仲春
薄氷を割いて水打つ老舗前 天地人人人 風写
薄氷を踏んで向かうや試験場 天地人 呑暮
薄氷や風の姿を彫り上げる 天人人 即馳
めだか飼う火鉢に今朝は薄氷 天人 音澄
うすらひや水のややこのおぶらあと 天 酒倒
薄氷聖堂にいま止む祈り 天 出船
人消ゆる光残して薄氷 天 出船
【伊予柑】
いい陽より伊予柑むいて猫になる 天天天天人 愚多楽
伊予柑を置いてうたた寝祖母の午後 天天地地人人 好喜
伊予蜜柑むき置きて去る母の家 天天地人 菫女
伊予柑を剥く嫁の手をながめおり 天地人 呑暮
病室の空気押しのけ伊予柑香 天地人 好喜
伊予柑やおんな二人のバスの旅 天地 磨角
手土産の伊予柑提げて路地の月 天地 出船
伊予柑やきまって一つはスッカスカ 天 音澄
棟上げや飛びゆく伊予柑甘さ増す 天 即馳
伊予柑を剥く親指に憂いなし 天 出船
【春嵐】
春嵐ブランコ揺らし遊び去る 天天天 即馳
顔を打つネクタイ跳ねて春嵐 天天地人人 雪童
交差点たてよこななめ春嵐 天地地 音澄
春嵐子どもの声を舞い上げし 天地地人人 小波
組み直す午後の段取り春嵐 天地人人 仲春
春嵐裾から袖に抜けにけり 天地人人 酒倒
止まないで学ラン借りた春嵐 天地 岩牡蠣
春嵐変えうるものを変える意志 天人人 出船
春嵐去った朝なお砲火の日 天 好喜
昇る陽が戸惑い踊る春嵐 天 好喜
春北風に舞い強いられてレジ袋 天 芝浜
春嵐泣きっ面に雨連れて来て 天 雪童