2014年2月アーカイブ


◯ 初春の兼題は「早春」「黄梅」「麦踏み」です。

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【早春】
早春のこころに添わぬ風の棘     天天天地人     魯斗
早春の口笛うまく吹けなくて     天天地人人    喜の字
幹に耳寄せて早春盗み聴く      天天人       魯斗
早春に駒音高くこども棋士      天地地地人     好喜
早春の野に集めたり夕餉の菜     天地人       風写
早春の空に輪を投げ大道芸      天地人       仲春
早春の声高らかに"サクラサク"   天地        小波
早春や蕾も堅しランドセル      天人        雪童
早春や青い山脈口ずさむ       天        喜の字
早春の港に溶けし汽笛かな      天         小波

【黄梅】
路地裏に光集めし迎春花       天天天地地     小波
朗らかにお喋りしてる迎春花     天天        雪童
息凍え黄梅見つけ笑みこぼる     天地地       陽光
黄梅や和服の夫婦句帳持ち      天地人       仲春
黄梅を倍に映して飾り窓       天地        風写
黄梅や縁切寺の小座布団       天人人人      仲春
黄梅に立ち止まる人喪服着て     天人人       菫女
借景に黄梅揺るる隠居部屋      天人        魯斗
黄梅よまためぐり来てあの径に    天         山女
黄梅や陶焼くひとの無名なり     天         菫女
匂い立つ黄梅辿り路地散歩      天        雨不埒

【麦踏み】
ラジオでは国会中継麦を踏む     天天天地地人    音澄
麦を踏む宮沢賢治に似た男      天天        仲春
麦踏みのリズムも合ひし父と母    天地        小波
麦踏みや時代はなべて我慢せず    天人        菫女
つれだちて麦踏み競う老夫婦     天         山女
灯がともる麦踏みの影帰宅道     天         雪童
麦踏みや我の心も強くする      天         陽光
老婆居ぬ麦踏む人の影細く      天        雨不埒
年とりて頑固一徹麦を踏む      天         仲春
ガムの味なくなるまでの麦踏みや   天         小波
借景は白山連峰麦を踏む       天        喜の字


◯ つぶやき再録 ◯

★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【早春】
天・早春の港に溶けし汽笛かな
地・早春や山への不通未だ解けず
人・早春の野に集めたり夕餉の菜

【黄梅】
天・路地裏に光集めし迎春花
地・息凍え黄梅見つけ笑みこぼる
人・黄梅や香りよりまず色恋し

【麦踏】
天・老婆居ぬ麦踏む人の影細く
地・麦踏みに愛読句集の一・二冊
人・麦踏みや出がけに季語を一つ持ち

 毎度のこととは言え、ますます泥沼に嵌まり込んだような『選句』の難しさに四苦八苦しております。
 もちろん、投句の時も自作からの選句に悩みますが、それは駄作が多いので取捨選択もザックリ出来て、なんとか締め切りに間に合わすことが叶います。

 今回は各季題ごとに26句ずつ。第一印象で選べればいいのですが選びきれなかったときは悩みます。
 結局、減点法とか消去法的マイナス思考で選ぶことになり、楽しみながら句を読み、想像力を羽ばたかせ・・・とは真逆のことになり、自縄自縛。

 例えば「早春」や「黄梅」の場合。
 歳時記には「早春・・・立春後、二月いっぱいくらいをいう。暦の上では春であるが、まだ寒い。「春浅し」に近く、春早々の気配が漂う」とあります。
 また「黄梅・・・モクセイ科の落葉低木の花。中国原産で高さ一・五メートルほど。早春、葉に先立って六つに分かれた筒状の花を咲かせる。形が梅の花に似ていることからその名があり、迎春花ともいう」と。
 では、この季語を違う季語、それも異なる季節の言葉に置き換えて読んでみたとき、成立してしまうか? あるいは置き換えることで違和感が出るか? せっかくの世界観や情感、趣が失われないか? などなど。
 そんなことを念頭に、不遜ではありますが、まず「×」を付けて選句候補から外し、残る句を再度自分なりに深読みしてみる。最終的に天地人で区別するのもけっこう悩むことが多いです。
 残る一つの兼題「麦踏み」の場合は、先の二題とは少し性格が異なり、やはり歳時記を見ると「麦踏み・・・霜柱で根が浮き上るのを防ぐため、また株張りがよくなるようにと麦踏を行う」と説明になっているのかいないのか定かではない文章があるのみ。辞書そのものの説明文としか思えない内容なので、明らかな『麦踏みという行為』そのものを言い得て、しかも世界が広がるような趣のある句を選べばいい、と。で、この場合は加点法。上手いなぁ、こんな風に詠みたかったなぁ、やられた!などなどが心の中から湧き出てきたのを選句。結果、天地人は付けやすいですね。

   実際はもっともっとややこしい思考がエンドレスに続き、締め切りギリギリまで確信が持てずに悩みます。で、選句の結果が以下のとおり・・・ではありますが、それでも自分の思考がずれていたり、ピントが外れているのでは?という気がしますし、そもそも根本的に間違ってるのでは、とも思えます。
 みなさん、どういう風に選句されているんでしょうねぇ? 「そんなことすらワカランのか!」と諸先輩方からお叱りを頂戴しそうですが、ぜひ、何かの機会にご教授いただければと思います。


(小間使い/魯斗さんのつもりでは、つぶやきとして発表する気で書いたモノではないようでしたが、読んでみると、みごとに面白いので、ご本人に連絡して了承してもらい、載せました。)


コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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