2009年12月アーカイブ

ヤド六は殺されたのか? 誰に? もちろんあたしに。というわけで物騒なタイトルにしてしまいましたけど、その可能性が無いわけではありません。今回、いつもと様子がかなり違うことに気づいていたにもかかわらず、結論として元気なときと同じような脱皮後のルーティンスケジュールを行なったからです。もちろんちょっとは躊躇いましたけどね。ヤド六の様子を良く見て、考えたあげくに行なったことなので後悔はしていませんけど、それがさらなる体力の消耗に繋がった可能性がないとはいえません。正解はわからないのですけれど。でもオカヤドカリ飼育のひとつのデータになるかもしれませんから、そのあたりの経過を記しておきましょう。ヤド六最後のご奉公ということで。

さて、今回の脱皮は、開始当初から通常とは違うことばかりでした。当欄をブログ化する前日の10月16日に潜ったのですけど、当日の記事にも書いた通り、イキナリすっと潜ってしまったのです。ヤド六、いつもは数日かけてあちこちを掘り返しまくり、何度も出はいりを繰り返したあげく、ようやくという感じで砂中に落ち着くのですが、今回は砂をこぼすこともなく突然一発で潜ってしまいました。別に普通じゃないかと思われるでしょうけど、長らく観察して来たヤド六だけに、これはかつてなく異常な行動だったんです。なのでたぶん数日でやり直しに出てくるものだと思ってたのですが、そのまま本格的な脱皮に入ってしまったので、ちょっと不吉なものを感じていました。

ブログではご存知のように脱皮潜りの間、いままでサボッていた夏以降の写真とエピソードでお茶を濁していたのですけれど、今回は40日を過ぎても一向に出てくる様子がありませんでした。いつものヤド六は40日プラスマイナス5日の間に必ず出て来ていたのです。40日ぴったりという時も何度かあったくらいで、どうやって日にちを測っとるんやろうと不思議に思っていたくらいですからね。そして通常なら潜っている期間中にもさかんに砂を動かしたり音をたてたりするんですが、今回はまったく動きません。12月6日になってようやく砂が少し動いたので、無事だったのを知り、ほっとしたのでありました。

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↑小ロフトの脱皮穴の底に脱ぎ捨てられた、ヤド六愛用のマルサザエ(2009.12.9撮影)

そして12月9日の深夜0時前後に裸で出て来て、置いてあった宿替え用のストック貝殻におなかを突っ込んだようなのです。今回の脱皮はこの日で潜ってから53日が経過しています。しかし実はその前日、あたしの知らない間に一度出て来てあたりを徘徊した形跡があったんです。当日のコメント欄には書かなかったのですが、吸盤でガラスに貼り付けてあった温湿度計が落とされていました。温湿度計の位置はヤド六が最後に入った最大のストック貝殻のすぐ横にあり、脱皮をした小ロフトのまったく反対の端です。裸で徘徊したのか旧貝殻を背負って歩いたのかはわかりません。あたしが気づいた時には、脱皮をした小ロフトに再び戻って穴の底で神妙にしておりました。

潜っている間は、砂の乾燥を抑えるためヒーターは入れないでいました。冷え込んだ日には照明だけを点灯して温度を上げるのがいつものやり方です。それでだいたい19〜21℃をキープしていましたが、一度出て砂の蓋が取れてしまったのでこの冬初めてヒーターをオンにしました。ちょっと温度が低いのでは?と感じられるかもしれませんが、ヤド六の場合はいつもそうしてきたのです。まあ今回は行動が異状だったので、今から思えばもっと室温をあげておいてやるべきだったのかも知れませんね。

そのあと12月9日の深夜2時頃に水槽を覗いてみたら、ヤド六が砂から出て大ロフトに並べてあったストック貝殻におなかを突っ込んでいたわけですが、脱皮をした小ロフトの穴の底には、今までお気に入りだった緑のマルサザエが脱ぎ捨ててありました。これ、ヤド六にとっては前代未聞のコトなのです。あの臆病で慎重なヤド六が水槽の端から端まで裸で歩くなんて!しかも入ったストック貝殻は並べてある中で最大のサイズのもので、あらかじめ置いてあった状態のママです。脱皮中の湿度確保のために中にたっぷり水をたたえてありました。それを転がして水を出すことも、よく検分することもしないで、いきなりズボッとおなかを突っ込んだようなのです。あの貝選びにデリケートな姐さんが!

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↑身を乗り出して貝殻を引き起こそうとするヤド六だが...力が出ない(2009.12.9撮影)

そして貝殻を動かそうと、さかんに身を乗り出しているのですが、貝殻は全く動きません。確かにかなり重い貝殻ではあるんですが、普段のヤド六の力を持ってすれば動かないわけがありません。動かす気がないのか、それとも相当体力を消耗しているのか。これを判断するにはもうしばらく観察しないとわかりません。そして身を乗り出すヤド六を見ていて驚いたのが、脱皮前より、ひと回り、いや二回りくらいカラダが大きくなっているように見えること。う〜ん、脱皮期間が長かったのも、旧貝殻を脱ぎ捨てて裸で歩いたのも、この急成長のせいなのか? そして今回のトラブルも......次回につづく

さよなら ヤド六

前回記事のコメント欄でも簡単にご報告してましたけれど、とうとうヤド六は永眠してしまいました。ここに生前のご厚情を...って、人間じゃないんだし、何もしゃちほこばるこたあありませんけれど、みなさんの永らくのご愛顧にヤド六になりかわりまして厚く御礼申し上げますです。みなさんどうもありがとうございます。

まあ10年近くにわたって拙サイトを賑わせてくれた功労宿なのでありますからして、当分はヤド六追悼記事を書いてやろうと思ってます。ヤド六の死で、当アクアリウムの現状はヤドカリのみならず「甲殻類の全くいないヤドカリサイト」という情けない状態になってしまった訳ですが、あたしもイキモノ好きでございますから、このまま終了するつもりはありません。今後どういう展開になるのかは未知数ですが、たまには覗いてやってくださいませな。

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真夜中にヤド舎を覗いてみると、裸で砂から出て来たヤド六がストック貝殻におなかを突っ込み遠い目をしていた。ヤド六が裸で出歩くとは前代未聞の行動だ。息絶える約20時間前の写真。
(2009.12.09/AM2.27撮影)


てなわけで、「さよなら ヤド六」追悼記事の初回なんですが、しかしまた年末のややこしい時やで...。とりあえず今回はヤド六の簡単な履歴をメモしておくことにします。

ヤド六がわが家にやってきたのは1999年の6月26日。京都のあたしの実家の菩提寺門前に金盥を並べていたテキ屋さんから一頭100円のいちばん安いのを三頭買って帰ったうち、唯一生き残ったムラサキオカヤドカリです。死んだのが2009年の12月9日深夜から10日にかけてですから、当ヤド舎で暮らしていた期間は10年と171日。まあおよそ10年半ということになります。推測するに享年12〜3歳てなところですかね。最初はテッキリ雄だと思ってましたが、そうとう大きくなった2005年に長い腹肢と生殖孔を確認して、アラ雌だ!ということになりました。はっきり数えてはいませんけれど今までウチで行なった脱皮の成功回数は20数回というところでしょうか。死亡時の前甲長は18mmくらいでした。

亡骸は12月16日にヤド六の食用ガジュマル養生プランターに埋葬してやりました。死亡が脱皮直後だったせいか、甲殻が柔らかくてちょっと持ちませんでした。

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ヤド六をガジュマルプランターに埋葬した。こんどはキミが喰われなさいね。
ヤドカリ人生の最後に一日だけ入った最大のヤド用貝殻を墓碑に(2009.12.16撮影)


あたしもまさか死ぬとは思っていなかったのですが、あっけなくスーっと逝っちゃいましたね。今回の脱皮潜りの経過や死に至った原因などについての考察は次回以降にじっくり書いて行こうと思ってます。でもまあ早く状況を知りたいとか、質問したいことなどがありましたら遠慮なくコメント欄に書き込んでください。 次回以降の記事と重複することになるかもしれませんけど、できる限りコメントでお答えしますので。というわけで短かくて恐縮ですが今回はこのへんで。また よろしくおねがいいたします。
妄想の続きおば。ヤド六のオネンネは継続中です。本日で潜ってから45日が経過しました。まあ好きにさせておきましょう。さて、オカヤドカリの寿命についての「妄想」の後半であります。今回は飼育環境のことについて。いわゆるオカヤドカリ水槽のレイアウトのことを書くことにします。

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ヤド六姐、寛いでますね〜表情でなんとなく分かります。新しいガジュマルの葉が入ると
なおさらですな。でも喰いまくるので葉っぱが3日と持たんのが難点。(09.9.12撮)

当欄オカヤド記事本編を順に見てゆくと分かるんですが、ヤド六姐さんは、やってきた1999年の初夏から現在まで、ずっと同じデスクボーイ水槽で暮らしてき ました。初期に半年ほど金魚用の縦型オールインワン水槽に引越したり(1〜4話)、居候ヤドカリさんの越冬来宅で二世帯住宅化したり(17〜19話)、レ イアウト変更期間に仮設ヤド舎に仮住まいしたり(33話)しましたけれど、33話〜36話あたりのレイアウト試行錯誤期間を経てからは、レイアウトはロフ トに入れる砂の種類以外は全く変えていません。

流木の位置までずっと同じのまんまなんですが、長く観察していると、どうやらこの「不変」 が良いように感じられてきたのです。その間、ヤド六も成長してどんどん大きくなって来たので、断面の小さなデスクボーイでは流木に貝殻がつっかえたりして最近はますます手狭なんですが、金魚用の60cm水槽が空いているにもかかわらず、本ヤド舎には採用せずにヤド六の時々の遊び場にしていたのも、このレイアウト不変のメリットに気づきはじめていたからなんです。

デスクボーイは生産終了みたい

今ならコトブキ ダックスC60↑か
更に細長いダックスC90がいいね

デスクボーイ水槽がオカヤドカリの一匹飼いの「理にかなっている」というのは以前に何度か書きました。かいつまんでいうと、小さくて軽いのでひょいと抱えられて丸洗いメンテが楽ちん。空間が狭いので冬の温度の維持管理がしやすい。水槽が左右に長いので場所によって温湿環境に変化がつき、そこそこ運動もできる。奥行きがないのでヤドカリ個体の状態を常に観察しやすい。てなところです。でもこれはみんな飼育者目線の「良さ」なんですね。そこで今回の妄想はヤド六目線のデスクボーイヤド舎の住み心地です。

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もう数年レイアウト不変のデスクボーイヤド舎。
水槽のレイアウト不変がオカヤドカリの寿命をのばす?(09.9.12撮)

とはいえ、あたしはヤド六じゃないんで勝手に妄想するわけなんですけどね。まず、ここ数年のヤド六は脱走しようとしなくなりましたんです。飼いはじめの頃は 「ヤド研」直伝のヤドカリ返しを設置しても、ちょいちょい破られ、深夜に耳を澄ましたり、カーテンのうえを探しまわったり、よくしたものですが、それも今や懐かしい想い出です。こちらのセキュリティは断然ルーズになっているのに脱走しませんねえ。もちろん天井を歩き回ったり、ガラスの隙間をこじあけようとしたりは、大潮の日とかにやってますけど。

こちらがうっかりフタをするのを忘れて寝てしまい、ヤド六が隙間から水槽の外に出てしまっても、朝見に行くとフタの上に登ってその場でぼんやりしています。いくらでも逃げられるチャンスなのに逃げません。これ、水槽外の世界が不安なんだと思うんですよ。なにせもうベテランですからねヤド六は。海水風呂に入ったり、ベランダで遊んだりさせるとその時はバタバタするんですけど、デスクボーイに帰すと、すぐに落ち着きを取り戻して触角の手入れをしたりしてますから、ヤド六は11年も暮らしているこのヤド舎のレイアウトに安心安全の認識を持っているのだと思わずにいられないのです。そう言うわけなんで、狭くともまあすこやかに暮らせているんでしょうな。


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ゆっくりするなら、ココですよ、ココ!とばかり、
そそくさとお定まりの安息地に戻るヤド六。

また、永らくレイアウト不変にしているせいか、水槽内の位置関係を憶えて暮らしているような動きをします。たとえば脱皮潜りからでてくると、餌場の皿に直行します(カラでも)。海水浴から帰ってしばらくすると水場へ直行、真水を掬ってます。隠れたいときや無防備で眠りたい時は餌場の奥の流木の陰へ。夏の暑い日に涼む流木の上の場所もおおむね決めているようです。こういうふうにどっしりした生活をされてしまうと、もうおいそれとレイアウトの変更も水槽の更新もできません(笑)。

ちょっと前に旭山動物園名誉園長の小菅正夫さんが話してたのを聴いたんですが、苦心してサバンナを再現した広い新運動場にゾウを放っても、象はゾウ舎から一歩も出ようとしないそうです。いくら追いやろうとしても頑として動かないんだそうで、素晴らしい環境を用意しても、 最初はやっぱり警戒して脅え、ストレスが生じるんでしょうね。あんなデカイどん柄してるのにねえ。またアザラシは陸上ではたいへん警戒心が強く、決して人に心を許さない動物なんだそうですが、一緒にプールに入るとあちらから馴れ馴れしく近づいてくるらしいです。水中なら自分が勝つんで安全だというのを知ってるから心を許し人を怖れないんだとおっしゃってました。ほお、なるほどな、と。

ここで大形哺乳動物とオカヤドカリを一緒くたにしてしま うのが妄想の妄想たる所以です。陰性な生き物のオカヤドカリにとっては、自分がいま安全な場所にいるという認識、これがすこやかに生きる重要なポイントなんだと思うわけなんです。数年レイアウト不変のデスクボーイ舎が、ヤド六のストレスを少なくして、安全で気儘な毎日を提供しているのであれば、案外そこが長寿のキモになってるのかな、などと思ったりしてるわけなんでありますよ。

本編:オカヤドカリの飼育もくじ

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