◯ 初春の兼題は「遅き春」「水菜」「しおまねき」です。
【遅き春】
春遅々と急峻の山羊点となる 天天天人人 即馳
稜線の青尖りけり春遅し 天地地地地人 見燗
色里に春は遅うて朝湯かな 天地人人 芝浜
飾り窓ばかり華やぐ遅き春 天地人 風写
手放せぬ孫抱きしめて遅き春 天地人 雨不埒
遅き春決意形にならぬまま 天地人 出船
犬小屋の空き家も長し遅き春 天地人 呑暮
我が恋に早く追いつけ遅き春 天人 芝浜
遅き春剪定の手止む小さき芽 天 山女
遊ぶ子の声途切れつつ春遅し 天 好喜
遅き春天守閣には人まばら 天 仲春
春遅し目隠し鬼の足もつれ 天 磨角
【水菜】
朝早く水菜を切りて自炊客 天天天天 仲春
切りたれば弾む音して水菜かな 天天 磨角
この上もこの下もなく水菜かな 天天 即馳
俎にそぞろ転がる水菜の根 天地地地地 呑暮
しづかなる町の夕餉の水菜かな 天地人人人 酒倒
切れ味を試すが如く水菜切る 天地人 芝浜
なまくらで切りし水菜の香りかな 天地人 見燗
不揃いの水菜眺めて鍋ひとり 天地 見燗
大皿に残る水菜やサラダバー 天人 音澄
【しおまねき】
この島も嫁不足なり汐まねき 天天天地人人 仲春
江の先の先に富士あり望潮 天天地人人 磨角
汐まねき沖の巨船に鋏ふる 天地地人 仲春
満ち潮に勝負分けたり潮まねき 天地地 風写
日に一度海を動かすしおまねき 天地人 音澄
しおまねき防潮堤は高くなり 天地 酒倒
昏れる浜神事に似たり汐まねき 天地 青羽
潮まねきもの言いたげに一歩ずつ 天人人人 好喜
望潮その先の海波静か 天人 見燗
しおまねき一つそろわぬはさみあり 天 芝浜
続々と平和の戦士しおまねき 天 好喜
★出船さんの選句と小さなつぶやき-------------------------------------
【遅き春】
・春遅々と急峻の山羊点となる 天
・色里に春は遅うて朝湯かな 地
・おそ春の匂いのぼりて道祖神 人
〈つぶやき〉
・色里に春は遅うて朝湯かな 地
最も驚きました。おもしろい。いろいろ考えた。
気持ちとしては「天」なのですが、色里の句を「天」にする蛮勇がなく、「地」にしてしまいました。
【水菜】
・俎にそぞろ転がる水菜の根 天
・ひと株のさ緑ほぐし水菜鍋 地
・不揃いの水菜眺めて鍋ひとり 人
【しおまねき】
・しおまねき防潮堤は高くなり 天
・江の先の先に冨士あり望潮 地
・望潮その先の海波静か 人
★小間使いさんから--------------------------------------------------
俳号「出船」さんが、今回から参加です。
はい、いきなり天を獲得しています。
どうも「初心者ではないらしい」ぞ。
ではまた、次回をお楽しみに