◯ 初秋の兼題は「初嵐」「終戦日・敗戦日」「花火」です。
【初嵐】
初嵐サクソフォン鳴るガード下 天天天天地人 磨角
板の間に漁夫は大の字初あらし 天天地人 逆月
かぁさんが家を出た日の初嵐 天天地 喜の字
初嵐二の腕隠す夜の床 天地人人 風写
もののけの気配少しく初嵐 天人人 酒倒
大刷毛の雲崩しをり初嵐 天人 魯斗
初嵐八百屋見切りの値札貼る 天人 呑暮
上桶も貝ばかりなり初嵐 天 呑暮
初嵐揺れて無口にスカイツリー 天 雪童
【終戦日・敗戦日】
刻むもの多き昼餉や終戦日 天天天天天人 磨角
終戦日空いた電車の乳母車 天天天 呑暮
ラジオよりあの日のラジオ敗戦日 天天地地地人 芝浜
不戦こそ勝戦と知る敗戦日 天地 風写
解釈も変わりて遠し終戦日 天地 菫女
裏表オセロのごとき終戦日 天 好喜
式ばかりいよよ端正終戦日 天 菫女
【花火】
庭花火円く集まる四世代 天天天地人 菫女
団欒の明けて花火の名残り掃く 天天地地人 芝浜
空に闇返して果つる庭花火 天天地 魯斗
吾子の持つ花火を覗く顔ふたつ 天地 小波
遠花火いつもの隙間ビルが生え 天人人人 酒倒
天蓋と成りし四尺花火かな 天人 磨角
くらやみに煙を這わす蛇花火 天人 呑暮
揚花火一人に一人肩車 天 呑暮
花火咲く照らす川面と君の頬 天 好喜
★喜の字さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【初嵐】
天・板の間に漁夫は大の字初あらし
地・初嵐のれんも踊る立ち飲み屋
人・大刷毛の雲崩しおり初嵐
【終戦日】
天・終戦日空いた電車の乳母車
地・不戦こそ勝戦と知る敗戦日
人・負けたこと忘れそうなり終戦日
【花火】
天・庭花火円く集まる四世代
地・吾子の持つ花火を覗く顔ふたつ
人・団欒の明けて花火の名残り掃く
つぶやき
先日、NHKの俳句入門番組を観ていましたら・・・。
「季語の解説や、状況説明ではなく、季語に即した詩的表現をしてください」といっていました。なるほどねぇ、と納得。「いちばんやっていけないのが、報告俳句の17音」とか。
報告俳句、とは初耳ですが、いわれてみれば、これまた納得。
しっかし、報告俳句は作りやすいモンなぁ。
とにもかくにも〝余情〟に訴えてください!だって。納得。
ぅん!報告俳句選んでないだろうなぁ、まっ、いいか!
★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【初嵐】
天 初嵐サクソフォン鳴るガード下
地 初嵐のれんも踊る立ち呑み屋
人 猫の背のやや丸く見え初嵐
台風の俗っぽさとちがい、初嵐はもっとシンプルで冷たさもあり、なんとなく粋な感じがするのですが、私だけでしょうか。
天は、同じシーンを、川崎にいるころ見かけているのです。立ち止まって聴いているのは私一人。髭面のおっさんでしたが、みかけによらず音はよかった。
【敗戦日】
天 終戦日空いた電車の乳母車
地 橋詰に傷痍兵見た敗戦忌
人 飛行機の発つ音重し敗戦忌
個人的には原則的に「終戦」は使いません、「敗戦」とするのが当然と思いますので。今回の作には一つ使いましたが、どうしても「終」という字が必要だったので。
この天は、未来を見通しているようで怖い。乳母車というのがなぜか昔から怖いのであります。静寂と、赤子の目と、高い空と・・・・。
地。まだ1歳ちょっとでしたから当日の記憶にはない。歩けるようになった頃、立川や福生の街で、帽子をかぶり、長い白衣を着て、アコーデオンを弾いていた傷痍軍人を何べんも見ました。白衣なのに、なぜか少し汚れ、湿っているような気がした。母はかならず「入れておいで」と小銭を私に握らせるので、緊張して箱に入れにいく。軍人がお辞儀すると、私もピョコンとお辞儀をする。そのあたりの笑いをとったこともありました。お辞儀をすると軍人の足元が見える。時々、義足が目に入ると、どきっとしたものです。
あの白衣姿は自分の「戦争体験」の一つなのかも知れません。
それにしても、若い(多分)方の句を読むと、「敗戦」は軽くなったなあとおもいます。軽くなっちゃ困るんだけどなあ。
【花火】
天 空に闇返して果つる庭花火
地 鉄橋を挟んで花火と夜の海
人 庭花火円く集まる四世代
地のスケールが気持ちよいです。天は闇を返すというのが表現として面白かった。以上です。
★小間使いさんから-------------------------------------------
小間使いです。今回は季語を間違って出題してしまって、申しわけないです。
それでも俳句を遊んでくれてありがとうございました。
初参加の、初音さんの句は抜かれなかったようで、次回に期待しましょう。
つぶやきではありませんが、喜の字さんが書いている「報告俳句」というのは
金子兜太大俳人の「季語の説明句」のようです。
つい、季語を解説、説明をしてしまいがちですが初級は
まずそれを乗り越えることでしょう。
その季語を使えばもう「風景も、時に心情も伝わる」ので
季語を使うのですからね。
次回は、ミスがないようにします。
ではでは
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