◯ 初冬の兼題は「茶の花」「冬の田」「粕汁」です。
【茶の花】
生け垣は小紋散らしのお茶の花 天天地地人 音澄
茶の花や黄丹の袱紗の落とし物 天天地地 喜の字
茶の花の雨を抱えてをりにけり 天天人人人 磨角
茶の花やうりざね顔の恋敵 天天人 磨角
茶の花や絵筆の先をとがらせて 天地地人 呑暮
この花は?はい茶の花と三人め 天地人 音澄
茶の木咲く一匹通れるほどの道 天地人 菫女
茶の花や内緒話の垣根越し 天人 仲春
招かれず詫びる姿か茶の花は 天 蝸牛
茶の花やこころ急かして拾い詠み 天 魯斗
【冬の田】
寄る辺なき風は冬田に来て荒ぶ 天天地人 魯斗
冬の田や光あふれてなお黒く 天天 音澄
早や暮れて冬田に犬の影一つ 天天 風写
冬の田に列車一両影長し 天地地地人 酒倒
冬の田や刈り残りたる夢一つ 天地人 芝浜
冬田見て祈るあしたのTPP 天地 酒倒
農業も変わるや冬田を曝しけり 天地 菫女
冬田打つ雨降りやまず人も来ず 天人人人 蝸牛
ハイウェイ冬田幾枚めくりつつ 天人人 蝸牛
冬の田のショパンのような静けさよ 天 喜の字
畦遙か深深眠る冬田かな 天 風写
【粕汁】
粕汁に口も解ける漁帰り 天天地地 雨不埒
粕汁や故郷に帰る相撲取り 天天地人 喜の字
粕汁の鍋ごと届く浜の小屋 天天地 喜の字
粕汁に温もる六腑や野良帰り 天天人 風写
粕汁やぽつりぽつりと親子酒 天天 雨不埒
粕汁の一椀空けて脱ぐ一枚 天地人人 磨角
粕汁に足りる思いや北の宿 天人人 仲春
粕汁を三杯ほどの夜勤かな 天人 風写
子等集ふための粕汁くつくつと 天 魯斗
★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【茶の花】
天 茶の花やうりざね顔の恋敵
地 茶の木咲く一匹通れるほどの道
人 この花は?はい茶の花と三人め
今回は、茶の花も粕汁も馴染みのない兼題でした。
父の郷が八女なのに、茶の花を見たことはなく。調べると、茶の花は歓迎されない存在で茶畑の主は花が咲かないよう気を配るのだとか。
そこを詠みたかった「詫びる姿」でしたが、難しいですね。選句も難しかったです。
【冬の田】
天 冬の田に列車一両影長し
地 冬田見て祈るあしたのTPP
人 どこまでも冬田の続く夫の郷
田んぼの多い福岡では、どれも見慣れた情景で好きな句が多く選ぶのに苦労しました。
天、「一両でも列車と呼んでいいものか」と、つい先日友人と笑いあったばかりです。一両編成って、本当に寂しく愛らしいですよね。
地、アルファベットをすっきりと詠みこんで自然で分かりやすく好きでした。農業者の多い九州では、切実な問題です。
人、昔住んでいた鹿児島県の出水がこんな町でした。「田中」姓がとても多くケータイに15人登録があります。
【粕汁】
天 粕汁の一椀空けて脱ぐ一枚
地 粕汁やあとであとでと酒を酌む
人 粕汁や具より蔵元競う町
粕汁は、まだ食べたことがありませんがとても身体が温まるようですね。
天の句で、この冬はぜひ作ろうと思いました。
地、食べているシーンでなく、まだ食べていないシーンが楽しげに詠まれていて見事だなあと思いました。とてもおいしそうです。
人、「具より蔵元競う町」は酒処に住む者として
きっとあるある!と頷ける言葉でした。