◯ 晩春の兼題は「花筏」「蛍烏賊」「春の虹」です。
【花筏】
花筏美しことのは子に伝へ 天天天天 菫女
ゆらゆらと宴連れ行く花筏 天天天天 蝸牛
花筏夕闇誘う黄泉の舟 天地地 蝸牛
石垣を這い登るほど花筏 天地 音澄
好きという代わりに見せる花筏 天地 小波
橋いくつくぐり海へと花筏 天人 喜の字
約束はひととせを越へ花筏 天 逆月
深山から息吹の便り花筏 天 魯斗
【蛍烏賊】
一湾はひかりの器ほたる烏賊 天天天地地地人人 喜の字
ビル地下の小さき季節やほたるいか 天天地人人人人人 菫女
もてなしは闇夜にたゆたふ蛍烏賊 天天地 魯斗
蛍烏賊きっと何かを言ふてをり 天地地 逆月
立山と共に生きるや蛍烏賊 天地地 酒倒
ほたるいか入り日のあとを受け光る 天地 魯斗
居酒屋の壁に新顔ほたるいか 天人 小波
ほたるいか旅路の夢に灯をともす 天 好喜
ほたるいか世は不可解を騒ぎおり 天 菫女
ほたるいか果ては醤油に溺れけり 天 芝浜
【春の虹】
春の虹振り向けばもう空ばかり 天天地 音澄
豆腐屋の声や表に春の虹 天天人 呑暮
根元には夢を埋めて春の虹 天天 芝浜
春の虹少女に還る一日あり 天天 磨角
初恋や肩でこゑ聴く春の虹 天地人 逆月
父無き子乗せてやりたし春の虹 天地 仲春
吉野山息切らし来て春の虹 天地 好喜
春の虹追いて少女は屋上へ 天地 蝸牛
地下鉄を駆け上がるとき春の虹 天人 小波
人のもつ脆き肉体春の虹 天 菫女
★逆月さんのつぶやき一瞬選句未練-------------------------------------------
【花筏】
天 石垣を這い登るほど花筏
地 内堀に六曲一双花いかだ
人 くるくると風が通って花筏
世の俳句読みの常識では、「花筏」は「花」の傍題として、市民権を得た季語ですよね。でも、私めが持っている歳時記、季寄せの中で、「花筏」が季語として載っていたのは、山本健吉の「季寄せ」だけでした。それも花の傍題。淡緑色の花を葉(筏に見立てた?)の上につける全く別の植物であること、知りませんでした。どのようなことになっているのか知りませんが、もうちゃんと入れてもいいのではと思いました。
天は「這い登るほど」がニクイです。地の「六曲一双」、人の上五中七、静と動が感じられてダイナミック。
【蛍烏賊】
天 一湾はひかりの器ほたる烏賊
地 瀬戸黒に星三つほどのホタルイカ
人 ビル地下の小さき季節やほたるいか
天の「雄大」を、読み知ってから、ビル地下で一献。
【春の虹】
天 父無き子乗せてやりたし春の虹
地 春の虹振り向けばもう空ばかり
人 地下鉄を駆け上がるとき春の虹
天。明るいねえ。こんなのがつくれるのは「いい男」だろうね。(おんなだったりして!)
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